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第八十三話 身辺調査


  コリンさんの身辺調査、すぐにバレておじゃんにならないかなとか淡い期待をしていたんだけど、ユーニスさんが気配を消せる魔法なんてものを使えるせいでいまだに続いていた。

 こういうときだけ、Sランククランマスターとしての威厳を見せつけてくるのは俺への嫌がらせなんだろうか。

 難癖じみた嫌がらせ判定をしながら、俺はコリンさんが宿泊中の宿近くで張り込みをしていた。身辺調査も五日目となり、鈍色のコートを着込みながらあんパンと牛乳を手にしていたらかなり様になっているのではないか。


「もうそろそろ宿から出てくるはずよ」


 ユーニスさんはひそひそ声で言う。別に、魔法で気づかれないからこそこそとする必要はないはずなんだけど……そこはなんとなくのノリってやつのなんだろう。

 ここ四日間の調査通りなら、コリンさんはこれから教会に行き、クラン協会で依頼を受け、依頼を終わらせた帰りに教会に寄ってから帰宅するはずだ。

 意外にもコリンさんに女の影とかはなく、毎日教会に通っているなんて敬虔な信徒だなみたいな感想しかない。


「ねえ、また後をつけるだけなら僕はパスしたいんだけど」


 案外まじめに毎日ついて来ているレアは嫌そうな顔をする。正直俺もこのストーキング活動に意味がなさそうだと思ってきている頃合いだったから同意見だ。もう四日間も張り込みをして何も起きないってことは、これ以上後を追ってもホコリは出ないだろうから。

 

「なんか、別角度から攻めないとコリンさんがどうしてこの町に留まっているのか分からないんじゃないですかね」


「別角度って……例えばどういう責め方よ」


 自分のやり方を批判されたと感じたのか、ユーニスさんはちょっとムッとする。

 先ほど言ったように女の気配はないし、悪い場所ではないけど特別この町に留まりたいほど魅力的なわけでもない……仮に気に入っていたんだとしたら彼女を連れて来ればいいだけの話だから、今回の依頼者であるエイミーさんと離れたかっただけなのではないかと睨んでいる。まあ、エイミーさんの友人であるユーニスさんに勿論そんなことは言えないけれど。

 ただ、このままだと無駄に時間を浪費するだけになりそうだ。


「方法は思いつかないですけど、コリンさんが恋人のエイミーさんと離れてまでこの町に留まりたい理由があるはずなのに、四日間も張り込みをして成果が出ないということはこのままじゃだめだと思うんです」


「それは……そうなのかもしれないけれども……」


 思い悩むそぶりを見せる。ユーニスさんもこのままでいいとは思っていなかったんではないだろうか。

 少しの静寂が訪れたのちに腕を組んでいるレアが口を開いた。


「依頼対象の足取りを追った感じ、教会かクラン協会にしか寄ってないわけだから、その二つを探ってみるしかないんじゃないの?」


「探るって言ったってどうするんだ?」


「人が多いと気配の消える魔法が機能しないって話だから今まで僕たちって依頼対象に悟られないようその二つの場所では外で待機してたけど、それだとなんも成果を得られなかったわけだから依頼対象が中に入ったとき調べてみればいいじゃん」


「でも、コリンさんにばれるんじゃないか?」


「別にばれたっていいじゃん。たまたま居合わせたってことにすればいいし」


 それはそうかもしれないと、レアの提案に納得する。コリンさんが教会に用事があるタイミングで、たまたま俺たちが居合わせたとしてもおかしいことではない。


「ただ、仮に今から教会に僕たち全員が揃って入っていったとしたら、コリンを警戒させちゃうだろうし……セシリアちゃんとクラマスが潜入すればいいんじゃない?」


「なんだよその人選」


「セシリアちゃんは信徒だから入ってもおかしくないけど、ユーニスちゃんも一緒にいるってなると依頼のことを思い出させちゃうかもしれないでしょ。あ、クラマスなら顔を覚えられないだろうから大丈夫だと思うよ」


 なめてんな、このガキ。何だよ顔を覚えられてないから大丈夫って……。この体の顔ってそこそこいけているよりではあるけど、目の前にいる三人と比べたら霞むのはそりゃそうなんだけどさ……。


「なんでお前は来ないんだよ。別に付き添いって形なら一緒にきてもそこまで問題ないだろ」


「え?だって、三人も必要ないでしょ。そもそも僕、教会とか嫌いなんだよね。特にこの町は」


 たださぼりたいだけかよ!と思いつつも、無理に連れて行っても腹いせにしかならないのは間違いない。

 それに、意見を出した功績があるわけだからわがままをいう資格がないわけでもない。

 

「セシリア、マコト、任せてもいい?」


「はい」


「……分かりましたよ」

 

 教会に入ってコリンさんの様子を確認するだけだしそんな意固地になって拒絶することではないか、と納得させながらユーニスさんの言葉に頷いた。





 レアの提案に同意したセシリアさんと俺はコリンさんがいつも通っている教会にたどり着いた。

 うちの町の外れにある老シスターが切り盛りしているような小さなやつではなく、大聖堂ってスケール感で今からここに入るのだと思うとちょっと緊張する。教会に入っていく人達はみんなコリンさんが胸に付けていたバッチをつけている。あのバッチは信者のあかしだったことに気づく。

 教会みたいなところに入るのは初めてで、作法が分からないというかなんというか……セシリアさんを頼ろうと横目で見たら、どこか落ち着かない様子だった。


「もしかして、体調とか悪いですか?」


「え?……いえ、少し緊張しちゃっていまして」


「緊張ですか?」


 むしろ馴染みがあるところなんじゃないのかと疑問を抱いて聞き返す。


「はい。……私まだ、この町にきてから教会には立ち寄っていないんです。その……私がこの町にいた時はここまで立派なものではなかったんですよ」


 セシリアさんはかつてこの町で過ごした記憶を呼び起こしているのか目を細めた。

 立派な教会を眺めながら、セシリアさんがここを去ったのは三年前ぐらいだって言っていたよなとか思い、俺は改めて魔法の凄さを思い知る。そんな短期間でこんな立派な教会が建っているのは魔法によるものだろうから。


「へえ、うちの町にある教会みたいな感じですか?」


「はい。もう少し大きかったですけど。それでその……」


「自分が知っている場所と変わっているんじゃないかと怖くなってまだ訪れていない、ってことですか?」


 言い淀んでいたセシリアさんは目を見開いてしきりに瞬きをした。自分の言い表せなかったモヤモヤを言葉にして言い当てられたみたいな様子で。


「それもあるのかもしれませんね……。中に入りましょうか」


「そうですね」


 含みがありそうな言い方が少しだけ気になった。が、今の目的はコリンさんの動向を探ることだから教会で潜入捜査することを優先した。

お読みいただきありがとうございます

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