表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学内格差と超能力  作者: 小鳥頼人
2巻 2科分裂編
61/83

第9話 ②

「うーっす宏彰」

「おはよう誠司。みんなも」

 いつもどおり登校し、いつもどおりみんなと朝の挨拶を交わす。

 数日前の遠足の余韻は完全に消え去った、普段どおりのありふれた日常。

「今日は一時間目から数学かぁ。しんどいなぁ」

「た、体育よりは、マ、マシだけどね」

「同感。バスケをやるくらいなら数学の方がいいね」

「えー、体育の方が楽しくねぇ?」

「誠司に同意するよ」

 球技が嫌いな太一と運動全般ダメな豊原は体育よりも数学の方がまだマシとのこと。二人とも数学の成績は非常に良いしね。

 とりとめもない会話もいつもどおり。


『――遠足で高坂君が辻堂君と揉めてたらしいよ』


 ただ、いつもと違うこともあった。


『またなの?』

『いくら馬鹿にされるからといっても辻堂君につっかかりすぎじゃない?』

『出るくいは打たれるんだよな』

『ますます1科から目をつけられるじゃん。勘弁してほしいよよなぁ』


(………………)

 俺の噂話をするクラスメイトの会話が耳に入ってきたのでつい耳をそばだててしまった。

 彼らとしては「出しゃばるな」と言いたいのだ。余計な真似して学園をかき乱す俺に対していい感情は抱いていない。しかし2科の特性上、直接俺に物申してくる人はほとんどいない。

 彼らの主張も分かる。現状で妥協する代わりにこれ以上1科との関係を悪化させたくない考えだってある。

 そこが人間関係の難しいところだ。同じ人間で、同じ日本人で、同じ学園で、同じ学科、クラスメイトの同士でさえ、思想は皆が異なり同志になるとは限らない。

 けれど俺としてはその考えには賛同できかねる。理不尽をひたすら我慢したところでなんのタメにもならない。だから1科に抗っているんだ。

 問題は俺の行動に1科と揉めたくない勢にいらぬ飛び火を与えてしまいかねないリスクがはらんでいることだけど――そこも対策を講じなくては。

 と、それはさておき。

「どこから噂が出回ったんだろう?」

 辻堂との遠足での勝負は太一、誠司、豊原にしか話してない。

「俺は誰にも話してないぞ?」

「右に同じく」

「さ、更に、み、右に、お、同じく」

 三人は首を横に振ったけど、

「みんなを疑う気は一ミリもないよ」

 なんだかんだで太一たちを信じている。仮に誰かに話してたとしても仕方がない。俺だって口止めしてないし。

 もしかしたら俺と辻堂が争ってた様子をたまたま学園関係者に見られてしまっていたのかもしれない。

 俺たちが雑談しているように、他のクラスメイトも雑談を続けている。


『中間試験の結果も良くなかったし幸先不安しかないなぁ』

『今の環境で静かに勉強できる気がしないよ』

『1科からの風当たりもよりいっそうキツくなったしね』


 教室の雰囲気がよくない。

 さきほど俺と辻堂の話をしていたグループは学園生活に不安をいだいている。俺のせいだ。

 俺と辻堂のいざこざが誰に見られていたのか広まっており、中間試験の結果がかんばしくなかったことも手伝って教室ではネガティブな会話が飛び交っている。そして会話を繰り広げてる人たちはちらっと俺を見てくる。

 彼らは保守派のアンチ高坂なんだろうな。同じ2科でも考えは千差万別。2科の生徒ならみんながみんな俺の意見に賛同するはずもなく。

 とはいえ、俺がクラスの不和を生み出す要因となってしまっている事実については無視できない。責任を感じる。

(闇雲に1科とぶつかれば済む問題じゃないんだなぁ……)

「宏彰、考え事かい?」

「おわっ!? い、いや。ぼうっとしてただけだよ」

 自分の世界に入り込んでいたらしい。太一の声が侵入してきたものだから驚いてしまった。

「……なんで挙動不審なんだよ」

「ナ、ナンノコトカナ?」

 ジト目で睨む誠司だったけど、その視線は他の生徒へと向かった。

「……あいつらの会話が気になるか?」

「まぁ……」

 誠司にも彼らの会話が聞こえていたらしいけど、

「なにを今更慌てる必要があるんだよ」

 俺とは違って全く意に介していない。噂話の当事者じゃないからではなく、こうなると分かっていたような口ぶりだ。

「これも想定できた展開だろ? この空気感に耐えられないなら1科に抗うのは諦めた方が賢明だ。今のままじゃあ誰も幸せにならないぞ」

「そう、だよね……」

 厳しい言い方だけどそうだ。クラスの不和を解決できない、それどころかアウェイな雰囲気にのまれて尻すぼみしていくようなら俺の悲願が叶う日はこなかろう。

「まぁまぁ。宏彰だって2科を思ってあれこれ手を尽くしてるんだ。俺たちは見放さず、生暖かく見守っていこうじゃないか」

 珍しく太一が俺をまともにフォローしてくれている気がする。今夜は雪か? 五月だけど。あとなぜ生暖かく?

「おはよう。急だが、一時間目の予定を変更して学科総会が開かれることになった」

 HRのチャイムが鳴り、柴山先生が教室に入るなり突如として学科総会開催を告げた。

 学科総会自体は年に一度定例開催されているけど、緊急の議題が発生した際は臨時でも執り行われることとなっている。去年も一度緊急開催されたっけ。

「本当に急ですね」

 誠司がしかめっ面で柴山先生に言葉を返す。あまりにも突然すぎていぶかしんでいる。

「緊急で話したい題材が発生したんだと。体育館に移動してくれ」

 柴山先生の指示を受け、クラスメイトたちは各々席を立って移動をはじめた。

 そこまで重要な議題なのか……妙な胸騒ぎを感じるけど、行けば分かるか。


    ☆


 体育館に着く。

 他学年と他クラスの生徒たちは既に集まっていた。

 場には男子生徒しかいないので「貴津学園って男子校だったっけ?」とついつい思ってしまう。

「あっ、三浦さん」

 俺が所属しているパソコン部の部長を務める三年生の三浦みうら真澄ますみさんと目が合った。

「やぁ高坂君。今日は何事だろうね?」

「さぁ?」

 三浦さんも知らないのか。まだ完全に非公表な話らしい。開催関係者以外は誰も状況を飲み込めていない。

「お前ら背の順で二列に並べー。迅速じんそくかつ正確に! 綺麗な直線を描きたまえ!」

 俺たち6組は誠司のヘンテコな指示で背の低い順で二列に並んだ。学級委員の誠司は最前列だ。迅速じんそくはともかく正確さと直線の要素いる?

「急に学科総会とはなんなんだろうね?」

「分からないけど、緊急ということは十中八九いい話題ではないね」

 太一とお互いに首を傾げあう。

 学科総会は各学科の全校生徒のみで実施される。つまり2科の学科総会では1科の生徒は誰一人参加できなければ、2科の先生も不干渉。『2科の生徒のみによる』総会だ。

 ちなみに正式な手続きを踏んで2科全クラスの担任から承認を得れば誰でも開催できる。

 右隣には7組、更にその隣には沢口君たち8組の生徒が並んでいる。

 同じ2科といっても7組、8組とは体育で合同授業を受ける時くらいしか接点がないんだよね。

 7組は2科の中ではもっともが強い生徒の割合が多く、かつ陰キャの割に血の気の多い生徒が数多く在籍している。度々1科男子と取っ組み合いの喧嘩をする狂犬もいるくらいだ。

 中間試験の成績は2科の3クラスの中でトップだったし、スポーツも3クラスに限れば一番強い。ただ問題児が多いのが欠点だ。

 一方の8組は暗そうな生徒が多く談笑も少ない。中間試験の成績も6組よりは上だけど僅差だ。スポーツも体育の授業で見ている限りは苦手な生徒が特に多い。

 反面問題を起こす生徒は少ない。沢口一味が在籍しているインパクトが強いのがなんというか……難点って感じ。

 ほどなくして、一人の生徒がステージ上に上がった。よく見た顔だった。


「皆、集まってもらってすまない」


 近頃よく聞く声がマイクでいつも以上に大きく耳に響いた。

 ステージ上にいる生徒は、沢口君だった。

「今日は2年8組の学級委員であるこの僕、沢口修平がどうしても皆に判断いただきたい事柄があるため、こうして2科全員が集まる機会をもらった」

 普段よりは多少取りつくろった口調で喋ってるけど、奥底にある傲慢ごうまんさは隠せておらず、こっそりと顔を覗かせている。3年生もいる場でタメ口だしね。

「僕の主張に対して意見や感想があれば遠慮なく声に出して反応してもらいたい。2科生徒の生の声を、聞かせてくれ。よろしく頼む」

 今回の臨時学科総会は沢口君主導か。嫌な予感しかしないな……。

 沢口君はわざとらしく体育館全体を見渡した。そして生徒たちから一切の私語が抜けたことを確認してから再度口を開いた。

「これから話す内容について、エビデンスを用意しているのでプロジェクター係を設けたい」

 アシスタントの人員を用意するみたいだ。……これまた嫌な予感しかしないんだけど。

「2年8組、高畑勇太郎! 富田祐介! 手伝ってくれ!」

「「はいっ!」」

 二人は威勢よい返事で立ち上がると早足でステージ上へと向かう。

 ……やっぱりねって感想しか浮かばない。普段俺にウザ絡みしてくる三名がステージ上に集結した。この段階で俺の心は曇天どんてんだ。

 富田君は持参のノートパソコンの画面を器用な手さばきでプロジェクターに表示させた。

「おほん。さっそく本題に入らせてもらおう」

 準備完了ということで、沢口君は生徒一人一人を一瞥いちべつしながら本題に入る。まるで誰かを探しているかのような所作しょさ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ