09
体が重い。
それでもずっと寝ているわけにはいかないからと体を起こすと変な場所にいることに気づいた。
「保健室……?」
「あ、やっと起きたね」
「もしかして倒れたとか?」
「そう、正解だよ」
実は体調が悪い状態で無理をして学校に来ていました、なんてこともないからそれしか考えられなかった。
でも、こうして当たったところで解決とはならない。
「きみの友達が言っていたんだけどね? 喋っている途中に急に倒れてしまったらしいんだ」
「病気とかですか?」
「んー念のために病院へはいった方がいいかもね」
会話を続けている内に少しずつ楽になってきたので教室に戻ることにした、職員室にも寄ることになって微妙だったがやはりずっと占領しているわけにもいかないから仕方がない。
「あっ、あんた大丈夫なの!?」
「お、落ち着け、私はこの通り大丈夫だ」
「それならいいけど……」
琴美が落ち着いたところで横からタックルされてそれに負けそうになったのは内緒だ。
「けいふぉふぁいじょうぶ!?」
「と、飛んでいるから落ち着いてくれ」
「んっ……ふぅ、いきなり倒れてびっくりしたんだから」
いやそれに関しては私の方が驚いているが……。
あと、いまは昼休みで賑やかな空間だった。
だが、食欲は湧かないのでお弁当は帰って食べることにする。
「当分の間はあんたを一人にしないわ」
「それはありがたいな」
今回は学校で自分以外にもいたからこその結果だ、一人のときなら倒れたままそのままあの世へ、なんてことになりかねないから意地を張ったりはしない。
私はまだまだ死ねないのだ、少なくとも嘉子が大きくなるまでは生きていなければならない。
「すまないな暁音、本当なら琴美と二人でいたいところだろうに」
「ううん、けいとが元気でいてくれるならそれが一番だよ」
今度また肉を買ってやるからな!
それからは特に問題もなく終えて放課後になった。
「帰りましょ」
「ああ」
元々残るつもりもなかったが少なくとも一ヵ月ぐらいはこれでいいと思う。
ちゃんと授業を受け、放課後になったらすぐに帰ればいい。
「あ、そうだ、嘉子には内緒にしておいてくれ」
「分かっているわ、あの子は特にあんたのことを気に入っているから倒れたなんて聞いたら集中できなくなりそうだものね」
「……ちゃんと言っておいた方がいいと思うけどな、私だったら自分だけが知らないなんて嫌だよ」
「それも……そうね」
隠していたことがばれたらそれこそ集中できなくなってしまう可能性も……。
「分かった、私から言う」
「けいとがいいなら」
「ああ」
家に着いても今日はすぐに部屋にいったりはせずに待っていると「ただいま」と高校生組よりも遅い中学生が帰ってきた。
「あれ、ご飯の時間でもないのにけいとがリビングにいるなんて珍しいね? 琴美と暁音がいないのも珍しいけど」
「嘉子、隣に座ってほしい」
「うん」
しかしなんだ……これは流石に自意識過剰ではないのだろうか。
倒れたなんて言われたところで「気を付けないと」と表情も変えずに注意されるだけではないだろうか。
なんで琴美にでも暁音にでも頼まなかったのか、それをいま後悔している。
「言いづらいこと?」
「まあ……な」
「言いづらいなら無理して言おうとしなくていいんじゃないかな」
「いや、聞いてほしい」
「うん?」
さっさと言え、嘉子の時間を無駄にするな。
それでも色々と保険をかけてからどうだったのかを話すと、
「本当に……?」
と、少し驚いたような顔をしていた。
「……もしかしてまたなにか隠していたの?」
「いや、私も分からないのだ、朝から元気だったのに急にそんなことになって驚いているのだ」
「それなら病院にいった方がいいよ、病気とかだったら嫌だよ」
「そうだな、今度いってみる」
よし、これで終わりだ。
それで一人にしない発言を律儀に守ってキッチンに隠れていた琴美もこっちにやって来た。
「当分の間はいとを一人にしない作戦を実行するわ、嘉子も協力してちょうだい」
「うん、特にお風呂とかの時間はしっかり見ておかないと」
「順番にいとと一緒に入ればいい――」
「全部私でいい」
「そう? じゃあよろしく」
あ、琴美め、作戦とはそういうことか。
ま、琴美は暁音大好き人間だから違う同性と入るのは問題か。
それに暁音と入ると何故かイライラしてくるし、精神的にもその方がいい。
「琴美ももったいない時間の使い方をしないで」
「なるほどね」
「けいとのことは学校以外なら全部私に任せてくれればいいから」
「分かったわ――というか、私達も明日が終わればもう冬休みだからね」
「そういえばそうだった、私なんて明日から冬休みだ」
そうだな、明日が終われば来年の六日まで学校にいかなくていいのは楽でいいな。
と言うのも、早起きは得意でもどんどんと寒くなっていてベッドから出づらいからだ。
その点、連休に入ってしまえば少しゆっくりしても損なことはないから大きい。
「冬休みはずっと一緒」
「頼むぞ」
「うん」
根拠はないがそれこそ病気にでもならない限りはもう倒れることはない気がした。
ただ、気を付けた方がいいのは確かなので、やはり一ヵ月ぐらいはみんなに近くにいてもらいたかった。




