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9.迷子ではないですよ?


「……ありぇ? クラ……おにーたま、いにゃい?」


ミオは周りをキョロキョロと見渡すが、先程まで隣に居たクラウドが居ない事に気づく。

クラウドと手を繋ぎながら見回っていたのに、いつの間にか繋いでいた手が外れていたのだ。


「もう! おにーたまったら、迷子ににゃったのね! めっ! って、ちなくちゃ!」


(もう! クラウド様ったら! 仕方ない……クラウド様を 探しに行こう!)


けして、フラフラと自分の方からクラウドの側を離れたのではなく、クラウドが自分の側から離れたのだとミオは思っているのだ……。


ぐぅ~……。


「おにゃかしゅいた……」


先程。お肉やチーゴ飴を食べていたミオだったが、もうお腹が空いてしまった様だ。幸いにも、シルベットから「好きなものを買ってきてもいいですよ? お金のお勉強にもなりますしね。」と、お金を少し貰っていたので物は買える。

ミオはぬいぐるみを抱き直すと、クラウドを探すために人がごった返している方へと歩き出す。

ミオの小さな体では、大人の魔族の足しか目線に入らない。前から、後ろから来る人達を避けながら進もうとするが、上手く前に進めない。


「あうっ! ……ふへっ!」


すれ違う人の足に当たりながらもやっとの思いで、人混みを抜け。道の端にたどり着く。


(小さい体だと不便だ……。)


ぎゅるん……。


「むー……おにゃかしゅいた」


ミオは口を尖らせ、お腹を抱え込みながら座り込む。

食べ物を探すために、もう一度人混みの中を行く元気が無かった。


「お嬢ちゃん大丈夫か?」


下を向いていた顔を上げると、赤い短髪の魔族の男の人が心配そうに覗き込んでいた。

体格はがっしりとしており、筋肉もついている。


「……だいじょばにゃい」


ぎゅるるるるる……。


お腹も返事をするような大きな音が鳴った。


「クククッ……そうか……だいじょばないか……。」


男は笑いを堪えているのか、口に手を当て。肩が震えている。

そんな様子を見たミオは、拗ねたように口を尖らせる。


「悪い悪い。……それで? お嬢ちゃんの服からして、良いところの子供だろ? 親は?」


「……ちらない人とちゃべっちゃめっ! って、いわれちゃの」


「ブフッ! ……そうか、俺はバルトだ。」


「ミオでしゅ!」


「ミオ、親は何処だ?」


「おにーたまが、どっかいっちぇね? うーんと、それでミオさがちてるの!」


ミオは「偉いでしょ!」と言うように、胸を張っている。バルトはそんなミオの頭を撫でると、ミオを持ち上げ。肩車をした。ミオは落ちない様にバルトの頭を両手で掴む。


「じゃぁ、ミオ。お腹空いているんだったら、何かを食べながらお兄ちゃんを探すか!」


(えっ!? 良いの!? 一緒に探してくれるの?)


「あい!!」


一人で心細かったミオは元気良く返事をする。

バルトはミオの返事を聞くと、笑いを堪えながら人混みの中を進みだした。


「何食べたいんだ? やっぱり肉か?」


「おにくは、しゃっきたべまちた!」


「食べたのか!」


「じゃぁ、チーゴ飴「たべまちた!」」


「……さっき、食べたのにお腹が空いたのか?」


「あい!」


(動いたからね!)


「じゃぁ、今街で人気の物を食べに行くか?」


「あい!」


バルトが肩車しながらミオを連れて行ったのは、お店の前に行列が出来ている所だった。

そのお店で買った人達の手には、パンみたいなのに色々

な具材が挟んである食べ物を持っている。


(サンドイッチみたいな物かな?)


キラキラとした目でミオがお店を見ていると、バルトは列に並び始めた。

そんなに待たずに、買う順番が来た。


「どれ食べたい? 肉やフルーツが挟んであるのもあるぞ?」


「えっとにぇー? おにくぅー!!」


「そうか、お肉……じゃぁ、それを二つ!」


「はいよ!」


お肉を食べると聞いたバルトは、笑いを噛み殺しながら頼んでくれた。


「ミオ、嫌いな物はないか?」


「ミオはねー? きりゃいなたべもにょないよ!」


「そうか、偉いな~!」


ミオに好き嫌いがないと聞くと、バルトはミオの頭を撫でてくれた。子供を撫で慣れていないのかミオの髪が乱れたが、褒められた事が嬉しかったのかミオはニコニコとした笑顔をしながらバルトを見上げている。


「はいよ! 出来たよ!」


「……ほら。落とさずに持つんだぞ?」


「あい!」


お店の人から受けとる。少し固めのパンの中には、色々な野菜の様な物と薄く切ってあるお肉が挟んである。

野菜の様な物は、シャキシャキとしてて美味しそう。


「じゅる……」


ぎゅごぉぉぉぉぉ


美味しそうな食べ物を見て。ミオの口から涎が出たと同時に、お腹が凄い音を立てながら鳴った。

ミオは、少し恥ずかしそうにしている。


「クククッ。ほら、食べろ」


「あい! いたらきましゅ!」


ガブッと、かぶり付く。


(この野菜の様な物もシャキシャキしてて美味しいし、お肉も甘辛くなってて美味しい!)


「おいちー!」


「そうだろ?」


バルトはそう言うと、手に持っていた食べ物に豪快にかぶり付く。バルトは、食べるのが早い。

どんどんと食べ進められるのを見て、ミオは急いで食べる。バルトに肩車してもらいながら食べているので、バルトの頭の上に落とさない様に気を付けながら食べ進める。


「そんなに急がなくても大丈夫だぞ?」


「ふぁい! (あい!)」


バルトが食べ終わって、少ししてからミオも食べ終わった。バルトは、ミオが食べ終わるまでその場を動かず。急いで食べているミオを見て、飲み物も買ってきてくれた。


「おいちかったー!」


「小さいのに、良い食べっぷりだったぞ?」


バルトに頭を撫でながら、ミオは何かを忘れている様な気がした。


(そうだ! 私、クラウド様を探していたんだった!!)


「おにーたま、しゃがさなくちゃ!」


「ミオの兄貴はどんな容姿してるんだ?」


「んーとね、くりょ……銀のかみのきぇにねー。しゅごく、かっこいーの!!」


「銀の髪の毛か……。」


バルトは、顎に手を当てながら少し考えた様な表情をする。


「あんな感じか?」


バルトが指をさした方を見ると、クラウドに顔立ちが似ている銀髪の男の人が周りをキョロキョロと見回しながら上を飛んでいる。


(あれ? クラウド様に似ているんじゃなくて、あれってクラウド様じゃ……。)


「おにーたまぁぁぁぁ!!」


ミオが大きな声で叫ぶと、クラウドも声に気づいたのか。ミオの目の前に降りてきた。



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