ばれたあの日の出来事
その日の事が、話題になったのは数日後だった。
朝の日差し差し込む教室。
日差しの暖かさ以上に、教室を満たしているのはクラスメートたちの笑顔と私語。
教室に入って、自分の机を目指す。そんな私に、ちらりちらりと向けられる視線。
なんだろう?
少し首を傾げ気味に自分の机の上に鞄を置いた。
「ねえ、まどか」
そう言ってきたのはゆかりだった。
「何?」
「ちょっと、見たって人から聞いたんだけどさ」
ゆかりの次の言葉くらい、想像できる。
将之さんと二人で会っていたのか?
将之さんと一緒に帰ったのか?
そんなあたりだ。
相手があの中井先輩だけに、少し身構えた。
「中井先輩とこの前、一緒に帰ったんだって?」
「えっ? う、うん。まあね」
私は隠れて会っていた訳ではない。
しかも下校時間に、お店の窓際のテーブルに座っていただけに、見た人もそれなりにいるはず。
ましてや、お店を出てからも電車に一緒に乗って帰ったんだから、いずれはそんな話もあると思っていた。
「なんでよ? 中井先輩には興味なんて、無かったんじゃないの?」
近くにいた美由紀も参戦してきた。
「まあ、そうなんだけどね」
その瞬間、私の頭の中にひらめいた。私の疑問の答えのヒントを掴めるかも。
将之さんは女の子に慣れていて、それなりの仲の人となら一緒に親しくすると言う私の仮説。
これが正しいのか、間違っているのか。
「ちょっと、知りあってさ。
どこか寄ってかないって、言われただけだよ。
中井さんって人気あるみたいだから、他の子も誘われてたりするんじゃないの?
今回はたまたま私だったんじゃないのかなあ?」
ゆかりと美由紀は顔を見合わせている。
「聞いたことある?」
「ないない。だって、早紀さんがいるじゃん。
中井先輩の横に、早紀さん以外に女の人がいるなんて、見た事も聞いた事もないよ」
二人の結論が出た。私に視線を戻してきた。
「そ、そ、そうなの?」
私の仮説は崩れてしまった。この二人が知らないだけ。と言う可能性もあるけど、それが本当だったとしたら、私は特別な人になってしまう。
やったー! と喜ぶ妄想好きな私。
そんな訳ないじゃんか、といさめる冷静な私。
「そうだよ。どう言う事なのか、報告しなさいよ」
ちょっと二人は威嚇気味。でも、その目には悪意はない。
「うーん。だからぁ、帰りに偶然道で会って、それでどこかに寄ってかないって、誘われた?」
疑問文で終わらせてみた。
「前から知っていたって訳?」
「この前は中井さんって、誰? って、感じだったじゃん。
あれは何だったの?」
「えーと。つまり、話をし出すと長くなって、ややこしくなるんだけど」
そこまで言った時、他の女子まで近寄って、私の話を聞いている事に気付いた。
首を振って、周りを眺めた。
ゆかりと美由紀も合わせると、10人ほどいるじゃない。改めて言う事ではないけど、まあ、それだけ中井先輩は人気者と言う事なんだろう。
「ちょっとした事で知り合ったんだけど、名前は知らなかったって言うか、勝手に別の名前に私が間違えて思っていたと言うか」
そして、私はこれまでの経緯をかいつまんで話した。




