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インして目覚めて低反発

あらすじ

王都を攻めてきたアンデット軍団。

なんやかんやでボスを倒して帰宅して。

暫くぶりのログインです。






 さて、前回ログアウトしてからだいぶ時間を空けてのログインになるのかな。

 現実の方で急用が出来て、一週間ほどログイン出来ずにいたから、ゲームの中では約二十一日ほど経っている計算になる。

 久しぶりのログイン処理を終えて暗転、少し待てば背中を柔らかい感触が包んだ。


『うーにー?』

「うーにー?」

『う?』


 聞きなれない声が最初に届いた。

 瞼を開くとそこにいたのは……なんだろう?

 のっぺりとした表情の、それとなく愛嬌のある二つの目と、にやけているように見える(おそらく)口をもつ紫色の何かと目が合った。

 三十センチくらいに見えるやや楕円形の球体に小さな丸い目と口、体中に棘のような物が生えている謎の物体が私を見ていた。

 なんだろうこれ。


『にー?』

「おお、もちもちしてる……どちら様かな?」

『うに?』


 寝っ転がったまま両手を伸ばして捕まえてみる。

 私の手が近付いた場所の棘が引っ込んで、そのまま両手で掴む事が出来たのだが、なんというか絶妙な低反発具合でさわり心地が良い。

 枕にしたら良く眠れそうな感じである。


「メサル、ティム」

『ほえ? ミラちゃん、起きたのっ!』

『おはようございます、ミラ様! ……なんですか、その珍妙な生き物は』


 上体を起こし、名前を呼ぶ。

 私の呼び掛けに応えるように胸元から二人のスピリアが飛び出して、光の軌跡を残しながら宙に舞い出でる。

 私の体感では1週間ぶりだけど、彼女らは二十一日ぶりになるからか心なしかテンションが高いね。

 飛び出すなり私の肩に飛んできたメサルとティム、メサルは私が手にしている不思議生物に気付いたが、彼女の知識にもこの生物の情報は無いらしい。


『うーにー』

「メサルでもわからないの?」

『はい……少なくとも、私の知識にはございませんね』

『なんか可愛いーね!』

『ぴゃー!』

「おや、おはようサビク。いい子にして……なんか育ってる?」

『ぴ!』


 ぴょんと私の膝の上に飛び込んで来たのは小さな黒い蛇。

 三十センチ程の体長だった気がするが、なんか十センチほど成長していた。

 にょろにょろと私の身体を器用に登り、首に巻き付いて満足そうに一声鳴いた。


『うっ!』


 ぴょこんと紫色の不思議生物が私の手から脱出し、ベッドの上に着地する。

 体中から生えている棘のような物を伸ばし、足のように動かして見た目に反して結構な速度で部屋の扉まで移動しこちらに振り返った。

 どうやら着いて来いと言っているらしい。


「……敵、ではないよね?」

『おそらくは。敵性生物ならば、そもそも聖区へ侵入した時点でノワイエが気付くかと』

『サビクちゃん、あの子の事知ってるー?』

『ぴ?』

「ノアさんに聞けばわかるかな?」


 ベッドから降りて、不思議生物に促されるまま自室方面の扉へ向かう。

 扉を空けてやろうとしたら、不思議生物は扉をすり抜けるようにその姿を消してしまう。

 確かにこの手で触れた感触はあったのだけれど、さらに不思議が深まる生き物だね。

 追いかけるように扉を開く。


 めっちゃいた。


『うにー』

『う?』

『にー』

『うにー?』

『う!』

『うーにー』

『うにうに』

『うにー』


 部屋中に不思議生物が居た。

 私の足元の奴が珍妙な鳴き声をあげると部屋の全ての不思議生物がこちらに気付き、各々していた事を止めてわらわらと集まって来た。

 うにうに言ってる不思議生物が目の前の床に並び、数えたところ十五匹(足元の奴含む)

 棘を器用に使って地面を歩いたり、転がったり、ぴょんぴょん跳ねたりしながら私の前に勢揃いしている。

 紫色で丸くて棘が生えてる生物で、うにうに鳴いている……言われて見れば、雲丹に見えなくもないけどあれは海産物であって陸上を動き回ったりはしないと思う。

 不思議生物である。


「……ティム、翻訳とか出来ない?」

『流石にわかんないよー』

『この数が居て誰にも気付かれないというのは、どういうことなのでしょうか。少なくともモンスターではないようですが』

『ぴ!』

『サビクちゃんがわかるってー』

『うにー』

「えーと、じゃあサビク、ティム、通訳よろしく?」

『任せてー』

『ぴっ!』

『う!』


 という訳で、この不思議生物の言葉がわかると言うサビクの言葉をティムに通訳してもらおう。

 サビクは少しお喋り出来るようにはなったが、長文を喋ったりはまだ難しい様子。

 足元にいる奴が代表して受け答えをするようで、残りの不思議生物達はまた部屋中へ散らばっていった。


 ……どうやら掃除をしたり料理をしたりしていたらしい。

 いや、雲丹が掃除や料理してるのってだいぶシュールな絵面だね。



『そういえば、今日はスヴィータ様はいらっしゃらないのですか、ミラ様?』

「ああ、スヴィータは今日はお休みというか、用事があるらしくてこっちには来ないよ。今日はなんと私一人だね」

『では、本日のご予定は?』

「どこか人気の無いところで、精霊化とかの増えたスキルの検証かな?」

『かしこまりました』


 ティムとサビクが不思議生物と話をしている間に、部屋のソファに移動してからメサルと今日の予定を話す。

 詩乃さんは現実の方の仕事で今日はログインしなくて、とーまくんも同じくインしないらしい。

 アリサは時間があったらログインすると言っていたけど、彼女は彼女で忙しいだろうしゲーム内時間での今日の内には間に合わないだろう。


『うにー』


 不思議生物が温めたティーカップと紅茶の入ったティーポットを運んで来たのには突っ込むべきなのだろうか。

 頭(?)の上にトレーを乗せて、棘で支えて運んでいる。

 テーブルに置かれたので私の為に用意してくれたのだろうから、とりあえず飲んでみた。

 普通に美味しかった。

 不思議生物の不思議がまた増えたね。



「ミラちゃん、入るわね」


 コンコンと部屋の扉がノックされて、そのまま開く。

 入ってきたのはノアさんで、ソファに腰かけて紅茶を手にした私と目が合って固まった。

 なんというか、信じられない物を見たような顔で、ぷるぷる震え始めている。

 うん、二十一日ぶりだもんね。

 たぶん、毎日のように様子を見に来ていたのだろう、返事が無いとわかっていても声をかけてから入ってくるのはノアさんらしい。

『にー』

 不思議生物がティーカップの追加を持ってきた。気が利くね、この不思議生物。

 ノアさんの眼が物凄い勢いで輝いた……気がした。


「ミラちゃん、起きてたの!」

「うん、おはようお母様」

「……ええ、ええ。おはよう、ミラちゃん。お寝坊さんなんだから」


 たっぷり数秒してから、ノアさんが再起動。

 部屋に入り、若干勢い任せに扉を閉めてから私に駆け寄って来る。

 テーブルにティーカップを置いて、ソファから腰を上げる。

 飛び込んでくるノアさんを受け止めて、いつものように顔が埋まる。


『なーんか、すごいことに、なってる、ねー?』


 ふわりと私の耳元にシェラタンが飛んできて、部屋を見渡すように身体を回転させる。

 ちらりと寝室への扉の方に視線をやるも、サビク達はまだ話をしているようだ。

 部屋のキッチンからなにやら甘い匂いが漂って来ているのだが、ケーキか何か焼いているのだろうか。

 ……うにが?



「お母様、お母様」

「もう少し、もう少しだけ」

「や、それはいいんだけども。そこらじゅうにいる不思議生物が何か、わかる?」

「不思議生物?」


 熱烈なハグから解き放たれて、一息つく。

 ノアさんは私の問いに首を傾げてから周囲を見回し……そしてまた、固まった。

 この様子だとノアさんは知っているっぽい。


「……ミラちゃん、いつのまにこんなに集めたの?」

「や、起きたら沢山居たんだけど。何か悪いものなのかな?」

「いいえ、むしろ真逆なのだけれど。とりあえず座りましょう」

「うん……うん?」


 ノアさんがソファに腰を下ろし、隣に座ろうとした私のお尻はなぜかノアさんの膝の上に。

 後ろから抱くように固定されて、ノアさんの顎が私の頭の上に乗った。

 解せぬ。


『うにー』


 不思議生物がどうやって作ったのかよくわからないが見事なシフォンケーキの乗ったトレーを運んできて、テーブルの上に置いて行った。

 等分に切り分けられて、取り皿とフォークも添えられて。

 他の不思議生物が新しいカップとティーポットを持ってきて、交換する。


「ぶらうにーがこんなに居るなんて、ミラちゃん、何をしたの?」

「……ぶらうにー?」

「ええ、ぶらうにー。家に憑く妖精。家事をしたり、家畜の世話をしたり、憑いた家は栄えると言われているわね」


 ブラウニーってあれじゃないのかな。

 スコットランド辺りの伝説上の妖精だよね。

 私の知識の中では民家に住み着く茶色のボロを纏った髭もじゃの小人だったような気がするんだけど。

 茶色のボロの色からブラウニー……茶色い奴ってのが名前の由来だったっけ。


『うにー』

「ぶら、うにー……うに?」

『に?』


 近くにいた一匹に手招きすればちょこちょこと近寄って来たので手を伸ばしてみると、ぴょんと跳び跳ねて私の膝の上に。

 触ろうとすればその付近の棘が引っ込み、もっちり感触が手のひらを包む。


「起きたら居たのよね?」

「うん」

「私は毎日部屋に来てたのだけど、この様子じゃ随分前から住み着いていたみたいね。メイドが毎日掃除してたにも関わらず今まで報告が無かったのだけど、こうやって姿を見せているのはミラちゃんが起きたからなのかしら」

「そうなのかい?」

『にー』


 ぶらうにーを持ち上げて目線を合わせて問いかけてみる。

 頭上にクエスチョンマークを実際に目に見えるように浮かべて、一声鳴いた。

 どうなってるんだろうこれ。


「普通は一家に一匹とか二匹なんだけど、これ何匹いるのかしら?」

「さっき数えた時は十五匹だったよ」

「ぶらうにーが十五匹。オウルに伝えたらショック死しそうね」

「そこまでなんだ」

「そこまでなのよ」


 不思議生物改めぶらうにーが用意してくれたケーキを食みつつ観察する。

 箒で掃除するぶらうにーやらポーションを作るぶらうにーやら料理をするぶらうにー。

 特に何もせずにごろごろしているうにもいるが、休憩中か何かなのだろうか。


『ミラちゃーん、お話終わったよー』

『ぴー!』

『うにー』


 ティムを筆頭にサビクとリーダーぶらうにー(仮称)がやって来た。

 対面のソファに飛び乗ったリーダーぶらうにーとサビク。

 ティムが私の肩の上に乗っかり、メサルが反対側の肩に移動する。

 いつものポジションである。


「それで、どうだった、ティム?」

『えっとねー。前に住んでた場所はあったんだけど、そのおうちのご主人様がいなくなったから、ご主人様と同じ魔力の波長を感じたミラちゃんのとこに来たんだって!』

『ぴ!』


 うん、どういうことだろう?


 ぶらうにー達は元々住んでいた場所はあったけどそこの家主がいなくなって、同じ魔力の波長を感じた私の所へ来た?


 ティムから告げられた言葉の心当たりを探す。

 記憶を遡り、思い出して行く。

 うん、全く心当たりが無いのだけれど、また何かのイベントなのだろうか?


「そのご主人様の名前とかって、わかる?」

『サビクちゃん、聞いてみてー』

『ぴー? ぴ!』

『うにー』

『ぴぴっ!』


 ティムとサビクとぶらうにー達がやりとりを終えるのを待つ。

 ノアさんはただ様子を伺っているだけで、口を出すつもりはないようだ。

 というか、私の髪に顔を埋めて匂いを嗅ぐのはやめていただきたいのである。


『えっとね、れきしふぁー、だって!』

『う!』

『ぴ!』


 ……頭を抱えたかったが抱えられてるのでできなかった。

 また一悶着というか、一波乱ありそうな予感がするね。











 


うにですよろしくおねがいします

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