表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マリアノツルギ  作者: 由岐
1章 花香る国
21/118

20.花言葉

 リューエルシアン城を出て城下町を歩いている俺達は、ヘリオトロープ様を探す旅に同行することになったアジュガさんと一緒に花祭りを楽しんでいた。


「ほらほら、あれを見て下さい」


 たくさんの鉢植えが並べられた広場を指差して、アジュガさんがにこにこと微笑む。どうやらこの場所では花を売っているらしい。

 アジュガさんに続いて広場へ向かい、色んな花を見て回る。


「この青紫の花、アジュガと言うんですよ」

「アジュガさんの名前と同じなんですね」

「ええ、そうなんです。ああ、私のことはアジュガとお呼び下さい。もっと砕けた口調で構いませんよ」

「えっと……アジュガ、で良いのか?」

「ええ。私に気を遣う必要なんてありませんからね」


 優しそうな人で良かった。アジュガさんとなら仲良く旅が出来そうだ。


「私の名前はこの花からとられたものなんですよ。アジュガの花言葉は、強い結びつき。人と人とを結ぶ架け橋となれ、という願いを込めて名付けられたと聞いています」

「何かカッコいいアル!」

「お褒めいただきありがとうございます。あまり花には詳しくないのですが、この種類の花は薬草として使われるものもあるらしいですね。そのことから、病気を治し地獄の釜に蓋をするという意味で、ジゴクノカマノフタとも呼ばれるんだとか」

「滅茶苦茶詳しいじゃねーか」


 アキレアも魔物や薬草のことには詳しい方だが、そこまで細かいことは知らなかったようでアジュガさんの話を真剣に聞いていた。


「それから、そちらにある赤やピンクの花はアキレアですね。アキレアさんのお名前も花の名に由来しているんですか?」

「ええ……母は花が好きな人だったから」

「アキレアは乾燥や暑さ、寒さにも強い逞しい花です。花言葉は戦い。きっと貴女にぴったりの花でしょうね」


 彼女の名前も花からきていたのか。アジュガもそうだが、この花も初めて見る花だった。流石は花の都イーサルだ。


「ワタシとセロウズはお花の名前じゃないヨ……ちょっと淋しいアル」

「ショウの名前は何かの花だったりするのか?」

「俺の名前? 確か、婆ちゃんが付けてくれたらしいんだけど……ショウジョウバカマっていう花からとったとか聞いたような……」

「ショウジョウバカマ……ああ、こっちにありましたよ。この花は淡い紅のものや紫のもの、白い花を咲かせるものもあるんです」


 俺の名前、松成はショウジョウとも読める。本当は「猩猩袴」って書くらしいんだけど、婆ちゃんは分かり易い漢字で名付けてくれたらしい。


「ショウジョウバカマの花言葉は、私の心は燃えている。祝福する。ショウさんのお婆様は、フォルトゥナの名にふさわしい花を選ばれたのですね」

「へぇー。ショウの名前も結構イケてるじゃねーの」



(確かに俺の名前もカッコいいかもしれない。ありがとう婆ちゃん)


 ちょっと嬉しい気分で他の鉢植えを見ていると、丸くて白い実をつけた植物と、城の花瓶に生けられていた紫色の花を見つけた。


「この花……」

「ヘリオトロープの花ですね。私がお世話させていただいたヘリオトロープ様の名と同じ……」


 ヘリオトロープを眺めるアジュガさんの顔は、あの時と同じく寂しげだった。


「ねぇねぇ、このお花の花言葉は何アルカ?」

「崇拝、忠実、献身的な愛……。慈愛に満ちたヘリオトロープ様によく似合う花です」

「こっちの白い実の方は……国王陛下の名前と同じ、シンフォリカルポスだったかしら」

「はい、よくご存知ですね。こちらの花言葉は、いつまでも献身的に、可愛いです。シンフォリカルポス様もお優しく可愛らしいお方ですよ」


 アジュガさんは二つの花を愛しそうに見つめていた。


「それにしても、花祭りってだけあっていつもより花がたくさんあるよなぁ」

「年に一度の、様々な花を愛でる春の国ならではのお祭りですからね。毎年この4月19日は、何百年もの伝統がある大切な日なんです」

「えっ、4月19日って言ったか?」

「ええ、そう言いましたが」


 4月19日……そういえば、俺がこの世界にやってきたのは高2になった4月だった。

 もうこの日付けになっていたなんて気が付かなかった。


「実はさ……今気付いたんだけど、俺今日誕生日なんだ」

「マジかよ!」

「おやおや、それはおめでたいですね」

「今気付いたって……自分の誕生日忘れてたの? ショウジョウバカマだけにやっぱりバカなのかしら」


 名前の由来にバカが隠れていたとは……って、それはかなり辛いんだけど。根っからのバカなの?筋金入りのバカなの俺?


「お祝いしようヨ! みんなでケーキ食べるアル!」

「レベッカがケーキ食いたいだけじゃねーの?」

「そ、それもちょっぴりあるアル……!」


 そう言ってレベッカさんは照れていた。

 そんな彼女にセロウズさんはちょっと意地悪なことを言うけれど、それは愛のあるいじり方だ。

 多分Sだなあの人。


「俺もケーキ食べたいなぁ」

「では、私のおすすめのお菓子屋さんに行きましょう。美味しいと評判なんですよ」

「じゃあ早速行ってみようぜ」


 こんな綺麗な国のケーキってどんなものなんだろう。凄く楽しみだな。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ