襲撃
終わりにしない理由を考える。考えられる限りは終わらない。
「吼えろ、凍えよ、未開の星屑……氷」
瞬間。
空気が凍りつく。
次の刹那には、世界ごと削り取るような氷の嵐が押し寄せた。
「煌めけ、奏でよ、葬送の調べ……響」
――音。
それは音ではなく、死だ。
美しい旋律が空間を満たした途端、教諭たちが次々と膝をつき、崩れ落ちていく。
「……ちっ」
やられた。
本庁か。
しかも――
「氏名票付きとは、ご丁寧なことで」
皮肉を一つ落とす。
目の前に立つのは、二人。
統括憑鬼祓いと、その直轄。
――エリート中のエリート。
「対象確認。排除を開始する」
感情のない声。
完全に“処分対象”だな、俺たちは。
「……やっぱり来たか」
視線を流す。
先輩たちは不在。
このタイミングを狙ってくるあたり、さすが本庁だ。
……いや。
「……」
そこまで分かっているなら――
誰かが“情報を流している”。
「……」
だが、今はそれどころじゃない。
強い。
――あまりにも。
校長クラスを束ねても、止められるか怪しい。
「……どうするかね」
一歩、前に出るか。
そう思った、その瞬間。
「副校長先生!!」
声が飛ぶ。
体育会系の教諭だ。
「ここは、自分に任せてください!」
……おいおい。
「この間みたいな無様は、もう見せないっす!」
――いい顔してるじゃないか。
「……任せた」
小さく、そう返す。
「弾め、集まれ、不屈の海流……濁!!」
轟音。
濁流が地面を抉りながら奔流となり、
氷を砕き、飲み込み、叩き潰す。
「――なっ」
わずかに、統括の足が止まる。
いい。
効いてる。
濁流の唸りが、
旋律をかき消す。
「くっ……後退する」
「はっ!」
逃がすかよ。
「寄れ、剥き出せ、贋作の人形……吊」
「踊れ、廻れ、操りの糸……絞」
――完璧だ。
主任教諭の言霊が重なる。
二人の身体が宙に引き上げられ、強制的に拘束される。
「……見事」
思わず、呟いた。
「ナイス連携だ」
体育会系も、主任も。
実力差を覆した。
――相性でな。
「……」
ここで、思考が走る。
今回の勝因は明確だ。
相性
つまり――
「……」
相手は、
“こちらの手札を把握していなかった”。
もし知っていれば、
この組み合わせで来るはずがない。
「……なるほど」
となると。
“監視者”は――
体育会系の言霊を知らない位置にいる。
「……」
体育会系は除外。
同期の二人も、除外。
俺のパーティは、当然除外。
残るは――
「……」
主任憑鬼祓い。
あるいは――
先輩。
「……やれやれ」
どっちも、笑えないな。
「副校長先生、どうします?」
主任が静かに問う。
視線の先では、
拘束された二人が沈黙を貫いている。
口を割る気配は、ない。
当然か。
「……さて」
軽く首を鳴らす。
「どうするかね」
――吐かせるか。
それとも。
壊すか。




