417 加担は出来ぬな
顕如視点です。
摂津国東成郡生玉荘大坂 本願寺顕如
「上人!何卒我等に御力添えを!」
三好家の使いである大代掃部介が、儂等に手を貸す様に求めてくる。
「しかし、我等は貴家だけではなく織田家とも親しくさせていただいております故、即答は致しかねますな」
儂が断れば角が立つ故、代わりに了入(下間頼廉)が掃部介の相手をしておるが、掃部介もしぶとく食い下がっている。
三好家とは古くからの付き合いではあるが、三好家と対峙しておる織田家との関係も悪くはない。
特に織田家の重臣である森兵部少輔との関係はかなり良く、少なくない額の布施も頂いてもおる。
畿内を追われ四国へ退いた三好家などよりも、兵部少輔の方が頼りになるくらいだ。
ただ兵部少輔は、一揆に荷担した暴徒共には厳しく容赦がない。
そこを了明(下間頼龍)等からは懸念されておったりもするが…
だが儂も、言う事を聞かぬ彼奴等には思うところはあるので、兵部少輔の気持ちも分からなくはないがな。
「此度、織田家に味方したとて、何れ尾張守は、この寺にも攻め入って参りますぞ!そうなる前の織田家を叩いておかねば!今がその好機に御座る!」
確かに増長した織田家が、寺に攻め入って参るという懸念はある。
三好家に荷担して織田家を叩いておくというのも有りやもしれぬ。
しかし、それもこの戦に勝てる見込みがあればの話。
今の三好家に、そこまでの力があるかは怪しいところよな。
「ふむ、掃部介殿は好機と申されるが、果たしてそうであろうか?」
「と、申されますと?」
「本来であれば摂津に織田家を引き付けた隙に、朝倉家と浅井家が京を征しておる筈であったと聞き及んでおりますが」
「そ、それは、幾つも立てた策の一つに御座る。成らねば成らぬで次善の策は立てて御座います!」
掃部介は強がるが、狼狽えておるのが丸わかりだ。
この様な者を使いに送る程、三好家は追い込まれておるのやもしれぬな。
「それだけではなく阿波国の方も、何やらきな臭いと聞き及んでおりますぞ」
兵部少輔が小豆島へ攻め込んだとか。
其を防ぐ為に三好家の水軍も摂津を離れ阿波へ戻ったと聞いておる。
「な、何故それを!」
掃部介は驚いておるが、末寺は何処にでもあるのだから、知らせは直ぐに届くに決まっておろう。
まあ、この知らせは兵部少輔自身が知らせて来たのだがな。
兵部少輔も儂の動向に重きを置いておるという事だろう。
「やはり、今の三好家で摂津を制するは、厳しいと言わざるを得ぬでしょうな」
池田家が味方しておるとはいえ、やはり織田家に勝つには厳しい。
「い、いや、我等の役目は織田家の兵を摂津に釘付けにする事に御座る。その間に浅井家が上洛する算段となっており、十分に勝機は御座います。そこに本願寺の門徒が加わっていただければ、更に勝利は間違いなしに御座る」
果たしてそうであろうか?
近江滋賀郡は織田家の下に纏まっておるし、どの国人衆がどちらに味方しておるかは分からぬが、上洛出来る算段は立っておるのだろうか?
確かにそれだけを聞けば儂等も三好家に荷担したやもしれぬ。
だが、その策は兵部少輔に見抜かれておるぞ。
兵部少輔は此度の戦の流れの予想を、態々儂に知らせてきたからな。
詳しくは知らぬが、恐らくは既に近江にも策を巡らせておろう。
織田家と対峙して勝てぬとは言わぬが、此方の被害も大きくなろう。
やはり三好家に荷担する訳にはいかぬな。
掃部介には、そのまま御帰りいただこう。




