↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第一章 入学編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/406

#67 呼び出し

荘厳、ってこういうことを言うんだろうな。


生徒会室前の巨大な扉を見上げながら、

昴と俺は同時にため息をついた。


昴がぼそっとつぶやく。


「……呼び出しなんて、心当たりしかねぇよな?」


「うん。昨日のアレか、アレか、あるいはアレだろ」


「後半ほぼ全部だろそれ……」


笑う余裕はない。

心臓が嫌な汗をかき始めてる。


俺は覚悟を決めてノックした。


「……失礼します」


中から、透き通るけど冷たい女の声が返ってきた。


「入りなさい」


扉を開いた瞬間——

空気が“重くなる”感覚が背骨に走った。


豪華さより静寂と威圧。

音が吸われるみたいで、息すら慎重になる。


まず視線を奪ったのは——


奥の席に座る、生徒会長・鷹波(たかなみ) 右京(うきょう)。


金色の瞳が、

まるで“余計なものをすべて貫通する”みたいに鋭い。


制服の着こなしは端正で乱れなし。

立っているだけで、部屋の重心がそっちに傾くような存在感。


さすが空属性。

“気圧”そのものを操っているみたいだ。


次に、


右側の席——副会長・高円寺(こうえんじ) 六華(ろっか)。


栗色の髪をまとめた姿はきっちりしていて、

横顔だけで「高貴」って言葉が似合う。

視線の鋭さは右京とは別ベクトルで、

“経営者の眼”ってこういうのだろう。


左側——会計・伊佐利(いさり) 楽(がく)。


細い目で笑ってるんだか寝てるんだか分からないが、

空気に飲まれない落ち着き方が逆に怖い。

火適性なのに、熱をまったく感じさせない。


そして後方には2年生。


書記・白隹(しらとり) 美琴(みこと)

風の気配が静かで美しい。


広報・纏(まとい) 彪我(ひょうが)

鏡を片手に髪を整えつつウィンクしてる変人。なぜかもう片方の手には氷の薔薇を持っている。


さらに。


沙羅先生が腕を組んで壁に寄りかかっていた。


(……詰んだ)


昴と視線を交わす。


(……よく来たよな俺ら)


沙羅先生が短く言う。


「座って」


素直に腰を下ろす。

右京が最初に声を発した。


「天竜 玲磁、篝火 昴。

 ——合体魔法研究部の件で話がある」


(やっぱりかー!)


昴が代表して答える。


「……はい。どの件でしょうか?」


右京の金眼が、わずかに細まった。


「昨日、装置を破損させたな?」


六華が静かに書類を置く音が響く。


「修理費の見積もりよ。

 一年生の部活動にしては、桁が違うわ」


楽が細目のまま肩をすくめる。


「原因は……まあよく分かんないけど、

 “ヤバいことが起きた”ってのは間違いないね」


俺は正直に頭を下げる。


「……すみません」


昴も隣で頭を下げた。


「完全に俺らの責任です。

 部員を巻き込んだ以上、負担すべきことは——」


右京が手を軽く上げて遮った。


「責任を問いたいわけではない」


「……え?」


六華が淡々と続ける。


「問題なのは“なぜ壊れたのか”。

 あなたたちが危険行為をしたからではなく——

 “装置の設計外の反応”が起きたの」


美琴が横から補足する。


「三属性以上の同時運用。

 理論上は可能ですが……

 安定には“反応をゼロにする力”が必要です」


俺の背筋が一瞬硬直した。


(昨日の校長と……同じ言い方だ)


昴も気づいた顔をしている。


だが、生徒会側はまだ

その“ゼロ”が何を意味するか全部は語らない。


沙羅先生が前に出た。


「右京会長が怒っているわけじゃないの。

 あなたたちの試みは、

 教師から見ても“価値がある”」


「……え」


「ただし。価値があるからといって、

 事故を起こしていい理由にはならないわ」


昴が気まずそうにうなずく。


「はい……」


「これは“叱責”じゃなくて“警告”。

 合研部はこれから注目される。

 ——特に一年の君たちが中心なら」


「注目……?」


その瞬間、右京が立ち上がった。

身長が高いというだけじゃない。

“立ち上がる=空気が引き締まる”感覚。


「天竜 玲磁」


金色の瞳が俺を射抜いた。


「君は——放っておけば事故を起こすタイプだ」


「うっ……」


陶之助がいたら確実に笑ってる。


右京は続ける。


「だが、君の本質は“破壊”ではない。

 “探索”だ。

 未知に手を伸ばす者は、どの時代にも必要だ」


言葉が胸に刺さった。


六華が冷静に重ねる。


「だからこそ、生徒会としては放置できないの。

 あなたたちには“保護”が必要」


昴が眉をひそめる。


「保護、ですか……?」


美琴は遠慮なしに言い切った。


「“監視”とも言います」


彪我が軽く手を上げて茶々を入れる。


「言うねぇミコトちゃん」


沙羅先生の一喝。


「黙りなさい広報」


「はい」


そして、


右京が短く、はっきり言い放った。


「結論を告げる。

 合体魔法研究部——

 生徒会の“観察対象”に指定する」


「観察対象!!?」


六華が優しい声で畳みかける。


「悪いようにはしない。

 部費の増額、設備強化……

 必要なものがあれば要望して」


楽も笑っている(ように見える)。


「装置の破損も追及しない。

 むしろ“もう一度やってほしい”くらいだよ」


沙羅先生が最後に釘を刺す。


「……あなたたちの成長に期待してる。

 でも、危険は最小限に。

 いいわね?」


(……怒られたわけじゃないのに

 逃げ道が完全に塞がれた気しかしない)


隣の昴がため息を吐く。


(……この部、もう後戻りできねぇな……)


俺は、なぜか笑いがこみ上げてきた。


(……面白くなってきたじゃん)

登場人物紹介


3年生


●鷹波(たかなみ) 右京(うきょう)

【性別】男

【適性】空

【魔力値】870

【総合順位】1位/150人

【学科】4位/150人

【実技】1位/150人

【髪】クリーム色

【瞳】金色

【役職】生徒会長

六大魔法名家のひとつ、鷹波家出身。「指導者」と呼ばれるほどの絶対的な意志力と決定力を持つ。世界でも稀有な空属性の使い手。妥協を許さない性格で、自他ともに厳しく律する。


●高円寺(こうえんじ) 六華(ろっか)

【性別】女

【適性】光

【魔力値】615

【総合順位】2位/150人

【学科】2位

【実技】3位

【髪】栗色

【瞳】茶色

【役職】生徒会副会長

上流階級出身。右京の右腕。家が大富豪であり、親譲りの商才を持つ。真っ直ぐでハッキリとした性格で、真をついた発言をする。


●伊佐利(いさり) 楽(がく)

【性別】男

【適性】火

【魔力値】620

【総合順位】3位

【学科】3位

【実技】2位

【髪】赤紫色

【瞳】赤紫色

【役職】生徒会会計

芸術的センスが高い。また料理のスキルがあり、女子人気を集めている。常に細目で、怒ったところも泣いたところも見たことがないと言われている。


2年生


●白隹(しらとり) 美琴(みこと)

【性別】女

【適性】風

【魔力値】700

【総合順位】1位

【学科】1位

【実技】2位

【髪】水色と黄緑のグラデーション

【瞳】緑

【役職】生徒会書記

風魔法の中でも、特に空気を操るのが上手く、空中移動のエキスパート。沙羅先生が好きで、1-Eクラスを羨ましく思っている。声が低く中性的で、同性からの人気が高い。更に、本人も堅物な性格をしている。次期生徒会長候補。


●纏(まとい) 彪我(ひょうが)

【性別】男

【適性】氷

【魔力値】615

【総合順位】2位

【学科】2位

【実技】1位

【髪】青みのある黒

【瞳】青

【役職】生徒会広報

孤児院出身。珍しい氷魔法の使い手。イタズラ好きで、悪ガキトリオの対抗馬のような存在。性格的には生徒会には向いていないが、能力が高すぎるために右京からスカウトされ、監視されている。ナルシストな一面があり、女子に氷の薔薇をプレゼントするのが趣味。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。