#48 選択科目
朝の教室は、ちょっとしたざわざわ感があった。
選択科目を決める日だから、そりゃみんな落ち着かないよな。
沙羅先生が教壇に立つと、空気がすっと整った。
「今日から、みんなには“選択科目”を決めてもらいます。
この五つから、二つ。しっかり考えて選びましょう」
黒板に書かれた五科目をあらためて見る。
•召喚術
•幻術学
•治療魔法学
•錬金術
•魔法音楽
「それでは……決まった人から言ってください」
先生の言葉に、教室に軽い緊張が走る。
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遥花が小さく手を上げた。
「……治療魔法学と……魔法音楽に、します」
でも声が弱々しい。
横顔を見れば、指先が震えてるのが分かる。
沙羅先生が穏やかに微笑んで言った。
「遥花さん。“光がないから治療はできない”と、不安に思っているのね?」
遥花は驚いて顔を上げる。
「……は、はい」
「でもね、治療魔法は光属性だけのものじゃありません。
土属性は“自然治癒力を引き出す治療”が得意なのよ」
「土、と……治療が……?」
俺たちも揃って「え?!」って顔になった。
「学年で一番治療魔法が上手い子。貴方たちも知ってるでしょう?
Bクラスの――玄機 大河くん」
「大河が!?」
「兄貴分の大河が治療魔法!?」
瑞翔と俺の声が被る。
いやマジか、あの豪腕兄ちゃんが回復系ってギャップがすごい。
遥花は驚きつつも、ふっと肩の力を抜いた。
「……じゃあ、がんばってみたいです」
「ええ。あなたには向いているわ」
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魅亜は最初、元気に手を上げかけた。
……けど、すぐに手が止まる。
(あれ……?)
魅亜の顔に浮かぶ迷いは、分かりやすいくらいだった。
笑ってるけど、目だけが揺れている。
「……えっと……わ、私は……」
火のトラウマがまだ消えていない。
昨日の話で少し前に進んだ気はするけど、決して“克服”まではいってない。
沙羅先生はすぐ気づいて、優しく声をかけた。
「魅亜さん。迷っている理由は分かるわ」
魅亜の肩がビクッと震えた。
「火を扱う科目を選べば、
また“火と向き合う場面”が増えますものね」
魅亜は唇を噛んで、かすれた声で言う。
「……はい。
私、火を……怖がってるの、やっぱり治ってなくて……」
沙羅先生は首を振る。
「怖いままでいいのよ、魅亜さん。
恐怖は欠点ではなく“判断力の源”になるわ」
魅亜は目を丸くする。
「それに――
火と幻術は非常に相性がいいの。
幻術は“心”を扱う魔法。
火は“情熱や想像力”と繋がりが強い属性よ」
「……私でも……できるんですか……?」
「もちろん。
あなたが火を完全に克服していなくても、
“幻術を使うための感性”はもう持っているわ」
魅亜は迷いながら、でもはっきり言った。
「……幻術学と……魔法音楽に、します。
少しでも……火を、好きになれるように……」
沙羅先生はあたたかく微笑んだ。
「いい選択よ」
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理紅虎は淡々。
「召喚術と錬金術を希望します」
フェンリルが机の影で“くぅん”と鳴く。
いや犬みたいに鳴くな、狼だろ。
「あなたとフェンリルくんなら、召喚術は必須ね。
錬金術も相性がいいわ」
理紅虎は満足そうにこくりと頷いた。
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瑞翔は迷った末に、
「……幻術学と、治療魔法学で。
サポートが得意なので」
沙羅先生も微笑んだ。
「瑞翔くんらしいわね。とても良い選択よ」
瑞翔はちょっと照れくさそうだった。
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虹矢は元気いっぱいに挙手。
「召喚術と幻術学!!
幻のドラゴンを呼んでやるぜ!」
「そんなのねぇよ」と玲磁が即突っ込む。
沙羅先生は軽く笑った。
「……ええ、頑張ってね」
絶対“つまずく”と思ってる顔だ。
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「玲磁くんは?」
「治療魔法学と……錬金術でいきます。
時の感覚、変化、流れ……
そういうの、治療や錬金に応用できる気がするんで」
沙羅先生の目が、少しだけ柔らかくなった。
「あなたにしては、とても積極的な選択ね。
“自分の魔法と向き合う”という姿勢が見えてきたわ」
「……まぁ、ちょっとずつでも」
虹矢が横で小声で言う。
「天竜の奴、成績優秀組みたいなこと言い始めてる……」
「うるせぇよ」
魅亜が笑った。
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こうして、1-Eはそれぞれ進む道を選んだ。
•遥花:治療魔法学・魔法音楽
•魅亜:幻術学・魔法音楽(まだ火に不安あり)
•理紅虎:召喚術・錬金術
•瑞翔:幻術学・治療魔法学
•虹矢:召喚術・幻術学
•玲磁:治療魔法学・錬金術
沙羅先生がプリントを集めながら言った。
「1-Eは……とてもバランスがいい。
みんなの未来がどう広がるのか、楽しみにしているわ」
教室の空気がふっと明るくなる。
俺たちの“本格的な専門魔法”が、今日から始まる。
アルテリア魔法学校で扱う教科
【基礎科目】
■ 魔力基礎学(担当:八雲 百合乃)
魔力とは何か、魔力回路、魔力暴走など魔法使いの身体構造を学ぶ。
■ 魔法史(担当:式神 詳)
人類と魔法の歴史、六大名家の起源、日本以外の滅亡などを扱う。
■ 魔法言語学(担当:那岐羅 太郎)
呪文の語源、古代言語、詠唱構造を理解し魔力の質を安定化させる。
■ 呪文詠唱学(担当:不破 栄弦)
詠唱速度・魔力共鳴・無詠唱基礎など、発声そのものを鍛える。
■ 魔法倫理学(担当:高塔 祭吏)
魔法犯罪防止、対人魔法の制限、名家の義務を学ぶ厳格な科目。
【実践科目】
■ 戦闘術(担当:幸崎 轟一)
対人戦・模擬デュエル・モンスター遭遇戦を扱う実戦中心の科目。
■ 身体強化術(担当:剛持 忍)
魔力による瞬発力・筋力・移動能力の強化。忍者的技術が含まれる。
■ 防御術(担当:新序 雄心)
結界、障壁、衝撃吸収、防御展開の高速化を専門的に鍛える。
■ 属性攻撃演習(担当:如月 沙羅)
火力・命中精度・応用属性・連射を鍛える最も苛烈な攻撃実技科目。
■ 薬草学(担当:宇賀神 侍道)
薬草栽培、ポーション調合、魔獣素材の扱いなど医療・野外知識。
【選択科目】
■ 召喚術(担当:八角 理呼)
使い魔契約・召喚陣・高位召喚の危険性を扱う高度科目。
■ 幻術学(担当:日向夏 夜永)
幻覚・精神干渉・多層幻惑・幻術耐性など心理戦系魔法。
■ 治療魔法学(担当:希咲 輪廻)
治癒・浄化・状態異常解除・緊急医療など医療魔法全般。
■ 錬金術(担当:深空 遼)
物質変換・属性石生成・ゴーレム制作など化学系魔法。
■ 魔法音楽(担当:蓮田 律)
音と魔力の融合。音波攻撃、精神安定、合唱魔法を扱う。




