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第七十三話 侵入者

 闇の中で、部屋の襖が音もなく開いた。

「……」

 何かを探すように、歩き回っているが、足音はしない。 

「……」

 

 布団を突然剥がすと、そこには丸めた服があるだけだ。

「そこまでよ」

 隣の部屋の襖を勢いよく開け、ガーネットの槍が侵入者の足を貫いた。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!」

「私の夫の部屋に忍び込むなんて、死にたいの」

 槍を離さず、ガーネットは侵入者の顔を覆った布を剥がした。

「タダシゲって言ってたわね。人の夫に夜這いするなんて」

 タダシゲは鎌に鎖がついたものを両手に握っている。


「え、マジで殺しにきたのか」

「あなた、危険だから下がっていて」

 隣の部屋で待機していたラグネルが、激痛にのたうつ侵入者の手から、ヒョイと鎖鎌を回収した。

「おい、おっさん、どういうつもりだ」

「クソっ……! 生きてるウッドエルフは久しぶりだったっていうのに」

「……生きてる、いや、俺を捕まえてどうするつもりだった?」

「……イケメンは高く売れる」

 リリーとアキラが、目を合わせ頷いた。

「へー、ふーん、詳しく話を聞きましょう」

 と、廊下から庭に引きずり出した。ガーネットがゴーレムを出現させ、タダシゲの首を持ち上げた。

「このまま引きちぎっても良いのだけれど。どうする?」

「まあまあ、山に連れてって話を聞きましょう」

 とアキラ。

 リリーが箒の後ろにアキラを乗せ、ゴーレムの肩にラグネルは乗り込んだ。


 ガーネットの魔力で走るゴーレムが、真夜中の雪山を駆け上がる。そのあとを、リリーが箒で追いかけた。


 深夜の雪山に、タダシゲを放り出す。

 逃げ出さないように、ゴーレムに足首を掴ませる。

「お、俺をどうするつもりだ」

「ちゃんと答えてくれるなら、命だけは助けてあげます。ウッドエルフを捕まえてどうするんです」

「鬼について聞きたいんだけど、あなたたちはウッドエルフを鬼って呼んで、勝手に捕まえて輸出しているんでしょう」

 リリーとアキラが、どこからか出した剣を差し向けて、答えを促す。

「あいつらは食べると美味いんだ、お、お前らだって牛や鳥を食うだろ!?」

 ゴーレムに足首を掴まれたまま、タダシゲは槍を抜こうと足を動かしている。

「ラグネルを見て、知り合いに似ていると言っていたわね。どこの村で捕まえたのか教えなさい」

「お、おに、なんとかだ」

「ふざけないでくれる? この国に何ヶ所あると思ってんのよ。足を切り落とされたいのかしら」

 リリーが、刃先が刺さっているあたりの肉を、グリグリと揉んだ。

「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!」

「よーく思い出しなさい。26年前に、この子によく似た男と、女を捕まえた村はどこ? 青い髪のエルフがいる場所を思い出しなさい」

 狩り場があるんでしょ? とリリーは、執拗に槍が刺さった足を蹴り上げる。

「鬼頭、鬼首、鬼耳、鬼肩、似たような地名が無数にあるの。思い出しなさい。死にたいの」

 激痛に耐えかねて、タダシゲは手を上げた。

「が、がん……」

「がん?」

「がんきさん、巌鬼山だ、鬼沢という村がある」

「そこは鬼の、ウッドエルフの村があるのね。嘘ついてないでしょうね」

「この状況で嘘はつかねえよ」

 助けてくれ、と騒ぐので、アキラは「もういいよ」とガーネットに命じて槍を抜かせた。


「ま、山から降りられれば助かるでしょう。血止めをがんばってくださいね」

「待ってくれ、おい、置いて行くな」

 タダシゲの足からは、大量に出血している。山を降りられるかは微妙なところだ。

「あなたに捕まったエルフたちも、きっと助けてって言ったでしょうねえ」

 エルフ狩りが横行している土地で、彼だけが悪い訳ではないだろう。

 だが、両親を売り飛ばしたかもしれない相手を、助けてやる義理はない。

 宿に戻り、深夜に泥棒に入られたと、文句を言って部屋を変えてもらった。

 フロントで地図を借り、巌鬼山の場所を確認する。

「ここからもっと北だなあ」



73話更新しました。最近体調不良てせ、なかなか更新できずすみません。


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