0話 ミリティア、どこかの森で目覚める
ーー静かに流れていく風。激しい頭痛とともに、私は目を覚ました。
「ここはどこ⋯?」
声を出して、自分の違和感に気づく。自分の名前、年齢。今まで何をしていたのか、何も思い出せない。
「あ、起きてる!」
高い女の子の声が響いた。その子の胸元にある、薄いブルーの水晶⋯だろうか。それが放つ光が眩しく感じて、私は目を細める。
「あなたは、だれ?⋯そもそも私は何⋯?」
「⋯やっぱり、忘れちゃってるんだね。あなたの名前は、ミリティアだよ」
少女は肩につくくらいの銀髪を揺らして、ゆっくりと言った。
「ミリティア⋯?」
聞いたことのある、懐かしい響きの名前だった。体を起こすと、また頭がズキッと痛んだ。
「あっ!急に起き上がっちゃ駄目だよ、痛くなっちゃうでしょ?」
何が起きているのかさっぱり。この少女は何者なんだろうか。
「あなたは誰なの?」
私はもう一度聞く。すると彼女は嬉しそうに笑って、
「自己紹介忘れちゃってた〜私はリラ!創造神の複製体だよ。よろしくね!」
リラはまたにっこり笑った。優しい、いい子に見える。
「うん⋯よろしく⋯ね?」
創造神の複製体?何がよろしくなのか自分でもよく分からないが、まあひとまずいいだろう。
いざとなったら逃げればいいんだから。
そもそもどうして私はこんな野原でリラと二人きりなんだ。最初は名前すら、何もかも分からない状態だったし。
「リラ、ここはどこなの?私、何も覚えていないの」
「あはは、まあそうだよねぇ。自分の名前忘れちゃってたんだもん。ここは⋯えーと、エンライト王国のどっかの森!」
なんて言う名前の森か忘れちゃったぁ、と笑うリラ。そのリラが急に真顔になって、
「これ、忘れないうちに渡さないと、怒られちゃう。ハイこれ、ミリティアの!」
渡された瑠璃色の水晶がついたペンダント。
「これ、あなたのと色違い?」
「うん。ミリティアのおめめの色と一緒だよ。それ、無くしたり絶対にしないで。落としても壊れない硬いやつだけど、壊れないように大切に首にかけといてね。」
「⋯?分かった」
すると私のお腹から獣の唸り声のような、グオォォ〜という音が聞こえた。空腹で鳴ったとは思えない音に、自分でもびっくりした。
「お腹空いてるよね、ほらあそこ見て!エンライト王国の城下町だよ」
リラが指差す方向には、赤、オレンジの屋根が可愛い街と、美しい城が見える。
「美味しいもの、いっぱいあるんだよ!食べに行こうよ、お金は私結構持ってるから大丈夫!」
私はあまりの空腹に自分を知ってるのかと聞くのを忘れて、首を縦に振った。




