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第22話 真実

遅れてごめんなさいっ!

この先の更新のことはあとがきに記しておきます!


 レズリー・マクライドがラキオス王国に来てから、三ヶ月が経とうとしていた。当初はファリスとの関係上たくさんの人にはよそよそしい態度で接し続けられていた彼女は、今ではすっかり城の者と馴染んでいた。ファリスの言葉のおかげもあるのだが、なんだかんだいいながら接しやすい性格であるため、二週間もすれば城の者はなんとも思わずに楽しく話しかけて来てくれた。

 しかし、やはりサマヘルカとはギクシャクした関係が続いていた。



 結局部屋は変わることはなく、レズリーは今でも王妃の部屋に泊まっていた。いくら変えてほしいと頼み込んでもファリスは変えるつもりはなかった。それも当然といえば当然である。

 部屋の中で立ったまま町を窓から眺めていると、コンコンとドアが叩かれた。どうぞ、と言うと、すっかり自分の世話係になってしまったメイドのシラが入って来た。



「レズリー様、朝食はどうなさいますか?」

「え? ああ、えーと、なんでもいいわ。ファリスと同じで構わないわよ」

「かしこまりました」



 いつもと同じ様に朝食を聞いて来る彼女に笑いかけると、シラも微笑んだまま部屋から出て行く。出て行った後にレズリーは小さく溜息をついた。

 ここでの生活は慣れた。使いの者は気兼ねなく接してくれるし、騎士達も守ってくれる。何よりもファリスと一緒にいられるということは嬉しいことだった。だけれども、



「...結婚、はなぁ...」



 未だに結婚を申し込まれたファリスに返事はしていなかったのだ。彼のことは愛しているし、彼もあれだけ自分のことを愛してくれて、大切にしてくれている。結婚しない理由などどこにもないのだが、なぜか、すぐに返事が出来ないでいるのだ。



「結婚したくなければ、しなくていいんだぞ」



 隣の部屋に繋がるドアが開かれたと思うと、そんなことを言いながらファリスが入って来た。レズリーは彼の姿に驚いて目を見開いたが、何回か瞬きをすると、再び視線を町に注いだ。

 ファリスはどことなく落ち込んでいる様に見える彼女に近づくと、後ろからギュッと抱き締めた。抵抗はしなかったものの、いつものように向きを変えて抱き締め返してくれない彼女の様子に眉を寄せると、ファリスは彼女の頭の上にキスを落とした。その動作に小さく微笑を零すレズリーに、自分もまた微笑を浮かべた。



「でも、決めたほうがいいでしょ?」

「....それはそうだが、妃になりたくないのに無理矢理ならせるのは酷だろう? 俺もお前が嫌がるのなら妃になってほしくはない」

「.........ええ」



 それから向きを変えて自分を抱き締め返してくれたレズリーと口付けを交わすと、ファリスは彼女を抱き締める腕に力を込めた。





「レズリー様、朝食でございます」

「ありがとう」



 目の前に置かれたスクランブルエッグに最高級のトースト。数々の野菜やフルーツも並べられており、最高級のミルクと最高級のジュースから飲み物を選べる。そのあまりにもおいしそうな朝食に、いつものことながらよだれが出そうになった。

 向かい側に座っているファリスが食べ始めるのを見て、レズリーも無言で食べ始めた。チラリと上を向いてファリスを見つめると、彼も丁度自分を見ている所だったため、慌てて視線を逸らす。その姿にファリスが微笑を浮かべたに違いない、とレズリーは見えていなくても思った。



「レズリー」

「え、あ、何?」



 まさか声をかけられるとは思っていなく、完璧に動揺している声を出してファリスに答えると、彼は微笑を浮かべた。朝からそんな美しい笑顔を何回も見るのはさすがに心臓が持たない。



「俺はこの後町に出かけるが、一緒に来るか?」

「...町って、何しに行くの?」

「ただの偵察だ。俺は殆どの場合は城に閉じこもっているから、実際町でどういうことが起こっているのか把握しているわけではない。資料を見るとしても、言葉だけで何かを完璧に説明することはできないし、どうせなら自分の目で確かめにいったほうがいいだろう?」

「...それもそうね。でも今まで偵察しにいく所なんてみたことがないわよ?」

「つい先週決めたことだからな。それに、そんなに頻繁に見に行くこともないし、一ヶ月に二、三回行けば充分だろう」

「そういうもの?」

「まあな。で、来るか?」

「....うーん。行きたいような気もするけど、私の存在って、町の人には秘密にされてるんでしょう?」



 レズリーの質問にファリスは面食らった。

 確かに秘密にされているが、それをレズリーにいった覚えはない。言ってしまえば、注意深い彼女のことだから一緒に町に出かけることは絶対にしないからだ。

 眉を寄せて考え込むファリスの姿を見て、レズリーは隣に立っていた騎士のルドに囁きかけた。



「言っちゃいけなかったかしら?」

「...いえ、俺達が教えてはいけなかったようです」

「どうして?」

「言ってしまえばレズリー様は容易に陛下と出かけることはしなくなるでしょう。それが嫌で言っていなかったんでしょうね」

「あっ....え、じゃあルド達が責められるの?」

「......慣れていますから、平気です。レズリー様が気に病むことはございません」



 心配そうな顔をする彼女にルドは苦笑を浮かべて言い放つと、レズリーは納得いっていない様子だったが、何も言わずにいた。目の前にいるファリスに視線を注ぐと、彼はルドと、レズリーのもう一人の騎士であるスティラを睨みつけていた。



「言ったな?」

「言ってはいけないとは聞いておりません」



 いけしゃあしゃあと言い放つルドにレズリーは思わず笑いを吹き出しそうになった。彼の隣に立つスティラも笑いをこらえているようにしか見えない。



「聞いていなくても言ってほしくない理由は、お前なら分かっていただろう」

「しかし言われておりませんので」

「....お前は、本当にディナルに似ているな」

「同じ師匠に育てられましたので」



 ファリスが首を振りながら溜息をつくと、ルドはうっすらと笑みを浮かべた。その笑みを見ながらもファリスは彼のことを無視すると、今度は視線がレズリーに向いた。



「では、ついてこないと言うんだな?」

「え、ええ。王妃でもないのにファリスについていくのは、なんか間違ってる気がするし」

「.......仕方ない。ディナルとロードを連れて行くことにしよう」



 溜息交じりに立ち上がるファリスにレズリーも立ち上がると、小走りで彼に近づいた。



「出かけたくないわけじゃないのよ? だけどこの先何が起こるか分からないし、私とファリスが一緒にいる姿を簡単に町の人達に見せることはあまりいい案じゃないと思うのよ」

「分かっているから心配するな。ではすぐ戻る」



 そう言ってファリスはレズリーの額に唇を当てると、ディナルとロードと共に部屋から出て行った。






「では結婚したくないのはどうしてですか?」

「分からないのよ」



 部屋に戻って椅子に腰をかけると、既に部屋で待機していたシラが紅茶を注いでくれた。その後、なんとなく悩みを打ち明けると、シラは以外とすぐに相談に乗ってくれた。よく見ればどこか楽しそうな表情をしている。

 他人の恋愛沙汰が大好きな子だというのは、レズリーはすぐに気づいた。



「ファリスのことは好きだし、彼だってこれでもかっていうほどに私のことを愛してくれているけれど、王妃ってとっても大事な立場でしょ? 離婚だって簡単に出来るわけでもないし、それだけ重要な立場に私が立っていてもいいのか悩むのよ」

「何を仰るんですか? 三ヶ月しかここにいないのに、レズリー様の政務の片付けようは素晴らしいですよ? 陛下はともかく、サマヘルカ様よりも早く資料を片付ける人はレズリー様以外見た事がありませんし」

「....え、っていうかどうしてシラは知っているの?」

「私、元々は陛下の世話係でしたから、殆ど一日中は側におりましたよ」

「そ、そう...」

「レズリー様が心配しておられるのがそれだけでしたら、本当に問題はございません。レズリー様が王妃になるのに反対な方はいらっしゃいませんし」



 微笑んだまま自分に言い聞かせるシラにレズリーは弱々しく微笑んでみせた。確かに、よく考えてみれば自分が悩んでいるのはその点だけなのだ。だけれど、城の者が自分を認めてくれているのなら....



「大丈夫、かしら....」

「平気ですよー! もうさっさと結婚しちゃってくださいよ! 私達もいい加減許嫁に会ってくれない陛下にうんざりしちゃってるんですから、レズリー様が結婚してしまえば一件落着です!」



 平然と放たれたシラの言葉に、レズリーの動きが、止まる。



「...いい、な、ずけ?」

「はい。レズリー様もご存知でしょう? 陛下ってば二十になる頃にその許嫁と結婚するはずだったんですけど、未だに会ってもいないんですよ。ですから私達がうんざりしちゃってて。サマヘルカ様があれだけレズリー様と陛下の結婚に反対なのは、既に許嫁がいるからなんですよ。まあ相手も陛下に会おうとも思っていないらしいですし、王妃になるつもりがないのか、陛下が許嫁だと知らないのかは分かりませんけど、って、レズリー様? 大丈夫ですか?」



 顔が真っ青になって行くレズリーに、シラは言葉を切って彼女の顔を覗き込んだ。



「...私、知らない....」

「...え?」

「.....ファリスに、許嫁がいたなんて、知らない」



 はっ、と今度はシラが顔を真っ青にし、口を両手で覆った。しかし、言ってしまったことに取り返しはつかない。レズリーはそんなシラの様子には気づかず、ただ真っ直ぐと手に持っているカップを眺めていた。



「..れ、レズリー、様...」

「.....ファリスは、...ファリスはいつ帰ってくるの」

「え、と、....も、もうすぐ帰ってくる、かと。あ、レズリー様!!」



 勢い良く立ち上がり、そのまま部屋から出て行くレズリーの姿に、ドアの側で待機していたルドとスティラが一見驚いてから慌てて追いかける。


 許嫁。

 ファリスに許嫁がいた。既に結婚する相手が、いたのだ。


 なぜ言ってくれなかったのだ。なぜ、すぐに言ってくれなかったのだ。既に結婚する相手がいたのに、自分と結婚しようとしていた。どうして。どうして言ってくれなかったのだ。



 息を乱してレズリーは城の入り口まで駆けつける。その姿に入り口を守っている兵士達が驚いて目を見開く。すぐにルドとスティラが追いついて来るが、レズリーはこちらを向かって来るファリスの姿しか目の前になかった。

 その姿に、ファリスはなんとも思わずに近寄ると、キスをするために腕を伸ばした。

 しかし、



 パンッ、



 という音が響き、レズリーはファリスの腕を振り払った。驚いてファリスが目を丸めて、後ろにいるディナルとロードも顔を見合わせた。レズリーの側にいるルドとスティラも困惑した表情を浮かべていた。



「レズリー?」



「許嫁って何」



 氷のように冷たい声と、その発せられた言葉に、ファリスの表情が固まった。



更新が遅れて本当にごめんなさいっ!

実は年末テストが近づいておりまして、来週の月曜日からテストずくめです。ああやだなぁゴホンゴホン。


ということなので11月末まで更新はできません!本当に申し訳ありませんっ!><

こんな作者で、こんな小説でも読み続けてくれる皆様、本当にありがとうございます。この前、お気に入り登録数を見てびっくりしました。いやもうマジで驚きました。

本当にありがとうございます! もう頭を地面にめり込ませます、本当にありがとうございます!!



ここまで読んでくれて、誠にありがとうございます^^

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