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学内格差と超能力  作者: 小鳥頼人
1巻 学内格差編
10/83

第3話 ②

    ☆


「早速、活動開始と洒落込みますか」

 サッカー組は柴山先生に悟られないように近場の公園に到着。からの太一の活動開始宣言。

 先生には悪いけど、スパルタ指導なんかされたら文化系が圧倒的に多いクラスメイトたちの気力が削がれてしまう。それだけは絶対に避けたかった。

 ちなみにイキって啖呵を切っておきながら大変申し訳ないけど、俺はサッカーなんて体育の授業と去年の球技大会でしかやったことがない。

「まずは現段階での個々の実力を確認しよう。リフティングからやってみようか。豊原、やってみて」

「ぼ、ぼぼ僕が、せ、先陣を切るのかよ! し、仕方ないなぁ」

 太一から指名を受けた豊原はものすごく嫌そうな反応だ。豊原は運動が超苦手だからなぁ。

「よ、よよよよし、い、行くよー」

 豊原はボールを自分の足の上へと落とし、足の甲を使い全力でボールを叩き――

「痛ぇッ!?」

 豊原の横に立っていた誠司の顔面にボールがクリティカルヒットした。

「豊原、記録一回、っと」

 他人事のように太一が大学ノートに豊原のリフティング記録を書き込んでいる。マネージャー気取りか。

「おい隆!! お前、俺に恨みでもあるのか!」

 誠司が鼻血を流しながら豊原に抗議する。

 一方、豊原はやおら誠司に土下座をしはじめた。

「力みすぎじゃない? しかも蹴る瞬間にボールから目を離してた。あとリフティングでは足の甲の角度をもう少し傾けて蹴り上げないと、ボールが変な方向に飛ぶでしょ」

 太一の奴、結構詳しいんだな。球技ができないのは中学時代から知ってるけど、サッカーに関してはその実力は未知数だ。実は結構上手かったりするのだろうか?

「次は俺だ! 行くぜ、記録百回!」

 やる気満々でリフティングに臨む誠司。

 さすがは野球部。運動にかける情熱が一人だけ段違いだ。それが2科の面子の中では浮いてしまうのが何とも切ない。

「一、二、三、四」

 メンバー全員が覇気のない声で回数を数えていく。

 こ、こいつ、できる……!

「よっ、っと――あ、しまっ――!」

 惜しくもボールを地面に落としてしまった。

 でもすごいや! 記録十四回。

「さすがだね。ただ、一回一回に無駄な動きが多い。それじゃあ体力の無駄遣いだよ。もっと小振りなフォームを意識してみてくれ」

「小振りなフォームだな。気をつける」

 それから続々とメンバーたちはリフティングに挑戦していく。

 ――が、ほぼ全員が二回以下の記録。

 あれ? これは先行きがかなり危ない感じですか?

 残るは俺と太一のみとなった。

「よし宏彰、みんなに手本を示してやってくれ」

「俺も素人だけどね」

 手本て。既に誠司が見せてくれただろう。変なプレッシャーをかけないでくれないか。

「じゃあ行くか。ほいっと」

 ボールを地面に向かって落とすと同時に誠司のリフティングを思い出す。

 足の甲の角度はこのくらいだったか? 膝の曲げ具合はこんな感じかな。

 くるぶしが斜め上を向く位置でボールを蹴り上げると、ボールは真上に浮き上がった。

 よし、同じ要領で――っと。

 少し斜めに飛ばしてしまった。ボールは重力に逆らえず、無情にも地面に落ちようとする。

 そう簡単に落としてたまるかっ。

 足を伸ばしてボールを蹴るが、今度はずいぶんと高く蹴り上げてしまった。

 うーん。さっぱり安定感がないなぁ。あんな高くから落ちてくるボールを蹴ったら、明後日の方向に吹っ飛ばしてしまいそうだ――ならば。

 膝を使ってトラップし、ボールのエネルギーを緩和させて、再び蹴り上げる――っと、変な方向に飛ばしてしまった。

 さすがにもう無理だ。記録は五回。

「へぇ、なかなかやるじゃないか」

 太一が珍しく素直に感心している。

「俺が一番ビックリしてるよ。一応手本もどきは見せられたかな?」

 とはいえ、五回なんて全然大した回数じゃない。五回で暫定二位なのは、さすがは2科と言ったところだろうか。

「宏彰は飲み込みが早そうだね」

「誠司のおかげだよ。彼のやり方を参考にした結果だからさ」

「どおりでフォームが似通っていると思ったよ。君の場合、あとは練習量次第でリフティングは無難にできそうだね」

 太一からの所見をいただく。コーチか。

 残るは太一のみだ。

「ラストは太一だね。締めくくりは大事だよ」

「ふっ、まぁ見ててくれよ」

 サッカーボールを手に持つ太一はずいぶんと自信があるようだ。みんなに何度もアドバイスをしていたし、やっぱりそこそこできるのかな?

 ボールを地面に放る。膝の曲げ具合、足の角度のバランス、下半身にかける体重まで完璧に見える。実に綺麗なフォームだ。

 そしてフォームを崩すことなく――――空振りした。

 ボールは虚しく地面にバウンドを繰り返している。

 え、何これ?

 その後何回か仕切り直したものの、太一の足にボールが触れることはなかった。

「とまぁ、今のが見本だね。参考にしてくれ」

「どこが見本なんだよ!? 最低記録じゃん! 他のみんなだって一回は蹴れてるんですけど」

「誰も回数で魅せるとは言ってないけど? 俺が見せたかったのはフォームであって」

「その言い訳は見苦しいから!」

 何を屁理屈こねてやがるんだこの猿は。確かにフォームも大事だけど、ボールをコントロールできないんじゃまるっきり意味がないじゃないか。期待させておいてこの結果か。

 前々から感じてはいたけど、貴様は本当に期待を裏切る男だよ。

「これで全員チャレンジは終了したね? 平均回数は三回だ」

 誠司がだいぶ平均を上げてくれたけど、さすがに一人だけ好成績でも意味はなかった。

 ボールコントロールは絶望的だな。この調子ではシュートどころか、パスやドリブルすらままならない可能性が高い。

「次はシュートとキーパーがどれだけできるかやってみようか」

 太一はあくまでも冷静だ。ずいぶんと余裕じゃないか。俺は早くもサッカーで1科に勝つなど甘い願望だったと後悔しはじめているというのに。


 色々と試してみた結果。シュート力はほぼ皆無。しかしそんなシュートを止める守備力すらないに等しい。

 更にパスやドリブルも明後日の方向にボールを転がしてしまい、まともに成立しなかった。

 分かってはいたけど、正攻法で勝負をしたら絶対に惨敗する。やはり何かしらの策を立てた上で臨む必要があるな。

「分かったとは思うけど、これが現時点での俺たちの実力だ。今からたった二週間弱で1科と正面からやりあえるくらいまで上達できるほど、サッカーという競技は甘くはない」

 言い切ってくれるじゃないか。それを言ってしまったらメンバーの士気が下がるんじゃないか?

 というか、球技が嫌いな貴様がサッカーの何を知ってるというんだ。無論、俺も知らんが。

「だけど作戦は考える。戦力差があってもいい勝負に持ち込む作戦をね」

 おお、やはりバッチリ策は練るのか。さすがは太一だ。

「宏彰が責任を持って考えてくれるから安心してくれ」

「って俺が考えるのかよ!」

 俺が言い出しっぺとはいえ、そういうのは太一の方が向いてるんだけどな。

 どうしよう。今日からサッカーの入門サイトを読み漁る必要があるな。

「こんな感じで球技大会当日まで毎日練習を行うからよろしく。けど無理はしないでくれ。予定がなくとも練習は気が向いたらでいいから。強制参加は宏彰、豊原と俺の三人だけだ」

 俺たちだけVIP待遇なのね。まぁ他の生徒に毎日練習を強制したら、あったはずのやる気も消えてしまいかねないしな。みんなの自主性に委ねる他ないか。

「今日はこの辺で解散しようか。明日もやるからよろしく」

 太一の一声により、今日の練習はお開きとなった。


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