表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱庭少女のロジック 〜かつて世界を滅ぼした最強のオートマタは僕の指示しか聞かないらしい〜  作者: 邑沢 迅
奪還編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/68

第28話:回る弾倉、起きる撃鉄

※この小説の続きをスムーズにお楽しみいただけるよう、【ブックマークに追加】を押して設定を保存してください。

 どれぐらいの距離を走っただろうか。

 無機質な金属の壁と、けたたましい赤い警報灯がどこまでも続く軍司令部の通路。

 僕たちは、押し寄せる兵士たちを突破しながら、ただひたすらに上層エリアを目指して階層を駆け上がっていた。


「はぁっ、はぁっ……。も、もう少し、速度を、落とせないだろうか……」


 荒い呼吸を乱し、膝に手をつきそうになっているサイラスさんが、悲鳴のような声を上げた。

 

「はぁっ、はぁっ、なんだ、もうバテたのか?運動不足かぁ?学者さんよ」


 前方を走るデリクさんも、肩で息をしながらニヤリと笑う。

 彼の方も、度重なる乱戦で消耗しているのは火を見るより明らかだ。


「……割くリソースが……君たちとは、根本的に、異なる、だけですよ……」


 サイラスさんが恨めしそうな声で反論するが、それを聞いて立ち止まる余裕は僕たちにはなかった。

 ただ、アルテアの反応はもう、すぐそこまで迫ってきている。

 あと少しだ。あと少しで、彼女の元へたどり着く。


 その時。


 通路の奥、一際重厚で大きな、両開きの鋼鉄の扉が目に飛び込んできた。

 今までとは明らかに違う、威圧感を放つ扉。そこを抜ければ、中枢エリアだと直感でわかった。


「あの扉の先です……!」


 僕が指をさし、デリクさんが迷うことなくその扉へ向かって駆け出した、その刹那――。


 ――ピュンッ!!


 乾いた風切り音とともに、鋼鉄の扉を『何か』が内側から突き破った。

 それは、見えない速度で僕の鼻先数ミリを掠め、背後の壁に深く突き刺さった。


「なっ……」


 僕は弾かれたように足を止め、慌てて後方へと飛び退く。

 壁に突き刺さり、パラパラとコンクリートの粉を吹いている小さな弾痕。


「……銃弾……?」

「おいっ、離れてろコータ!」


 デリクさんが鋭く警告を発し、素早く扉の真横の壁に背中を張り付けた。

 そして、手の中に握り込んだ魔力を、扉の蝶番の部分めがけて裏拳のように手荒く叩き込む。


 メキャァッ!


 凄まじい音と共に、重厚な扉がひしゃげて強引に開け放たれた。

 直後。


 パァンッ! パァンッ!!


 鼓膜を劈くような連続した銃声。

 先ほどまで扉があった空間――虚空に向かって、音速の鉛玉が容赦なく叩き込まれる。

 扉の横に避けていなかったら、デリクさんは蜂の巣にされていただろう。


「……イグナート様の命により、お前たちを、この先には行かせない」


 大きく開け放たれた部屋の中から、感情の起伏を一切感じさせない、冷たく静かな男の声が響いてきた。


「はっ! 誰だか知らねーが、俺たちは意地でも押しとおるぜ」


 デリクさんが口の端を歪めて闘志を燃やす。

 彼は壁に身を隠したまま、僕たちへと顔だけを向けた。


「コータ、学者さん。下がってな」

「はい……!」


 デリクさんは素早く足元の瓦礫を拾い上げ、それを牽制として扉の向こう――部屋の中へと勢いよく投げ込んだ。

 隠れている敵の気を引き、一気に距離を詰めるためのブラフだ。

 しかし。


 パァンッ!!


「……なっ!?」


 放物線を描いて飛んでいたただの瓦礫が、空中で粉々に粉砕された。

 まるで、見えない壁にぶつかったかのように。

 いや、違う。室内にいる何者かが、暗闇の中から正確無比な狙撃で瓦礫を『撃ち落とした』のだ。


 どれほどの動体視力と射撃の腕なのか。


「――デリク、やろう」


 緊迫した空気の中、エレーナさんが静かに、しかし決意を込めた声で告げた。


「ああ、そのつもりだ! 出し惜しみはなしだぜ!」


 エレーナさんの足元から、水面のような淡い魔力光が放たれ、それが光の帯となってデリクさんへと流れ込んでいく。

 共同体レゾナントの要である、魔力解放。


解放リリース……80%!」

「うぉぉぉぉおっ!!」


 エレーナさんの詠唱と共に、デリクさんの全身の筋肉から魔力が放出される。

 両腕の周囲の空気が歪み、強固に圧縮された魔力の壁――物理的ダメージを弾き返す魔獣のような装甲が、彼の前方に形成されていく。


 デリクさんはその両手で顔を覆うように構え取ると、まるで怒り狂った闘牛のように、そのまま一直線に室内へと走り込んだ。


 パァンッ! パァンッ! パァンッ!!


 デリクさんめがけて、容赦のない銃弾の嵐が叩き込まれる。

 しかし――『ギィンッ!』という甲高い金属音と共に、銃弾はデリクさんの魔力装甲に弾かれ、明後日の方向へと逸れていく。


「コータ、合図したら走れ!止まるんじゃねぇぞ!うぉぉぉぉぉぉ!!」


 デリクさんは銃弾の嵐を正面から受け止めながら、室内の『床』へ向けて、その右腕を引き絞った。

 彼の剛腕に、部屋の空気を震わせるほどの莫大な魔力が集束していく。


「――っ、破壊ラヴィッジッ!!」


 ズドォォォォォォンッ!!!


 デリクさんが渾身の力で地面に叩きつけた魔力は、凄まじい大爆発を引き起こした。

 床のタイルが粉々に砕け散り、部屋中に分厚い煙幕のような粉塵が巻き起こる。

 巻き上げられた瓦礫と砂埃で、一切の視界が完全に遮断された。


「今だ、コータ!!」

「――はいっ! すみません、行きましょうサイラスさん!」


 デリクさんの怒号に背中を押され、僕はサイラスさんの腕を強引に引き、廊下の先にある重厚な扉を目指して一目散に駆け出した。

※この小説を面白いと感じていただけましたら、★★★★★の評価と【ブックマーク】で応援お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ