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第4話 連行

 美しかった。


 それが第一印象だ。


 ディナルが綺麗な容姿だとは言っていたが、目の前に立っている女は『綺麗』という対象からは並外れている美貌を持っていた。いかにも柔らかそうな肌にサクランボ色の唇。深い紫の瞳はどれだけ見つめても飽きることのないだろうと思えるほどに魅力的な色だった。

 同じことを考えているのか、隣にいるロードが惚けている。女に対しての感心は皆無といっていいだろうディナルまでもが少し驚いた様に目を見開いている。

 彼女と言い合っているもう一人の少女も充分『美人』に当てはまる顔をしてるが、それでも、彼女のその美貌が普通だと思える程に少女は美しかった。


 何を考えているのかを汲み取ったのか、サマヘルカがゴホンと咳払いをした。

 慌ててファリスが我に返る。

 が、彼が何かを言う前に少女が口を開いた。



「......こくおう...?」

「のようね」



 呆然としている少女の言葉に冷めている様子で隣にいる美少女が言う。興味なさそうにあくびを漏らしているその美少女を見てファリスは少し驚く。自惚れというわけではないが、自分にまったく興味がない女というのは殆どいない。しかし彼女はチラリと自分を一瞥しただけで、それ以外は早く帰りたいのかずっと扉を見つめている。



「国王が許嫁とは....やるわね、クレア」

「いやいや! 私が決めたわけじゃないし! むしろお母さんが勝手に決めただけだし! ってかシフォナ知らなかったの?」

「知るわけないでしょ。許嫁がいるって知らされていただけだもの」

「別に言ってくれてもいいじゃん.....」

「面倒くさかったから」

「えーえーそうですね! 面倒くさいですよね!」



 開き直った様にクレアと呼ばれた少女が叫んだ所で、ファリスは口を開いた。



「取り込み中悪いが、君は誰だ?」



 シフォナと呼ばれた女性に質問を投げかけると、彼女は一瞬とてつもなく面倒くさいことをしているような表情を浮かべてから、ファリスの前に跪いた。

 むしろ今までどうして跪いていなかったのかが疑問かもしれない。

 そんなシフォナの様子を見てクレアが目を丸めた。どうやら彼女は国王の前に来たら何をするかは分かっていないようだ。

 クレアを横目で見てシフォナが話しだす。



「お初にお目にかかります、ファリス陛下。シフォナと申します。こちらにいるクレアの幼馴染みで、彼女のご両親がお亡くなりになった頃から彼女を引き取り、同居しております」

「今日彼女をここに連れて来たのは君か」

「いいえ。丁度許嫁の話をクレアとしていた頃に、サマヘルカ宰相が訪ねて来たので、保護者として二人についてきただけでございます」

「能力は」

「幻覚でございます」

「そうか。分かった。面をあげてよい」

「はっ」



 ファリスの言葉にシフォナは顔をあげると、ススッと下がった。それと同時にファリスがクレアに視線を移す。目が合うとビクっと彼女の肩が震えて美しい紫の瞳が見つめ返して来る。

 すると、



「貴方と結婚する気なんてないから」



 まっすぐと目を見ながら彼女は言い放った。










 ものすごい綺麗な顔だった。

 国王のことは遠くからしか見た事がなかったから、近くで見たらどういう顔なのかは見当もついていなかった。『世界一の美貌』を持っていると噂される意味も分かる気がする。

 すごい。

 女の私よりも美しいってどういうことよ。


 ん? 待てよ。

 許嫁に引き合わせるためにこのサマヘルカ宰相は連れて来たんだよね。しかも俺がお前の許嫁だとか国王に言われた.....



「....こくおう...?」

「のようね」



 いやいやいや!! のようねとかサラリと言わないでシフォナ! しかもなんか全然興味なさそうだし! めっちゃ帰りたそうだし!



「国王が許嫁とは....やるわね、クレア」

「いやいや! 私が決めたわけじゃないし! むしろお母さんが勝手に決めただけだし! ってかシフォナ知らなかったの?」

「知るわけないでしょ。許嫁がいるって知らされていただけだもの」

「別に言ってくれてもいいじゃん.....」

「面倒くさかったから」

「えーえーそうですね! 面倒くさいですよね!」



 この子は本当にもう!

 別にシフォナのことは嫌いじゃないし、むしろ大好きだけど、そういう重要な事を教えてくれない性格をなんとかしてほしい。本当に。

 すると私とシフォナがギャーギャーと言い合っていると、立ち上がっていた国王が口を開いた。



「取り込み中悪いが、君は誰だ?」



 私を見ていないという事はシフォナに問いかけているということだ。まあ私の許嫁なんだから私の事を知らなかったらそれはそれで問題だけどね。と、そこでシフォナが跪いた。


 ん?


 シフォナが、跪く?


 いやいやいや! シフォナが跪くとか何!? え、待ってよ! シフォナが跪く所とか初めて見たし! っていうか人に頭を下げることを知らないって子だからそれはそうなんだろうけど.....ええ?

 目を丸めて驚いている私を横目で見てからシフォナは口を開いた。



「お初にお目にかかります、ファリス陛下。シフォナと申します。こちらにいるクレアの幼馴染みで、彼女のご両親がお亡くなりになった頃から彼女を引き取り、同居しております」



 うわー。シフォナの口から敬語が出たよ。なんかもうシフォナじゃないんじゃないの? この子。

 あ、でもあれかな。国王だからかな。あれ? ってことは私も跪かないとだめなのかな?

 だけど国王は私には見向きもせずに口を開く。



「今日彼女をここに連れて来たのは君か?」

「いいえ。丁度許嫁の話をクレアとしていた頃に、サマヘルカ宰相が訪ねて来たので、保護者として二人についてきただけでございます」



 嘘つけ! 売る様にして楽しそうに私を突き出して来たくせに! ここについて来たのだって私が許嫁に会ってどう反応するかを知りたいだけだったくせに!



「能力は」

「幻覚でございます」

「そうか。分かった。面をあげてよい」

「はっ」



 国王に言われてシフォナは顔をあげてススッと下がった。それと同時に国王が私を見る。緑の目と視線が合って思わずビクっと肩が跳ねる。

 くそー....何が悲しくて好きでもなんでもない人と結婚しないといけないのよ! 何かいう前に言っておかなきゃ!



「貴方と結婚する気なんてないから」



 緑の目が少し見開いた。







「――ということだからこいつはここに放り込んでおけ」

「承知いたしました」

「ちょっと待ちなさいよ!!」

「大人しくしていることだな」

「ちょっと!」



 ファリスは(すでに呼び捨てだけどいいのよ! こんな奴に様とか陛下とか付ける気はない!)私の部屋の外に立っていた兵士らしき人に何かをボソッと言ってからバタンと扉を閉めた。

 ガチャガチャと外から鍵をかける音がして、一気に顔から血の気が引く。あいつ! 私をここに閉じ込めておく気か!


 扉を叩いても外からの反応はまるでないので、私は仕方なく部屋にこもることにした。

 普通の部屋のようで、周りを見回すと、小さなソファに机、ダブルベッドとバスルーム。どこにでもあるような部屋。これがラキオス城の中とは思いにくかった。

 はぁ、と脱力したように溜息をついて、私はベッドの上で横になった。


 いつの間にか私は深い眠りについていた。




予想以上に長くなってしまいそうです(汗

申し訳ありません><


見捨てずに読み続けてくれれば嬉しいです><


ここまで読んでくれてありがとうございます。


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