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二人と二人  作者: 木本 厚(きもと あつし)


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7/11

カレー

ピンポーンとドアベルがなり、坂本が普通に入って来た。

「あれ、僕が最後か」とリビングでくつろいでいるみんなを眺めた。

「相原さんですね、初めまして坂本です。」と挨拶すると

「こちらこそ、相原 清美です。今回は私の都合で集まっていただいて本当に感謝します」と深々と頭を下げる。

「他は挨拶も済んでいるから、さっそく話を始めようか」と水上が仕切る。

相原さんが説明し始めた。

「概要は光明寺さんから聞かれていると思いますが、彼 光明寺さんのお兄さんの浩一さんですが一緒にちょっと人気のカレー店に入ったことからこんな事になってしまって、二人で食べ終わってお店を出てから彼が「おいしかったけどちょっと何か違うんだよな」と言い出したんです。私もスルーしておけばよかったのかもしれませんが、「何がちがったの?」と聞いてしまったんです。そうしたら、一言では言えないんだけど、ちがうんだよと言ってそのまま黙ってしまったんです。そこで「じゃあ今度私のカレーを食べてみてと言って、その後しばらくしてから私の家で食べたんですけど、「これも違う」と一言、結構自信があったのでちょっとカチンときて「どこがおいしくないのよ」と言ったら、「違うと言えば違うんだ」と言うだけで会話も成り立たない状況になってしまって、結局最後に「俺がこれだというカレーが作れなければ結婚もしない」と言って出て行ったんです。」と説明してふぅと息をついた。

「あほでしょ」と静香。「あほだね」とさおり。ただ、坂本と水上は何か考え込んでいる様子。水上が「何か違うからという話が最後は俺が気に入ったカレーに内容が変わっているよね」坂本が「何が正解か言ってないな」と二人がぼそぼそと言い出した。

「ねえ、ねえ、何ふたり言といってるのよ?」と静香

「何その「ふたり言」って」とさおりが聞くと「二人がぶつぶつ何か言っているから一人で言うとひとり言だけど二人で言ったから」と気にも留めずに答えた。

さおりが「静香はたまに変な事言うよね」とつっこむと「今はそんなことは置いておく」とぴしゃりと言われた。

坂本が「さて、浩一さんが気に入ったカレーとはなんだ?」「何か違うと言う事はベースになる何かがあると言う事だよね」と水上。

「相原さん、光明寺さんが、あ、静香じゃなくて兄貴の方ね、何かカレーで言っていた事ってありませんか?」と坂本。

「うーん、特に記憶はないけど……静香さん何か気が付いたこと無い?」と相原は首を傾げつつ聞いた。

「うーん、カレーは家でよく食べた事は確かね。母が亡くなってからしばらくと言うか全然作っていないけど」と静香が言うと「ああ、大学時代に光明寺の家で御馳走になった事があったな。」と水上が言うと「確かにあれば少し変わった感じのカレーだった。おいしいんだけどその辺のカレーとは違っていた気がする」とさおり。

「その辺に答えがありそうだなレシピとか残っていないの?」と坂本が尋ねるが「料理作らない私が知るわけないでしょ」と静香。

「作れないのまちがいだろ」と坂本が火に油を注ぐ。「そうよ、つくれないわよ」と燃え上がることなく鎮火した。「そういえば、作れない私に簡単なメモは残してくれた様な気がする。どうせ分からなくなったら聞いてくれればいいと言う事で本当に簡単なメモだったきがするけど」と思い出すように言った。

「それまだどこかにある?」と静香以外の4人が静香を見つめる。

タジタジになりながらも「今日、帰ったらすぐ探してみる」と4人の勢いに押されつつ答えた。

「でも、光明寺のお母さんのカレーをそのまま作っても多分また(何か違う)っていうかもしれない。さらに何か浩一さんに刺さる味にするのが良いと思う」と坂本が腕を組みながら小さく言う。

「ハードル上げるね」と水上。「いや、そのくらいしないと光明寺の兄は納得しないと思う」と断言するように言う。「兄の性格から言うとそうかもね大したこと無い事でも自分が言った以上なにかもっともらしくしたい所があるから、あ、清美さん、これ私が言ったって内緒にしてね」と目線を送ると「大丈夫、そのくらいわかっているわよ」と清美、「流石ですね」と静香も納得。「まだ、どんなレシピかわからないけど出来るだけ同じ味に出来るかが第一段階ね」とさおり。

次の日の日曜日、みんなが再度集まり、静香が持って来たレシピを確認する。「どんなスパイスを使っているのかはわかったけど分量が載っていない。」とさおり。

「母は、適当に入れていた様な気がする」と静香。「うん、よくある話、作り慣れると目分量で出来ちゃうから」とさおり。「相原さん以外は一度は食べた事があるから少しづつ分量変えて試してみるか?」と水上が言う。「それしかないかな」と石塚。

石塚が材料(特にスパイス)を事前予測して買ってきていたのでほぼそれで賄う事が出来た。「さすが、料理研究家」と水上が褒め上げる。「何にも出ないよ」とさおり。

「あ、色々と作った味の味見はさせてあげる」とニコリ。「早めに当たると良いな」と水上が言う。「弘明くんは、料理出来ないからそっちで見てて呼ばれたら来て」とさらに言われる。さおりを中心に静香と清美が頭をくっつけてごにょごにょと分量を変えながら試していった。相当色々と試した上で静香とさおりがこの辺かなという分量を見つけて水上を呼ぶ、「これじゃカレーじゃないよ。ちゃんとカレーにしてから味見させてよ」とふてくされるが坂本が「だよな、普通の人はこれだけでわからないと思うな」と半分納得顔。「まあ静香は、横で一緒にいたからスパイスだけの味も覚えているかもしれないけど」と追加する。坂本が「それじゃ僕は横でカレーのベースを作っておくよビーフカレーだよね」と準備を始めた。「よろしく」と静香。坂本が手際よく野菜、牛肉等をさばき鍋に入れて煮込み始める。相原さんが「坂本さん手際良いですね。」と感心して言うと、さおりが「この中では私の次に料理が上手いかも、それにこのキッチンは彼が作ったこだわりキッチン」とスパイスの割合をメモしながら言うと」相原が「え、ここ水上さんのお家じゃないの」と少し驚くと静香が「もともと、坂本くんが作って住んでたんですけど諸事情で他に移る事になったので水上くんに貸してあげているというわけなんです。そう言う事もあってキッチンは坂本くんが良く使っています。」「あ、私もこの前借りた」とさおり。「へぇー」と声がでた相原だった。

苦労はしたが、スパイスのおおよその割合は決まりビーフカレーが出来上がった。

「これすこしとか、これは大さじ2とかの書きなぐりがあったのですこし助かった」とさおりが言うと「そのメモは私が書いた」と自慢げに言う静香。「えらい、がもう少しちゃんと書け」とさおり。「私には無理これだけでも大したものよ」と自画自賛の静香。キッチンを少し片づけてみんなで試食する。「ああこんな味だったかも」と水上と坂本。「うんこれだと思う」と光明寺。「確かに普通のとはちょっと違うわ」と相原「多分それは、隠し味に醤油と出汁を使っているからだと思う」とさおりが解説する。「そうなんだー」と静香。「なんとなくわかった気がする」と相原。「でももうひとひねりしないと浩一さんにこれだって言わせるのは難しいかも」と坂本が腕組みする。「まあ、ひと山超えたからちょっと休憩しようよ」と水上が立ち上がり、口が辛くなって来たからビールでも飲もうと言って冷蔵庫から缶ビールを5本取り出した。「いつの間に」と石塚が言うと「酒類は常に常備しております」と水上が得意げに言う。みんなに渡ったところで栓を開けて乾杯する。「やっぱり旨い」と水上。「そうね、そうだな」と全員が納得顔。

「カレーとか子供のころによく食べたよな」と水上がしみじみと言うと「そうそう、小さい頃は、甘口だったけどだんだん辛くなってきて、それもおいしいかった」静香が追いかけて言う。「日本のしょうゆや出汁はすごいよいい味出している」と坂本。「今は、フレンチの隠し味にも使われているのよ」と石塚。「うちは市販のカレールーで作ってた」と相原。「それが普通でうちの母が少しこだわっていただけだと思いますよ。市販のルーでも十分おいしい」と光明寺。「その市販のルーでもカレーが作れないのが光明寺」と坂本が突っ込む「それを言うか私だって作る相手がいれば作れるようになるわよ」と言い返すと「そっちの方がハードル高いんじゃない」と坂本が憎まれ口を言うと「私もほどんど作れなかったけど浩一さんと付き合いはじめてから少しは作れるようになったから静香さんも大丈夫よ」と相原が励ます。「話は変わるけど小さい頃食べたかったのはハンバーグもあったな」「結構ファミレスでもおいしかったけど、家でひき肉をたたいてこねて作ったのもおいしかった」と水上。「そうそう、自分で作るとおいしかったりするわよね」と石塚も賛同。「ひき肉か」と坂本がぽつり。

「もう一ひねりのネタ出た」と続ける。「ドライカレーにしたらどうかな。ビーフ味でも良いけど合いびき使って今回のスパイス割合でドライカレーにする。浩一さんも母親のカレーとは違うけど、味が同じと言う事で納得できるんじゃないかな?」と一気にしゃべる。

「ドライカレー?食べた事ない」と静香。「だからいいんだよ。新しいカレーだけと何か食べた事がある味っていうのが」と坂本が力説する。

「一度作ってみる?」と石塚が発言。「坂本君、ひき肉買ってきて」とさらに言うと

「わかった、他の準備は進めてて」と立ち上がり出て行く。

他の3人は、あっけにとられているが石塚は気にもせずに準備をすすめた。

改めて出来たドライカレー、隠し味の醤油、出汁は変わらない。

5人が食べて、全員が納得の味となった。相原が「これを今度作って食べさせることにする」と自信ありげに言うと「うちに来て父も一緒に食べさせるといいと思うわ」と光明寺が言い。近々に光明寺で食事をする事を決めた。

キッチンを片付けて、水上以外がそれぞれの家に帰る準備をする中、坂本が光明寺の背に「次はよろしく」と軽く声をかけて先に出て行った。


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