471 まん丸
この戦いで敵対した江北の国人衆の調査や治安維持等の雑事を家臣達に頼み、岐阜へと向かう。
生まれた子の顔を見て、妻の虎に声を掛ける為だけど、何故子供の名前が勝手に付けられているのかを調べねば。
いや、子供の名前自体に不満がある訳ではない。
どうせ子供の名前は、俺や爺ちゃんの幼名である『小太郎』か、親父の『満』の名を付けただろうから、『満丸』でも何の問題ないさ。
新しく家を興した俺が、その2つの幼名を子に与えるのがマズいというのならば、素直に別の名前にしたさ。
でも、俺に一言あっても良いんやない?
さて、名前を付けそうな容疑者は2人。
容疑者の片方は親父で、もう1人は殿だ。
時代的にも母上等が、俺や親父を差し置いて名前を付けるとは考えにくい。
なので容疑者は、この2人。
しかし、殿は無いだろう。
俺より先に嫡男誕生の報告を受けるとは思えないし、生まれる前から名付けを命じていたなんて思えない。
何より殿のネーミングセンスは壊滅的だ。
子供に『奇妙』とか『茶筅』とか『酌』とか、挙げ句の果てに『人』とか付ける様な人に、『満丸』なんて真っ当な名前が付けられる筈がない。
よって殿は白だろう。
ならばやはり、犯人は親父だ!
「殿、名付けをされたのは御隠居様に御座います」
岐阜担当の家臣、山内次郎右衛門(康豊)が犯人を教えてくれた。
爺ちゃんだったか…
しかし、何故だ?
「大変申し上げにくいのですが、殿の名付けに不安を覚えた方々が、御隠居様に名付けを頼まれ…」
俺の名付けに不安?
「馬の名か?いや流石に己の子に、その様な名は付けぬが…」
「…」
おい、何故目を逸らすんだ?次郎右衛門?
しかし、俺が殿程度のネーミングセンスだと思われているのは不本意だな。
確かに馬に能丸とか浦主とか付けたし、他の馬にも時代にそぐわない名前を付けたかもしれないけど、他の物は比較的まともな名付けだったと思うけど。
流石に自分の子に『大洞・小洞』とか『龍王丸』とか、変な名前は付けないよ!
俺の大太刀『大岩山』とか、今の時代っぽい良い名前じゃない?
大岩山に行った事も見た事もないけど。
俺のネーミングセンスが疑われている点については置いておくとして、先ずは虎に会いに行く。
周りの者は子供に会う様に言ってくるが、先ずは虎だ。
先に虎に会う事で、俺が虎を大切にしていると周りに伝われば、虎の立場も強化される…かも?
「ようやった、虎!虎も体に問題はないか?」
虎に労りの声を掛けると、虎はニッコリと微笑みを返してくれる。
無事に男児が生まれてホッとしているのだろう。
やはり時代的にも男児を産むか産まないかで、世間での虎の立場が変わってくる。
こればかりは俺にはどうしようもないので、男児が生まれて少しホッとする。
勿論、娘が生まれていたとしても全力で守るつもりだったけどさ。
でも、楽になるのは良い事だ。
最後に我が息子満丸君に会いに行く。
うん、確かに小太郎ではなく満丸だな。
まん丸だし…




