447 いざ石田家へ
俗に江北とは浅井郡、伊香郡、坂田郡の三郡を指す。
石田家の居る石田村は、坂田郡…つまり江北にある。
つまり、石田家の調略は、江北の調略を命じられた俺の仕事で間違いない!
うん、仕事だから仕方ない。
もう、臣従を申し出てるらしいけど関係ないね!
「以前手紙を送った事もあったが、会うのは初めてだな、藤左衛門」
早速石田家に赴き、当主の藤左衛門正継と対面する。
上洛前に一方的に手紙を送り付けはしたが、会うのは初めてだ。
手紙を持って直接正継と会ったのも谷野大膳(衛好)だったしな。
「その節は御無礼致しました」
正継は恐縮する様に頭を下げる。
「いや、頭を下げる必要などないぞ。その事を責めに来たわけではないからな。石田家が臣従してくれるとは、誠に喜ばしい限りだ」
「ははっ」
「儂が参った訳だが、以前と同じ、儂に仕えぬかという話よ。あの時は断られたが、石田家が織田家へ臣従した今、儂に仕える事を考えては貰えぬか?」
「何故に御座います?当家以上の大きな家は他にも多数御座いますが?」
「儂は、お主とその教えを受けたであろう子等を高く評価しておるのだ」
「其れ程までに我等の事を…」
「無論、所領を捨てて儂の領地へ移って貰えるならば、千貫は出そう。だが、伝来の地を離れる事は出来ぬという思いも理解できる。であらば、お主の子を儂に仕えさせぬか?」
俺が欲しいのはお前の次男の正澄君だ。
真っ当な官僚として実績があるし、粛々と事務を熟してくれるイメージがある。
三成の方は、俺の中で奸臣のイメージが中々払拭出来ない。
後々厄介事の種になりそうな気もするし。
本当はそんな事もないのだろうが、食指が伸びないのは仕方ないね。
勿体無いのは分かってるんだけどね。
「拙の子に御座いますか…」
「なにも嫡男を寄越せとは言わぬ 。お主には子が三人おろう?次男か三男のどちらかで良い。どちらであっても聡明な子であろうからな」
石田正澄と三成、どっちが来ても使える人材だし。
「…分かり申した。では、次男の弥三郎を兵部少輔様へ仕えさせましょう。弥三郎の事、どうか宜しく御願い致します」
正継は少し考えると、正澄の引き抜きに同意してくれた。
よし、未来の有能官僚をゲットしたぜ!
ウチは働き甲斐のある所だから、死ぬ気で頑張ってくれ!
「何れは万石を任せられる者になると期待しておるぞ」
史実では一万五千石だったっけ?
余裕余裕!
石田正澄の仕官は戦後にという事で、取りあえず挨拶だけして館を出る。
さて、次はどうしようか…
横山城の西にある宮川村に居る垣見家と北の姉川沿いの西上坂村に居る上坂家は臣従を拒否して小谷城へ入っているらしいのでスルー。
まあ、全部を味方にする訳にはいかないからな。
滅んでもらって、戦後の報酬となってもらおう。
「殿、某を今浜の上坂家へ行かせてはいただけませぬか?」
どうするか迷っていると、家臣の三雲三郎左衛門が意見する。
「今浜か」
後で長浜になる場所だよな?
臣従を拒絶した上坂家とは別に、今浜にも上坂家って有るの?
「はっ、今浜の上坂兵庫助殿は後藤喜三郎(高治)殿の叔父、三雲家の左衛門(成持)の室の兄に御座います。他の者よりは話し易かろうかと」
へぇ~、後藤さんの叔父さんかぁ。
「良かろう、三郎左衛門。今浜は、お主に任せる」
湖岸の今浜を押さえる事は意味があるだろう。
じゃあ、俺は湖岸を北上しながら調略を続けますか。




