■最終章②「北山崩壊」
……北山学園。
昼休み。
いつも通りの時間。
いつも通りの風景。
――の、はずだった。
ギシ……ギシギシ……
校舎の奥で、音が鳴る。
いや、違う。
“空間”が軋んでいる。
「……やっとか」
屋上へ続く階段を、ゆっくりと上る。
一段、一段。
逃げ場はない。
必要もない。
屋上の扉を開ける。
――バンッ
風が吹き抜ける。
そこにいた。
「……遅かったじゃないか」
統括校長。
白髪混じりの髪。
皺の刻まれた顔。
だが、その目は――
“現役”どころじゃない。
「アンタが呼んだんだろ」
「副校長を閉じ込めて」
「観察して」
「仕上げるために」
一歩、前に出る。
「……試験官気取りか?」
統括校長は、わずかに笑う。
「半分は正解だ」
「もう半分は?」
「……排除だ」
風が止まる。
その瞬間――
「凍てつけ、縛れ、万象の檻……封」
空間が、凍る。
見えない檻が、全身を拘束する。
普通なら――終わりだ。
「……なるほどな」
一歩。
踏み出す。
バキィッ――!!
檻が、砕ける。
「……ほう」
統括校長の眉が、わずかに動く。
「完成したか」
「いや」
首を振る。
「やっと“始まった”だけだ」
――ドンッ
足元から、黒い気配が噴き上がる。
だが、それは暴れない。
“整列”している。
「消さなかったな」
「当たり前だ」
「それが俺だからな」
統括校長が、静かに息を吐く。
「……甘いな」
「そうかもな」
「だが」
一瞬で距離を詰める。
「アンタのやり方は気に食わねぇ」
「軋れ、裂けろ、絶海の戒め……斬」
空間ごと断つ一撃。
だが――
「遅い」
統括校長の指先が、わずかに動く。
「歪め、逸らせ、理の外縁……転」
斬撃が、消える。
いや、“存在ごと逸らされた”。
「……チッ」
「これが差だ」
「経験」
「研鑽」
「そして――」
「1000年の側にいた者と、そうでない者の差だ」
重圧が、降りる。
膝が、わずかに沈む。
……強い。
だが。
「……だからなんだよ」
顔を上げる。
「俺は“今”をやってんだよ」
ドンッ!!
地面が割れる。
黒と光が、同時に噴き上がる。
「参ぜよ、重ねよ、忘却の武士……圧」
重力が、統括校長を押し潰す。
「……ほう」
微動だにしない。
だが――
「効いてるだろ?」
統括校長の足元に、わずかな亀裂。
「……面白い」
初めて、笑った。
「ならば――」
その瞬間。
校舎全体が、震える。
「北山学園そのものを使おう」
……は?
「展開」
「“第七準監獄”」
世界が、反転する。
校舎が、歪む。
教室が、檻に変わる。
「ここはもう“学校”ではない」
「お前の処刑場だ」
……なるほどな。
笑う。
「やっと“本気”かよ」
拳を握る。
「いいぜ」
「その監獄――」
「ぶっ壊してやる」
北山学園が、完全に“戦場”へと変わる。




