寝起きとぷにぷにと隠し子疑惑?
あけおめ
あの後、スヴィータとも色々と話をした。
神様や天使の事、導き手の事。
知られているのなら隠す必要もないから、今まで私の周りで起きたこと。
アスクレピオスの話をした時に彼女は少し険しい顔をした。
みそぎちゃんやキサラちゃんを眷属にした話をすれば、お嬢様らしいですねと笑った。
私の話をした後は、スヴィータの話を。
あの時折れた刀は、彼女が私と同じように終の銀竜に譲られた物らしいとか。
彼女の蝙蝠と言う種族は、おそらく鱗人である銀竜と共に在った時の名残で。
これを選んでいなければ、また違った記憶を与えられていただろう事とか。
他にも、スヴィータや銀竜の使っていた剣術についてや、一刀千刃の極意に関しての話。
後は、そう。
あの時折れたままの刀の修復……と言うよりも打ち直しかな。
それに必要な素材を私が持っていたりしたので、譲り渡したりもした。
ちなみに、あの時のでかいサソリの尾針が必要な素材だったらしい。
それからはうにが用意した昼食を共にし、お茶を楽しみ。
現実と同じようなゆったりとした時間を過ごして、微睡みに襲われて。
ふわふわと浮き沈みする意識の中、寝室へと運ばれて行くのを感じながら、夢に落ちた。
――そして。
「目が覚めたら、知らない女の子が一緒に寝ているのはどういう事なのだろうか」
ぱちり、と。
お昼寝から目を覚まして、最初に感じたのはひんやりとした感覚と、腕に感じる微かな重み。
謎の違和感に視線を向ければ、私の腕を枕に眠る少女が一人。
すやすやと寝息を立てては気持ち良さそうに眠る小さな女の子。
完全に知らない子なのだが、どこから入ってきたのか。
神殿の関係者なのかもしれないが、それはそれで警備とかどうなっているんだろう。
向き合うように体勢を変えて、布団から腕を出して女の子の頬を突っついてみる。
「うにに勝るとも劣らないもちもちっぷりだね」
人とは思えない程の、つるつるぷにぷにもちもちお肌である。
ふうむ、と観察してみるも、如何せん近いし、布団で全身は見えないのだが。
おそらく身長は私より低い、たぶんみそぎちゃんくらいだろうか。
気になるのは、頭の両脇から垂れるウサギの耳と、私にもついている羊の角。
この世界、獣人のハーフとか、存在しているのだろうかなどと考えながら、ほっぺぷにぷにを続行する。
もぞり。
「……おはよう?」
「……?」
ぷにぷにし過ぎたのか、身動いだ少女の瞼が開く。
思わずそう声を掛けてみるも、返事は無く。
こてり、と。首をかしげた女の子はじっと私を見つめ……そのまま、私の胸に顔を埋めて抱きついて。
随分と積極的な子である。
「えぇと……?」
言葉を放つことなく、すりすりと頬擦りをする女の子。
開かれた瞳はどこか既視感を覚える青と赤のオッドアイ。
わりとボリュームのある後ろ髪に、ツインテールの組み合わせ。
ツーサイドアップと言う奴だねと、そこまで思い至ってから先程の既視感が解決した。
「そういえば、メリアリスさんも青と赤のオッドアイで、ツーサイドアップだったね」
「……?」
そう口にすれば、何かに反応したのか女の子が顔を上げて私を見る。
ふむ……よくよく見れば、顔立ちもメリアリスさんに似ているような気がするね。
というか、写真で見た昔の私の面影すらあるように見えるのだがしかし。
なんにせよ、いつまでもベッドでごろごろしている訳にもいかないので、少女の身体を離して身体を起こし、ベッドに座る。
「……?」
「……うん、うん?」
身体を起こして初めて、違和感が無いと言う違和感に気づいた。
私は、どうやって腕枕をしながらこの子のほっぺをぷにぷにしていたのだろうか、と。
私にならって身体を起こした女の子はやはり小さくて。
腰より長いボリュームのあるウェーブヘアーに、ツインテール。
赤と青のオッドアイで、眠たげな眼差して私を見上げている。
全体的に色素の薄い肌に、白とも言えない、クリーム色の髪に、同じ色の垂れたうさみみに羊の角である。
なぜか全裸なのは置いておこう。
「腕が……ある?」
「……?」
少女が枕にしていた腕が、左腕が、そこにあった。
ぐー、ぱーと順に動かし、感覚を確かめてみる。
若干の反応の悪さがあるものの、私の意思通りに動く腕。
袖を捲りあげてみると、スヴィータが巻いた布は無くて。
代わりに……無くなった腕の先に何かを被せたような波紋に見える痕がある。
義手と言うには、感覚とかがそのまんま自分の腕なのだがね。
「……!」
くいくいと少女が裾を引っ張りアピールする。
そちらに視線を向ければふんすと鼻から息を噴き出す無表情な女の子が一人。
ぽわぽわとした印象を受けるその子が褒めろとばかりに胸を張って、私を見上げていた。
「まさか……これ、君がやったのかい?」
「……!」
表情は変わらないまま頷き、身体全体で喜びを表現する不思議な女の子。
今までの流れの割りに、またこの子も神様の関係者なのだろうかと思いつつ、改めて左の肘から先を確かめる。
実際に動く、つい数時間前まで無かった腕に首を傾げながら、右手で左手に触れてみる。
……ひんやりと冷たくて、血が通っているようには思えない温度で。
そして何よりも、触った感触がぷにぷにしていて、柔らかい。
この子の肌に触れた時と同じような感触だった。
「君は何者なのかな」
「……?」
相変わらず一言も喋らない女の子に問うてみるも、少女は首を傾げるだけで。
どうやら、話さないのではなく、話せないのかと当たりをつけて、そう問い直せばこくりと一度頷いて。
予想が的中したのはいいのだけれど、だからと言って事態が解決する訳でもなく。
ベッド脇に移動し腰かけた私と、いそいそと隣に並んで座り私に身体を擦り寄せる女の子。
触れた少女の身体はひんやりと冷たくて、この左腕と同じように、血が通っている温度では無くて。
この子は一体何者なのかとか、どうして一緒に寝ていたのだろうかとか。
少なくとも人間……獣人ではなさそうな、けれども全く害意を感じない不思議な少女。
「名前はなあに?」
「……」
そう問うて、首を振って否定を示される。
名前が無い、と言う事なのだろうか。
おもむろに身体の向きを変えて、私の膝の上に乗って抱き合う形で収まる女の子。
どうにかして意思疏通がしたいのだけれど、筆談とか可能だろうか。
ダイアリーを呼び出して、頁を捲る。
捲ろうとしたところで、視界にとても久しぶりに思えるシステムインフォメーションが表示された。
『モンスター:ハイハミをテイムしました。名前を付けてください』
「……ええと」
「……?」
全く、記憶にないのだけれども。
しかも、テイムしますかとかではなく、既にテイムしたから名前をつけろと申すのか、システムさん。
私を見上げて首を傾げる女の子と見合って、同じように首を傾げてみる。
流れ的に目の前のこの子が、そのハイハミとか言うモンスターなのだろうけども。
全く情報がなさすぎて、スピリアーズの有り難みを改めて実感する。
ハイハミって、なんだろう?
「……名前、欲しいの?」
「……!」
こくこくと何度も頷く女の子。
神様関連なら出て来て説明して欲しいのだけれど、どうしたものか。
何故か私とメリアリスさんを足して割って色々と小さくしたような不思議な女の子。
メリアリスさん関連なら、彼女に聞けばまた何かわかるかもしれないし、ただの偶然かもしれない。
なんにせよ、記憶には無いがテイムしてしまったと言うのなら、何か名前を考えてあげるのが努めではあろうか。
ふむ、と。
左腕を伸ばして少女の頭を撫でてみれば、嬉しそうに眼を細めてくれる。
どうにも、保護欲をそそられてしまうのは私が女性故か、やけに私に似ているからなのか。
「そうだなあ……それじゃあ」
「ミリア! ここにいたのーっ!」
「禊ちゃん、ミラちゃんはまだ寝てるから!」
「……ミリア?」
「……!」
『ハイハミの名前をミリアに決定しました』
私の言葉を中断させて乱入してきたみそぎちゃんと、それを追いかけて寝室に現れたメリアリスさん。
みそぎちゃんが口にした名前を反復して口にすれば、そのまま決定されてしまった少女の名前。
先程よりも激しくすりすりを始めた不思議な女の子……ミリアの頭を撫でながら。
「みそぎちゃん、メリアリスさん、説明頼める?」
「みそぎの妹なの、ミラママ、メリアママ!」
「その子の目的、やっぱりミラちゃんだったんですか……私もよくわかってないんですけど、ええ。もう少しで、ノワイエ様が来ると思います」
やっぱり、本人を前にして確信したけれど。
この子、私とメリアリスさんにそっくりなんだよね……隠し子?
またなんか増えました




