478 小堀正次
無事に石田親子を召し抱える事に成功し、次なる目的地である小堀村へ向かう。
ここには茶人で有名な小堀遠州の父である小堀正次が居る…筈。
正次は磯野員昌の家臣で、妻に員昌の娘を貰っている程の重臣だが、員昌が織田家に降伏したのが気に入らなかったのか、出奔して出家してしまった。
まあ、元々出家していて還俗して員昌の家臣になったので、元に戻っただけだけど。
正次は、藤吉郎や弟の小一郎に政治手腕を買われて検地代官を務めるくらい優秀な文官なので、これを機に召し抱えたい。
小堀村にある正次の屋敷へ向かうと、正次は今は隣村の総持寺に居ると、奥さんが教えてくれた。
何でも小堀家は代々、総持寺に土地や金を出したりして手厚く保護しているらしい。
まあ、出家したんだから正次も寺に居るわな。
正次がどこの寺か分からないから、結局は屋敷には来なきゃならないんだけども。
正次の居場所を教えてくれた奥さんに礼を言い、正次の居る総持寺へ向かう。
「御初に御目にかかる。森兵部少輔に御座る」
小堀正次に対して丁寧に挨拶する。
「これは御丁寧に。道喜と申します 」
道喜は小堀正次の法号だか戒名だかだったかな?
「此度は新助殿を当家へ誘いに参った」
ここは敢えて相手の名乗った道喜ではなく、通称の新助で呼ぶ。
この人、出家と還俗を繰り返してるからな。
「某、元は浅井方の磯野丹波守殿に仕えておりました。先の戦で丹波守殿は織田家に降られ、それを得心が行かずに出奔した身。浅井家が滅んだとて、今更織田家に仕えるなど丹波守殿に顔向け出来ませぬ」
まあ、織田家に降伏した磯野員昌に反発して出奔した手前、直ぐに織田家に仕官しては、ばつが悪いのは理解出来る。
でもお前、史実では直ぐに藤吉郎や小一郎に仕えとるやん。
「新助殿の才を埋もれされる事に比べれば些細な事に御座る。御忘れやも知れませぬが、二年半程前にも某は新助殿を召し抱えんと文を送っております。其程に貴殿の才を買っておるのです。新助殿が丹波守殿の許へ戻られるというのであれば、道理と思い引き留めは致しますまい。しかし、この地で無為に時を過ごすというのであれば看過致しかねる。新助殿の才は、決してその様に腐らせて良いものでは御座らぬぞ!」
正次を適当に誉めて好感度を上げる。
何せ俺の言葉には、2年半前の義昭の上洛時から誘っているという事実がプラスされているからな。
それなりに効果があると思うんだけど。
磯野員昌の所へ戻るなら…仲を割って好感度を下げたくないし、今後史実通り員昌が出奔して再雇用のチャンスがあるかもしれないので諦めるが、そうでないならウチにおいで。
「見ず知らずの某をそこまで買ってくださるとは…」
まあ、確かに今日初めて会ったんだけど。
「他国には知られてはおらぬでしょうが、これでも某は郷土にて尾張の水鏡と呼ばれる程、人の才を見抜く事に自信が御座る。少なくとも、才を見逃す事はあったとしても、才があると思った者が凡庸だった事は一度として御座らぬ。その某の目が、新助殿には確かな才があると告げております」
だって後世に名が残っている人を指摘しているだけだからな。
だから、例え有能でも名が伝わっていない人は指摘のしようがないんだけど。
「成る程…」
ちょっと胡散臭くなったかな?
よし、土地で釣ろう。
「もし、当家へ仕官いただけるならば、浅井郡に一千石…いや一千五百石の所領を約束致そう」
「有難い御言葉に御座いますが、申し訳御座らぬ。伝来の土地を手放したくは御座いませぬ」
土地に拘る方かぁ。
領地替えにあった磯野員昌の後を追いそうにもないのは分かった。
でも、正次を藤吉郎にただで渡すのも嫌だな。
何とか藤吉郎と交渉してみるか。
いつもなら、面倒臭いからと諦めるところだけど、どうせ藤吉郎とは所領の境界線を確りと話し合っておかないといけないからな。
後で揉めると面倒だし。
史実の中川重政の様に、失脚する可能性もある。
力関係的に失脚するのは藤吉郎の方かもしれないが、俺も殿からの印象は悪くなるしな。




