↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マリアノツルギ  作者: 由岐
1章 花香る国
22/118

21.祖国の味

 アジュガさんに連れられてやってきたのは、大通りにある可愛らしい雰囲気のお菓子屋さんだった。

 あまりにもほんわかした店だったから、アキレアとレベッカさんが居てくれて良かった。


(男だけじゃかなり入りにくいからな)


「わぁ~! 可愛いケーキがいっぱいだヨ!」

「綺麗……」


 ショーケースに並ぶ色鮮やかなケーキ達に目が釘付けの女性陣。

 やはり女の子はこういう店が好きなようだ。


「さあショウさん。お好きなケーキを選んで下さい。貴方の誕生日と私達の出会いを記念して、ご馳走させて下さい」

「ありがとうございます」


 好きなケーキか。タルトとかチーズケーキとか色々あるけど、どれを選ぼうか。

 たくさんのケーキが並ぶ中、ふと目にとまったのはピンク色のロールケーキだった。


「そちらのロールケーキは本日限定のものですね」

「中のクリームに混じってるのって……桜の花びらか」

「えっ、そうなの?」


 セロウズさんの言う通り、ロールケーキのクリームに何かが混ざっていた。


(こんな西洋風な国に桜のロールケーキなんてあるんだな)


「シンフォリカルポス様のお世話役のヒギリさんは白虎の国のご出身だそうで、祖国ではスプラエンの桜を使ったお菓子が色々とあるらしいんです。私が以前そのお話をこのお店のパティシエの方にしてみましたら、こうして桜を使ったお菓子をお作りになるようになったんですよ」

「確かに、桜を使った菓子は白虎でよく見かけたな」

「桜餅美味しかったネ! また今度食べに行きたいヨ~」


 どうやら西の国は日本風の文化があるようだ。

 この世界に来てまだ少ししか経ってないが、軽めのホームシックになってきたかもしれない。


(いやいや、俺はアキレアと一緒に邪神を倒さなきゃいけないんだ。弱音なんて吐いてる場合じゃない。元の世界に帰るわけにはいかないんだ)


「今日しか食べられないんだったら、せっかくの機会だしこのケーキにしたいな」

「では、店内でいただきましょうか」


 アジュガさんに桜ロールを買ってもらい、わざわざプレートにチョコでメッセージまで書いてもらってしまった。

 ちょっと恥ずかしいけど、文字が読めないから微妙な気分だ。


「もっと早く言ってくれれば色々用意出来たのに……って、べ、別にあんたにプレゼントあげようなんて思ったりなんかしないけどね!? れ、レベッカさん達が困るって意味なんだからね!?」

「わかってるって」

「来年の誕生日にはちゃんと祝ってやっからよ。今年はこれで勘弁な」

「歴史ある花祭りの日が誕生日だなんて、ショウさんはきっと青竜にも祝福された方なんでしょうね」

「ショウ、お誕生日おめでとうアル!」

「俺が急にあんなこと言ったのが悪かったんだ。その分、みんなの誕生日はちゃんと祝わせてもらうから」


 ケーキを切り分けて、ふわふわのスポンジと桜の香りのクリームを口に運ぶ。

 甘いスポンジとクリームに入った桜の塩漬けの味のバランスが良くて、春を目一杯堪能している気分になった。

 ちょっぴり懐かしい日本を思い出させる、そんなケーキだった。

 誕生日会を終えて、午後は旅に必要なものを買い揃えるために薬屋へ行くことになった。

 俺の槍を買った武器屋のすぐ近くの店。棚にはたくさんの瓶が並んでいるけれど、瓶のラベルが読めない俺にはどれがどんな薬なのか全くわからない。


(やっぱり不便だなこの状況)


「皆さんの中に、治癒術が使える方はいらっしゃいますか?」


 アジュガさんの問いかけに俺達は首を横に振る。

 治癒術はきっと回復魔法のことだろう。俺は魔法なんか使えないし、セロウズさんも剣士だから使えない。

 マリアは魔法を使えるけれど、多分アキレアは水の魔法しか使えなくて、レベッカさんは雷の魔法が出来るのだと思う。

 見た目だけの判断になるが、アジュガさんはエルフでも魔族でもないだろうから俺達と一緒だ。

 となると、回復要員が居ないから治癒に使う薬をある程度買っておかなければいけないのだろう。


「では、治療薬を多めに買っておきましょうか。またいつグリフォンに襲われるかわかりませんしね」

「あたし達がグリフォンに遭遇したのを知ってるの?」

「ええ。火事から民の命を救ったフリッグマスターとマリアアキレアが、救援を求める最中グリフォンに襲撃されたが見事撃退した……と、先日ある町の町長から連絡がありましたので」

「あのジジイ、俺とレベッカの救援は無かったことにしてやがる……」

「ギルドに問い合わせましたら、緊急のグリフォン撃退依頼をお二人がお受けしていたと聞きましたので、陛下もそのことはきちんと耳に入れられておりますよ」

「なーんだ、ちゃんとわかってくれてるアルカ」


 ヒギリさんや国王様が俺達のことを知っていたのは、そういう経緯があったからなのか。


「私達は、グリフォンがフリッグマスターであるショウさんと何らかの理由で接触したものと考えています。グリフォンは魔物ではありますが、魔族の国では麒麟に並び信仰の対象となる賢い生き物です。無意味に人間を襲うとは考えにくいんですよ」

「だから、またグリフォンが来ることにも備えておいた方が良いってことか」

「はい、その通りです。このお店の薬は質が良いと評判ですから、安心して使えますよ」


(アジュガさんって、俺達が捜索を依頼されたヘリオトロープ様の世話をしていた人なんだよな。偉い人の世話役だっていうのに、街のお菓子屋さんとか薬屋さん、それに花にも詳しいしちょっと変わってるよな)


 ヒギリさんが言うにはスプラエン王国一の弓使いだと言うし。


(まあ、お城に居たんだから怪しい人じゃないとは思うけど)


 ヒギリさんから受け取った資金で治療薬を何種類か買って、別の店で携帯食料としてドライフルーツ等も買っておいた。

 これでだいたいの準備は整った。


(ヘリオトロープ様、どこに居るんだろう……)



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。