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DTED・乙女戦士(ヴァルゴファイター)  作者: カタリノ
かつての親友と約束
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第5話 勝利への導き

サブタイトルに困る

 シュンヤは遠くで戦う赤い女の子を呆然と見ているしかなかった。手をつないでいるコタローは女の子を指して瞳をキラキラさせている。特撮ヒーローもののように感じているのだろう。格好からしてどっちかというとプ○キュアだが。

 ふとシュンヤたちと様子を伺っている大学生の1人が、顔を青ざめた。化け物の左手に黒い靄がだんだんと大きく形作られているからだ。


「お、おい。あの化け物こっちに攻撃するんじゃないか」


 その言葉に周りの仲間たちも一瞬で顔を青くする。シュンヤも同様だ。どれほどの威力があるのかわからないが、当たりでもしたらどうなるか考えるだけでも恐ろしい。思わずシュンヤの歯が鳴った。

 不意にコタローをつないでいる手が強く握られる。シュンヤはコタローを見下ろした。状況を把握していないコタローが、小さく首を傾げていた。


「シュンヤ兄ちゃん、どうしたの?」


 純粋な瞳が心配そうにシュンヤを見つめていた。そんなコタローを見て、シュンヤはなんとか唾を飲み込むとコタローの手を離す。そして小さな肩を抱いて、大学生たちにコタローを押しつける。


「すんません。この子、お願いします」

「ちょっと、君!?」

「その子のこと、その子のお母さんに頼まれてんすよ」


 そう言ってシュンヤはコタローたちから全速力で離れていった。背後で大学生たちの焦った声が聞こえるが、足は止まらない。できる限りコタローから距離をとりたかった。


「シュ、シュンヤくん!?」


 そしてその声の中に今日再会した、ココロの声も混じった。何故彼女がここにいるのか。疑問に思いながらも、シュンヤはただひたすらに走る。


(カケルなら、今の俺を見て何て言うだろうな。馬鹿なことすんな、って怒鳴られそうだ)


「おーい、こっちだよバケモンが!!」


 シュンヤは手をあげて化け物の興味をひく。幸い、声が震えることはなく真っ直ぐ通る。しかし頭の中は警告音が鳴り響いていた。


(走って逃げろ。あの変な攻撃だって、避ければいいんだ。速いだろ。俺は速いだろ。カケルだって言ってただろ。俺は速く走ることだけを考えろって。俺は走れる。カケルと違って、俺はまだ走れる。そうじゃなきゃ、カケルに合わす顔がねえ!)


 全速力で走り、体内の酸素が薄くなる。


「あのっ、馬鹿が!!!」


 女の子の罵倒が聞こえ、シュンヤは笑う。カケルも同じこと言いそうだと。

 シュンヤは化け物の方を見る。すると左手から黒い光線が近づいていた。


(あ・・・・・・、ダメだ)


 一瞬でそう悟った。シュンヤの目には光線がゆっくりと近づいている。でも自身の足もそれに合わせてゆっくりと進む。

 死ぬ。そう理解する。


 耳に届く悲鳴が、カケルの声に聞こえた気がした。




《《乙女による防壁(バリアー・バイ・ザ・メイデン) 発動します》》


 シュンヤは女性の声が聞こえると同時に、自身と光線の間を白い壁が立ち塞がった。






 左手からの光線が放たれ、それが大きな靄となり空気中に霧散する。その大きさに衝撃でカケルの体が飛ぶが、すぐさま体勢を整える。唇を噛みしめて一向に消えない靄を見つめていた。そしてエビルをにらみつける。


「ぶっ殺す」


 冷たく言い放つカケルの表情は、まるで殺人鬼のようだった。ゆらりと揺れる体とともにポニーテールの髪が揺れる。そしてそのカケルの頭を


『おちつかんかああああ、こんのボケエエエエイ』


 突如現れたおいちゃんが、跳び蹴りをする。


「何すんだよ!!」

『乙女戦士がんなヒトすうにん殺したようなカオすんなや! ようみいや!!』


 おいちゃんが靄の方を指した。

 次第に靄が晴れてくる。そこには尻餅をついて、無傷のシュンヤの姿。そしてシュンヤの前には白い結界が壁や盾のように立ち塞いでいた。そして靄が完全に消えると結界は薄くなり消えていった。

 それに目を丸くし、そして慌てて測定器を確認する。Lv7だった処女充電が、Lv2へと変わっている。つまりあの瞬間、乙女による防壁(バリアー・バイ・ザ・メイデン)が発動したということになる。カケルは安心したように深い息を吐いた。


「よかった。あいつ、本当に・・・・・・馬鹿だろ」


 カケルは笑って、そしてその場から駆けていく。カケルのいた場所を光線が過ぎていく。今度こそカケルはシュンヤのもとへとたどり着くと、シュンヤを肩へ担ぐ。そしてエビルの攻撃を避けながら遠くへと離れる。


「本当に、無茶な真似するなよ」

「わ、悪い。結局君に助けられちゃったし」

「心臓止まるかと思っただろ」


 肩に担がれているシュンヤは、乙女戦士の顔は見えなかった。ただ今の会話といい、どこか懐かしいような、そんな気がした。



『おい! はしるんならヒトコトおいちゃんにいったってええやろ!』



 カケルのポニーテールにしがみつくおいちゃん。それを見てシュンヤはギョッとする。


「え、エイリアン!?」

『ヨウカイのつぎはエイリアンかい! こないぷりちーなのに!』


 そう叫んでから、おいちゃんはシュンヤの顔を凝視する。


『ボウズ。おいちゃんのことみえるんか?』

「はあ? 何言って」

『みえるんやな! んじゃあ、星座はなんや星座。はよういえい!』

「何でこの状況で・・・・・・。乙女座だけど文句あんのかよ」


 シュンヤの答えにおいちゃんが喜色満面になる。しっぽが忙しなく揺れる。


『おおおお! 条件そろっとるやんか。おし、シュンヤいうたな。さっそく乙女戦士に』

「やめろ」


 おいちゃんが嬉しそうなトーンで話し出す。それを止めたのはカケルだった。

 シュンヤは展開に着いていけず、口を挟めない。

 会話を遮られたおいちゃんは不満げだ。


『なにいうとるんや。たまたま乙女による防壁(バリアー・バイ・ザ・メイデン)がでたからええものの。だいたい、カ・・・・・・いや、あにさんのバトルはあぶなっかしいっちゅーの』

「こいつに押しつけるな。俺と違って、シュンヤにはやるべきことがあるんだよ。いいか、絶対に乙女戦士になんかさせるなよ。そうなったらもう俺は二度と戦わない」

『あーもー、このわからずや!!』


 ぶすくれるおいちゃんを見ながら、シュンヤは呆けていた。

 おいちゃんはカケルに聞こえない程度につぶやいた。


『ってか、ほんきでカクスきあんのか。こいつは』


 おいちゃんのぼやきをシュンヤは黙って聞いていた。




 シュンヤを下ろしおいちゃんと離れると、カケルはまたエビルのもとへ走り出す。途中測定器を見ればLv4を指している。カケルは走りながらエビルにこのまま突進しようと考えた。乙女による防壁(バリアー・バイ・ザ・メイデン)を発動させ、エビルへと突っ込む。

 エビルは靄を広げると、両手で光線を発射させる。結界に直撃し靄が霧散するが、カケルは構わず進んでいく。しかし光線が切れると同時に、カケルを囲んでいた結界もガラスが割れたかのように粉砕する。結界のない状態でカケルは勢い止まらず、エビルが上げている両手の下を潜り、体当たりを仕掛ける。やはりグニョリとした感触で、手応えがなかった。

 カケルは測定器を見れば、短針も長針も真上に。つまり処女充電はリセットされている。カケルは舌打ちをしてすぐに離れる。


(処女充電を速く貯めて、あいつにぶつけないと。でもあの光線が邪魔だ)


 エビルの両手が使えるということが、とても戦いにくい。右手が早く細い光線を放ち続け、左手がある程度威力を貯めてから発射される。右手からの光線を避け続けながら、左手の光線が放たれるのを弾いて防ぐか、発射の方向をそらすか、発射されたものを避けるのくり返しだ。幸いにもリセットされた処女充電は貯まっていくが、攻撃の糸口が見つからない。


「もういっそ、処女充電をできる限り貯めてぶつけるか。光線を防いでも壊れないほど強固な乙女による防壁(バリアー・バイ・ザ・メイデン)を作って」


 そうカケルがつぶやいたとき。

 エビルの様子がまた変わる。エビルは口を開き、口元に靄が現れる。カケルは目を見開いた。


「んの、やろう」


 カケルはエビルの背後に立つと、エビルの髪をわし掴みにする。そして一気に引き下ろした。腰が90度ほど背屈され、顔と両腕が真上を向く。口元の靄は形にならなかったので光線にならなかったが、両手から上空に光線が放たれる。

 ぎょろりとエビルの目がカケルを向いた。吐き気がするほどの気持ち悪さを感じる。すぐさま手を離し距離をとる。

 カケルは冷や汗を流した。最初は右手しか使っていなかったエビルが、次第に左手、そして口まで使うようになった。時間が経つごとに光線が発射される場所が増えるということに、カケルは先ほどまで考えていた倒し方を却下しなければならなかった。


「右手、左手、口。それなら次は目からビームか? あんまり時間かけられないのかよ。次から次へと問題点ばっか出てきやがって」


 焦るが良い案は浮かばない。闇雲に突撃すれば、それだけこちらが不利になる。




『やっぱあぶなっかしいバトルになっとるやんけ』


 おいちゃんが再度テレポートで現れ、ポニーテールの根本にしがみついた。ぶーぶーと不満たっぷりの表情でカケルを責める。カケルはエビルとの戦闘に集中しつつ、おいちゃんに苛立ちを込めて話しかける。


「うるさい。それよりシュンヤに何もしてないだろうな」

『なんで地球のヘイワまもろうとしとんのに、おこられなあかんのや。シンパイせんでもなにもしとらんよ』

「だったらさっさと離れろよ。危ないだろ」


 おいちゃんは頭の上へとよじ登る。光線は常にカケルを狙っているのだから、ここにおいちゃんが来られても正直困ってしまう。だから早めに逃げろと促すが、おいちゃんはプクーッを頬袋を膨らませる。


『しっけいなやっちゃな。おいちゃんはな、ココロのじょうちゃんから伝言あずかっとんの!』

「ココロから?」


 カケルはその言葉に耳を傾けながら、エビルの左手を弾いた。そして距離をとる。


「やっぱりココロ来たのか」

『あのボウズが暴走するころぐらいやな、ココロのじょうちゃんがきたんわ。で、ココロのじょうちゃんがカケルにつたえてほしい。そういっとったわ』


 おいちゃんはゴニョゴニョとカケルに説明する。その内容を聞き終えると、カケルは思わず感服する。


「ココロ、よくそういうの考えつくな」

『はっきりいうてカケルよりバトルセンスあんで。乙女座やったらほんまに乙女戦士にしとったわ。いまですらカケルよりたのもしいっちゅうに』

「・・・・・・否定できない」


 カケルは肩を落とす。

 右手の測定器はもうすぐLv5に到達しようとしていた。

おいちゃんが出ると書きやすいぜー

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