第七十六話 再会は続く
大変お待たせしました! ワールドカップの試合を見た後で結構ですので、読んでいただけると嬉しいです!
玄関を乱暴に叩く音に続いて、村人たちが雪崩込んだ。
「大変です、シンが怪我を!」
抱えられて運ばれてきた青年は、傍目にも兄弟かと思うほどにラグネルによく似ていた。
青い髪も、少しだけ尖った耳も。
息を飲むラグネルを尻目に、
「シン! 一体何があった」
シュウが慌てて駆け寄り、血塗れの肩を押さえた。
「源泉にバカでかい蛇が出たんだ」
シンはシュウの息子で、源泉を守るため山小屋で一人暮らしをしている。
治療を受けながら状況を話してくれた。
熊や鹿が出ることはあるが、山小屋をゆうに超える巨大な蛇は初めてだった。
苦戦していると、戦士とシスターが現れて、追い払ってくれた。
「昨日の話だ、今朝になってまた巨大な蛇が現れて、肩をやられた。その二人が逃がしてくれたんだ」
「熊退治を依頼していた二人じゃないか?」
無事だったのかと村人たちは喜んだが、まだ無事でいるかどうかはわからない。
「ずいぶん狙い定めて蛇が出るのねえ」
「最初から、あなたが狙われていたのでは?」
リリーとアキラは、交互にラグネルとシンを見ながら言った。
「俺が? なんで」
「世の中には、ウッドエルフ食べると、不老不死になるって噂があるみたいよ」
「そんなわけねえだろ」
「そう信じている人がいる。一定数ね。捕まると売られるわ。知らないことないでしょ」
「……」
「青エルフとかウッドエルフとか、鬼とか蛇女とか人魚とか。いろいろあるけど、聞いたことないことないわよね」
宿でラグネルが襲撃された事実もある。
「ところで、源泉の湯守をしているのはあなただけ? 他に誰かいるなら危ないわ」
「危ない?」
「食べられているかも」
そう言うと、シュウとシンは、地図を取り出しひとつの湖を指した。
「源泉の湯が流れ込んで、温かい水温になっている湖があります。ここに、襲われて足や腕を失った者達が暮らしています」
「エルフ狩りの犠牲者だが、人間たちに見つかればまた襲われる。だから、山奥で暮らしてもらっている」
足を切られて動けなくなった者たちを、『蛇女』と呼び、逆に人間たちから遠ざけてきたのだろう。同族を守るための苦肉の策だったのだろう。
「その湖に戦力は? 警備はいる?」
「そんなものはありません」
「今すぐ行きましょう。その戦士とシスターの組み合わせに、心当たりがあるの」
ずっと黙っていたガーネットが、地図をちょうだいと手を差し出した。
「手遅れかもしれない」
「小屋よりでかい蛇だった、危険すぎる」
「あなたは夫の親戚らしいの。今日知ったんだけど。この村まで、その蛇がやってきたらどうするの。私たちが片付けてあげる」
ガーネットが出現させたゴーレムに乗り、目的の湖を目指す。
「マイネは蛇に変身できたわよね」
とガーネット。
「いまその話いるか?」
「ええ。マリーエンブルクの教会のシスターがいたでしょう。あのシスター、戦士を連れてたでしょう」
「まさか、二人組の冒険者なんていくらでもいる」
箒で飛ぶリリーが口を挟む。
「そうねえ。そうかもしれないわね。でも、蛇に変身できる奴と、シスターと戦士の組み合わせはなかなかいないんじゃないかしら」
次第に風が吹き始め、目の前が雪で見えにくくなってきた。
目的の湖はまだ見当たらない。
すると、点々と、赤いものが雪の上に散っているのが見えた。
「……誰かいる」
長い髪が雪の間から、はためいているように見える。
目を凝らすと、どうやらベールのようだ。
「シスター……?」
後ろ姿だが、片手になにか持っている。
そこから血が滴っている。
人の手のようだ。
「誰かいるのですか?」
シスターは振り向き、口元の血を拭った。
シスタースノーが誰だか忘れた方は、48話読んでいただけると嬉しいです。




