出発…?
頂上から見る景色の本当の美しさは、麓から頂上を見上げたことのない者には解らないのだ。
あっという間に時間は過ぎ、すでに出発の時刻となった。
組織委員会や校長会の幹部たち(ちなみにウチの校長は校長会の長、校長会長でもある。)に見送られ出発する。
ハンカチ持ったか、腹痛の薬は持ったか、など校長がやたらと俺の世話を焼く。そんな上司をうまくかわしながら俺は、一緒に行く者達の様子を確認する。
1人目は、平静そのもの全く感情の動きを見せない主任教諭。俺が以前いた学校で育てたなんて偉そうなものでもないが、世話をした男だ。いまは主任教諭でありながら学校を実質的に仕切っている。教師になったのはとりあえずだったようで、ながらく準教諭、教諭でくすぶっていたところを、たまたま俺が巡り合わせたってところだ。まだまだ伸びしろがデカいという点に於いては俺と同じか、上回る可能性を感じている。ちなみに家族はおらず天涯孤独の身でもある。
2人目は、教諭だ。バリバリ体育会系の気持ちの良いやつだ。まだ数年の経験だが、件の2人の背信者の教諭とは同期でライバルでもあったようで、色んな思いもあるだろう。
3人目は、養護教諭。紅一点というべきか。まあ職業柄、回復には欠かせない人材ではある。年齢不詳であり、正確な年齢は俺にも分からないが、分かったところで意味はないな。戦闘に期待をするわけではないが、時折感じる覇気は、只者ではないことはよくわかっているつもりだ。年齢不詳といえば、ウチの校長もそうである。先程から、校長が、この養護教諭をバチバチ睨んでいるように見えるのはきっと気のせいだな。
「行くかね。」
「はい。」
「うぃっす。」
「いつでも。あら副校長先生、襟が曲がっておいでですわ、直して差し上げても?」
「全くよろしくないよ、この女狐!!」と何故だか校長が殺気をほとばらしながら叫んでいる。
「あら?どなたかと思えば、結婚できないのを悟って出世だけに人生をおかけになってめでたく思いを遂げられた校長先生ではありませんか?お元気そう…あらっあんまりお元気そうではなさそうね、言霊使ってヘトヘトってお顔で、お可哀想ですわ。」
「〜〜っくくぅ〜相変わらず、口の減らない、女狐ね!」
「あらあら、お褒めのお言葉ありがとう存じます。あなた様も、相変わらず使い道のないボリュームだけが取柄の胸と、ちょっと整ってるって言われていい気になってる顔も、健在ね、狸校長先生」
…やめてくれよ、全く。2人とも、一般的にみれば、間違いなく美女のカテゴリに入るのだろうが、外見以外の大切な部分が足りなくて今を迎えているんだろうな。やれやれ、これは早く出発したほうが良さそうだ。
じゃ、今度こそ。行くかね。




