二度目の二十代6
岳志に呼び出された場所に移動する時、不可思議な既視感があった。
なにかここを知っているかのような。
そして、思い出した。
ここの近くの駅で岳志と初めて会ったのだ。
あの頃は自分も色々思い悩んだなと懐かしんだ。
以前は喫茶店が建っていた場所はサイゼリヤになっていた。
岳志が店の前で待っているのが見えた。
車を駐車場に停めて降りる。
合流して店内に入った。
「懐かしいよな。昔は俺も高校中退したひよっこでさ。あずきさんが一万円置いてすっと去ってったのを見て大人だなあって感心したもんだ」
そんなこともあったなあと苦笑する。
「その岳志君も今じゃ孫持ちの白髪頭だもんね。時間が経つのは早いわ。サイゼリヤの安さだけは変わらないわね」
「あの喫茶店潰れたんだなあ」
「飲食は厳しいからねえ」
飲食店経営という道もあるか、とふと考える。
「で、なんの用? 引き止めなら聞かないけど」
「なに、見てほしいものあってな。パネホ断ちしてるだろ?」
そう言って、岳志がスマートフォンを取り出す。
そして、ある画面を見せてきた。
「これが、現状だ」
Xのポスト欄だった。
最期にあずきがポストした内容に返信が出ている。
『あずき、焦らないで。ちょっとトラブルがあったのは事実だけど貴女のせいではない』
『二十年前から貴女の放送を聞いています。一番辛い頃に支えられました。こんな唐突な別れって、ない』
『出産の頃に良く聞いてました。アリエルの歌も相まってあずラジは心の支えでした。残念です』
『これからもあずラジ観たいよー。生きがいー』
そんな文章がずらずらと。
どこまで続くんだろうと思うほど続いていく。
「俺も部から追い出されて学校を辞めた辛い時期にあずきさんの放送を聞いて癒されていた一人だ。この気持ちはわかる」
岳志は、優しい口調で言う。
「あずきさんは十分働いた。意見は尊重するよ。けど、ちょっと急ぎすぎじゃないか?」
皆からのメッセージを見て、しばし黙り込む。
どこまでも続くリプ欄。
これが自分が積み重ねてきたもの。
皆、自分が主催するあずラジに救われて、できれば続けてほしいと書いている。
心が、揺さぶられた。
「私……」
「ちょっと考えてみても、良いんじゃないかな」
そう言うと、岳志は五千円を置いてスマホを回収し、去って行った。
一人、残される。
XのURLを貼り付けて旦那に送りつけてみる。
『そういえばね、忘れていた。僕もあずラジで生き方を変えられた自分の一人だ。二人の出会いのきっかけだったね』
その文字を見て、考え込む。
自分が人に影響を与えるインフルエンサーとしての力があるのならば。
発信し続けることが一番の生きがいではないのか。
考え込む。
引退放送の告知はまだしていない。
Xの文章を何度も書いては消すを繰り返す。
結論を出すまでは、まだ時間が必要そうだった。
つづく
今回の話はこれにて終わりです。
プロ野球十六球団構想が出てきましたね。
数十年後の未来を書いてるけどこういう事があるから人生はわかりませんね。




