第二十四話 指導〜ルリィ視点〜
side〜ルリィ〜
ダリアとコウさんの戦いを目にして、私はこう思った。ーー羨ましいと。コウさんとまともに打ち合える強さが、コウさんに食いついていける強さが。
悔しかった。なぜ私じゃなく、ダリアなんだろう。なぜ私は強くないんだろう。なぜ私はあの場所にいないのだろう。
そして、なぜ私は悔しいと思うのだろう。悔しいと感じるということは、負けを認めるということ。負けなんて認めたくない、まだ負けていない。
それなのになぜ、こんなにも悔しいのだろう。悔しいと思うことが悔しかった。負けを認めてしまう私の弱さが悔しかった。
「二人とも、突っ立ってねぇでかかって来い」
ダリアを伸したコウさんが、私とカルミアに呼びかける。ただそれだけのことで、自己嫌悪の念から思考が戻ってきた。
思わず笑みが零れる。まったく、自分の単純さが嫌になる。好きな人の声一つで、あれだけ強かった自己嫌悪から持ち直すなんて。
いや、これは好きなんてものじゃないだろう。恋愛感情なんてものを通り越して、私はコウさんに依存している。
だけど、悪い気はしない。コウさんになら単純でもいいと思えるなんて、本当に恋は恐ろしい。
「行きます!」
短剣を逆手から順手に構えてコウさんに右から切りかかる。だけど、踏み込みも何もなっていない一撃なんて、コウさんには通用しない。大太刀で軽く弾かれた。
技術も何も持っていない私は、踏み込みが甘いなんて言われても、それをなすものを持っていない。だから、コウさんの力を利用する。
「せいっ!」
弾かれた力を利用して回り、回った勢いのままコウさんに切りかかる。コウさんはその一撃を弾かずに受け止め、鍔迫り合いの状態になった。
「やるな」
えっ?なに?今褒められた?
耳元で囁かれた言葉に、私は一瞬だけきょとんとする。だけど、その一瞬が行けなかった。カクンッと、膝から崩れ落ちる。何をされたのかわからなかったけど、いつの間にか大太刀を納めた右手でなにかされたのだろうな、ということだけはわかった。
そして、視線の先に倒れている、安らかな顔をしたダリアを見つめる。
「絶対に、負けない」
さっきは負けを認めてしまったけど、これからは絶対に負けない。気を失っているダリアにこの思いは届かないけど、口に出して伝えたかった。
そして、私はダリア同様意識を手放した。
もうそこには、自己嫌悪はなかった。




