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アルテリア魔法学校で最下位合格した男の話  作者: 霧雨
第一章 入学編

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#65 アジト

男子寮の裏の物置小屋。

埃っぽいくせに居心地だけは妙にいい、

俺たち三人の“秘密基地”だった。


古いソファに体を投げ出しながら、

今日一日の総括を始める。


「——で、結論。合研の装置、ぶっ壊れた」


皓が食い気味に叫んだ。


「はぁ!? お前ら何やったんだよ!!?」


陶之助は爪を眺めながらニヤつく。


「三属性なんざ扱えるわけねぇだろ。

 けど面白えな。誰が暴走させた?」


「全員だよ。

 三属性が勝手に喧嘩しはじめてさ。

 大河がいなきゃ、部室ごと爆散してたかもな」


皓は舌を打った。


「……噂以上だな、あのデカブツ。

 強ぇとは聞いてたけど、そこまでかよ」


陶之助は肩をすくめる。


「ストッパー役には最適じゃねぇか。

 お前ら危ない遊びしかしねぇし」


まぁ否定はしない。


それでも、胸の奥はまだ熱かった。

あの瞬間、確かに“届きかけた”気がしたのだ。


「……でもな。手応えあったんだよ。

 三属性、“無理”って感じじゃなかった。

 惜しいんだ、めちゃくちゃ惜しい」


皓が半目で笑う。


「その“惜しい”が一番ヤベぇんだよ?」


陶之助もニヤリ。


「死人出す前に沙羅に止められんぞ、ガキ大将」


「いやいや、俺らはギリギリを楽しむタイプだろ?」


二人同時に呆れ声を上げた。


「「お前が言うな」」


その時だった。


ふわっ——


ドアが勝手に開く。

風でもなく、物音でもなく……“気配”。


現れたのは夢威だった。


「……なんか、ここにいる気がした……」


「出た。夢威の動物的勘」


皓が横から茶々を入れる。


「いや“猫耳アンテナ”だろ、あれ」


夢威はそのまま俺の隣に座り、膝を抱えてぽつり。


「今日の三属性……ちょっと怖かった……

 でも、面白かった……」


陶之助は少し驚いた顔をした。


「怖ぇとか思うんだな。お前、才能ぶっ飛んでんのに」


夢威はこくりと頷く。


「うん……怖いのと、好きなのは……別」


「……まあ、わかるけどさ」


ほんとこの猫、時々核心をつく。


アジトの空気が少し温まってきたその瞬間。


背後から、低い声。


「——お前ら、今日も元気だなぁ?」


「うわあああああああッ!!!?」


心臓止まるかと思った。

暗がりに立っていたのは——リュウ校長。


皓が裏返った声を出す。


「こ、校長!? なんでここに!??」


陶之助は目を細める。


「いや気配ゼロって……闇属性も使えんのか?」


校長は飄々としていた。


「ただの夜散歩だよ。

 ……で、さっきの話、ちょっと聞こえちゃってな?」


(聞かれてたァァ……!)


怒られると思ったが、

校長は何故かニヤニヤしている。


「三属性に挑戦したんだって?

 いいなぁ、若い。

 危険なことほど面白いもんだ」


沙羅先生が聞いたら卒倒する発言だ。


皓が眉を下げる。


「……校長、怒らないんですか?」


校長は当然のように言い切った。


「怒るわけないだろ?

 挑戦しない魔法使いなんて、

 火のついてないロウソクと同じだ」


陶之助がボソッとツッコむ。


「たとえが絶妙に微妙っすね」


校長はソファの背に手をかけながら、俺の方を見る。


「お前らがあんまり面白いことするからな……

 ひとつ、もっと面白い情報をやろう」


全員の視線が校長に吸い寄せられる。


「——三属性の“鍵”は、

 “反応をゼロにする力”を組み込むことだ」


「……止める?」


校長は楽しそうに頷く。


「属性同士がぶつかる瞬間を、

 一瞬だけ“無”にする力。

 それがあれば三属性は安定する」


「そんな都合のいい力、どこに……?」


校長は悪戯っぽくウインクした。


「ヒントは——

 学校のどこかに眠ってる。探してみ?」


「ざっくりぃ!!」


皓が叫ぶ。


「この人、絶対なんか企んでる……!」


夢威がぼそっと呟く。


「……沙羅先生に怒られる未来が見える……」


校長は笑って背を向けた。


「そんときは逃げるさ。昔みたいにな」


そのまま、闇に溶けるように去っていった。


アジトに残るのは、変な静寂。


皓がぽつり。


「……なあ玲磁」


「ん?」


「嫌な予感しかしねぇぞ?」


陶之助が肩を震わせて笑う。


「……けど面白ぇな」


俺はニッと笑った。


「探すしかねぇだろ、“反応を止める力”。

 お宝探しみたいで、ワクワクするじゃん」


夢威は目をこすりながら言う。


「……眠いけど……ついてく……」


こうして俺たちは、まだ誰も知らない

“次の冒険”の入り口に足を突っ込んだ。


静かな夜の中で——

確かに火種が灯ったのが分かった。

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