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マリアノツルギ  作者: 由岐
3章 白銀の国
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8.シアル鉱山

 シアル鉱山に到着した俺達は、早速コアを掘り出すことにした。

 俺とアキレアとヘリオトロープ様、そしてグレイさんの四人で鉱山の作業員さんから道具を貸してもらい、マルトス侯爵とイーファンさんはコアの仕事の会議があるとかで近くにある会館へ向かい、アジュガとコバ、カエさんの三人は夕食の準備をしてくれているらしい。

 同じところで探すより、グレイさんとは離れた場所でコアを探した方が良いかもしれないと、俺達は鉱山の奥へ進んでいた。


「ヘリオトロープ様、これって力仕事だけど大丈夫なのか? やっぱりアジュガ達と……」

「小さい頃からお兄様に剣術の稽古をつけてもらっていましたから、体力には少し自信があります」

「へぇ、リーオにもお兄さんが居るのね」

「俺にも兄ちゃんが居るけど……かなり厄介な兄ちゃんだよ」

「ショウさんとアキレアさんにもお兄様がいらっしゃるのですか?すごい偶然ですね!」


 ヘリオトロープ様がとても嬉しそうに微笑んだ。

 それにつられて俺とアキレアも笑顔がこぼれる。


「そうね。リーオのお兄さんってどんな人なの?」

「誰からも慕われる、わたしにはもったいないような素晴らしい兄ですよ」

「良いなぁ……俺の兄ちゃんと交換してほしいよ」


 俺の兄ちゃんなんか、すぐ怒るしうるさいし、楽しみにしてた俺のプリン勝手に食いやがるし……。

 アキレアのお兄さんも優しい人だったみたいだし、何で俺の兄ちゃんってあんな最悪なやつなんだろう。


「……そういえばさ、何でアキレアはヘリオトロープ様のことリーオって呼んでるんだ?」

「この子、名前が長いでしょ? だからお兄さんからリーオって呼ばれてるんですって」

「ああ、だからリーオなのか」

「あの……ショウさんもぜひそう呼んで下さい。それと、敬称もいりません。今のわたしは、あなたのマリアなのですから」

「良いのかな……うん。じゃあ、これからそう呼ばせてもらうよリーオ」


 俺がそう呼ぶと、リーオははにかんだ。ちょっと照れ屋なのかもしれないな。



 マルトス侯爵から聞いたコア採掘のコツその1。

 アキレアやリーオのようなマリアや、魔族のコバやイーファンさんにはコアから発せられるエネルギーを感じ取ることが出来る。

 アキレア達がより多くのエネルギーを感じるポイントを探せば、たくさんのコアが見つけられる。

 二人がそのエネルギーを感じた場所で採掘を開始した。


 コア採掘のコツその2。コアを傷つけないように、丁寧に岩や土から掘り出す。

 アキレアの水魔法で土をやわらかくしようと思ったけど、精霊のコアは制御するまでは魔力の力が不安定で、アキレアの魔力に反応して暴走してしまう危険性があるらしい。だから手作業で丁寧に掘り出さなければならない。

 作業開始からおよそ一時間して、普段から斧を振り回しているだけあってスムーズに掘っていたアキレアが一つ目のコアを発見した。


「あっ、もしかしてこれじゃないかしら?」

「すごいですアキレアさん! 一番です!」


 アキレアが掘り出したのは緑色のコアだった。手の平におさまるほどの大きさのそれは、ほの暗い鉱山の中でぼうっと輝いていた。


「じゃあショウ、これを持ってみて」

「ああ」


 掘り出したコアは、それを使う者との相性を確かめないといけない。

 アキレアから緑色のコアを受け取り、マルトス侯爵から事前に言われた通りコアを両手で握り締めた。コアとの相性が良い場合、コアの魔力と自分の魔力が溶け合う感覚があるらしい。

 だけどこの世界の人間じゃない俺に魔力なんてあるんだろうか。


「うわっ!」


 コアが強く光って、風圧で手から飛んでいった。

 こんな風に、相性が悪かった場合はコアが拒絶反応するらしい。


「だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫だけど、びっくりしたぁ……!」

「このコアは駄目みたいね……まあ、一つ目からショウに合うコアが見つかるわけないわよね」


 今までシアル鉱山から掘り出されたことがあるコアは、地・水・火・風・雷の五属性。それ以外の属性はまだ見つかっていないという。

 気を取り直して作業を再開したものの、この日は俺に適合するコアは見つけられなかった。グレイさんも同じだったようで、コア探しというのは思っていたより肉体的にも精神的にもかなりハードなようだ。

 夕食の時間を知らせに来てくれたアジュガとコバと一緒に、カエさんやマルトス侯爵達が待つ会館内の食堂へ向かった。

 この会館はシアル鉱山の作業員さんや、貿易の関係者の人達が寝泊まり出来るようになっている。

 この世界の四季は国ごとで固定されているため、ウィントハーレンではいつ吹雪によって外出出来なくなるか予想がつかない。だからこの会館は会議の場としてだけでなく、寮としても利用されているらしい。

 食堂にはすでにたくさんの人が集まっていた。


「グレイ、みんな、こっちだよ!」


 カエさんが手を振って、俺達も席に着いた。

 料理人なだけあって、食材が限られたこの国においてもアジュガの料理はとても美味しかった。


「採掘したコアはきちんと持ち帰ってきただろうな?」

「はい。この中に全部入れてあります」


 俺はアキレア達と掘り出したありったけのコアが入った袋をマルトス侯爵に渡した。

 それに続いてグレイさんも袋を取り出した。


「はい、これが俺の分。残念だけど、まだ俺に合ったコアは見つけられなかったよ」

「そうでしょうね」

「シアル鉱山には無数のコアが眠っている。星の数ほどあるコアの中から、己に合ったものをそう簡単に掘り出せるはずがなかろう」

「また明日もコア探し、だね。君達が取ってきたコアは僕らが有効に使わせてもらうよ」

「マジかよ……今日だけでヘトヘトだっていうのに!」


 体中疲れきっているのに、コアが見つからないとこの作業が毎日続くのか。


「これもいい修行だと思いなさいよ」

「私も皆さんを応援していますよ。さあ、せっかくの料理が冷めてしまう前に食べてしまいましょう?」


 溜め息をついて、俺はアジュガに言われた通り食事を再開した。

 翌朝、とんでもない筋肉痛になったのは言うまでもなかった。



 

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