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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第二章 水の洞窟 沈む真実と断罪の継承

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49.水の洞窟①


 ゆっくりと休んで、翌朝、ルヴィニの案内で洞窟へと向かう。

 洞窟内は鍾乳洞のような中は独特の空気がある。

 

「つめたっ」


 ひんやりとした空気、ポタっと天井からつむじに向かって水が落ちてきた。

 洞窟内はそこら中に水たまりが出来ており、濡れた岩は滑りそう。


 入口から地下の方へとずっと続いている道をまっすぐに進んでいくと開けた場所へとたどり着く。


 天井までもかなりの高さがあるが、光が差し込んでいて明るい。

 奥まで見渡せるが先に進む道がなく広々とした空間、中央には池がある構造だ。


 ただ、空気がどんよりと重く、目を凝らすと靄が黒く濁り、穢れが発生している。


「アイオ。魔獣が大量にいるから油断はしないように。ミオは判断任せるけど、まずいときは結界ね」

「はい」

「わかった」


 先頭にルヴィニ、アイオ様と私が後ろからついていく。

 戦闘能力が低いので邪魔しないように後ろに控える。


「何あれ?」


 洞窟内に穢れが充満していて、群れを成す魔獣は入口周辺でも数十体いる。


 巨大蛙型の魔獣が多い。

 他にはイモリとかカニとか水辺で生きる生き物たちが巨大化し黒ずんだ魔獣となっている。


「魔獣でしょ」

「うん……そうだけど」


 洞窟内の空気は穢れてはいる。ただ、それ以上に魔獣たちはゲームでも中盤から終盤に出てくるレベルに見える。空気以外にも、他に穢れが広がる何かがあるのだろうか。


「じゃあ、いってくるね」


 驚いている私を気にせず、ルヴィニが宣言と共に駆け出す。

 一瞬で、こちらに向かってきたカエル2体を切り伏せる。

 そのまま、群れに走っていくルヴィニは生き生きとしている。


 蛙だけてなく、固そうなカニの魔獣も一撃で倒していく。


 地面もぬかるんでいて、戦いずらいはずだけど、そんなことは関係ないらしい。


「つよいっ」

「あの人も大概おかしいからね」


 アイオ様が苦笑している。

 たしかに。ストレス発散とばかりに、ルヴィニは一人で、魔獣の群れをものの数分で近くにいた魔獣を倒してしまった。


 全てが一掃され、危険がないことを確認して、フロア全体の穢れを祓うために杖に魔力を込める。


「浄化!」

「どれくらいかかる?」

「……多分、一時間とか。穢れの状態はそこまでひどくないけど、広いから」

「構わないよ。昨日も倒したのに、復活してるから、帰りのためにも保険はかけておきたいしね」


 昨日も減らして、この数が復活しているなら、帰りにも復活してるだろう。

 安全確保が第一優先。浄化は必須かな。


「それと、この先のフロアに行く方法がわからないんだよね」

「あ、うん。それはギミックがあるから、解いたら進めるけど……」


 ここの仕掛けは中央の池から四方の空になっている池へと水路を開き、中央の池を空にして、現れるスイッチを押すだけ。

 現れたスイッチを押すと、奥へと繋がる洞窟への入口を隠している岩が壊れる。


「わかった。じゃあ、アイオ、調べに行くよ。魔獣も全て倒してくるね」


 私が知っているのはルヴィニも承知しているだろう。

 それでもルヴィニは私に聞いてこなかったなら自分達で解くのだろう。


「アレが壊れるのは結構怖いけどね」


 ちらっと、奥にある大岩に視線を送る。ゲームでの仕掛けなので、実際に、あの大きな岩が壊れるのかとは疑問に思う。


 集中して、周囲の浄化をしていると、水の流れる音が聞こえてきた。

 中央の池から東側の池への水路を開いて水を流している。


 ルヴィニなら仕掛けに気付いて、同時に流すことも思いつくだろう。



 しばらくは、水が流れる音が聞こえていたが、ぴしっぴしっという今までにない音が聞こえ、顔を上げる。


 同時に轟音が響いた。


 ズドーーーーン


 轟音は大岩が割れて地面に落ちた音だったが、その衝撃に地面が揺れた。

 立っていられない揺れに、座り込む。


 ドッドッドッという大きな音と共に、壁の一部となっていた大岩が破壊され、中心にいるルヴィニ達に水が押し寄せてきている。


「あっ、うわっ、地震がっ」


 ルヴィニとアイオ様が池から急いで高台のあるこっちに走って向かってきている。


 私が立っていられないくらいに、激しい揺れだ。

 それでも座っていると揺れはマシに感じる。

 周囲に倒れてきそうな物も無いことを確認し、少し落ち着いてきた


 慌てて、二人を確認する。

 二人は必死の形相で走っている……いや、ルヴィニはよく見たら笑っている。

 危険を楽しんでいるのではなく、周囲を確認して、逃げ込める場所を指示している。状況を把握した上で不安にさせないように笑っているのだろう。


「ルヴィニ!」

「結界頼める!?」


 中央の位置から、大岩があった場所までは距離はあるけど、水の流れは速い。

 ルヴィニだけでなく、アイオ様も身体強化をして、体に黒い光を纏って、必死に走っている。あれはまずい。


 ルヴィニの声に慌てて、立ち上がれないまま、結界を張るために杖を構える。


「止まって! 結界っ!」


 二人を包むように結界を発動させた瞬間、ルヴィニと視線が合い、頷いたのが見えた。

 ただ、すぐに二人の姿は見えなくなってしまう。


「大丈夫、無事なはずっ」


 魔力を込めて、激しく波がぶつかることで結界が壊れないようにと祈りを込め続ける。これが壊れれば、二人は流されてしまい、かなり危険だ。


 時間にして、十数秒。

 大きな岩が向かっているのが見えた。


「まずいっ! ルヴィニっ!! 目の前に岩!! 逸らさないとまずい!」


 大きな岩の欠片が結界に向かっているのを視認する。

 あの岩が結界にぶつかれば、結界は壊れる!

 張り直す時間もない。


 ルヴィニがいるだろう方向に叫ぶ。

 その瞬間、結界を張っている場所から漆黒の槍が岩に向かって放たれ、岩の一部が破壊され、軌道がズレる。


 小さな欠片はそのまま結界に当たったが、衝撃が減り、壊れずに済んだ。



 一気に流れていった水がダンジョンの外へ流れて消え、彼らのくるぶし辺りの高さの水がゆっくりと川になって流れている。


「よかった……」


 結界は壊れず、二人はあの濁流に飲まれなかった。

 ほっとしつつ、立ち上がろうにも腰が抜けていることに気付いた。


 今更、手が震え始める。危なかった。


 ルヴィニが手で合図をしてきたので、結界を解くと二人が高台へと戻ってきた。


「えっと、大丈夫?」

「知ってたでしょ?」

「うん、まあ……先に進むためには水路を開けないとで……事前に岩とかを用意して裏に隠れるとかしないと、押し流される危険があった」


 ぐに~っと頬を掴んで横に伸ばされる。地味に痛い。

 ちらっとアイオ様に視線を送り助けを求めるが、「自業自得」と返ってきた。


 説明しなかったことを怒っている。

 でも、ルヴィニはわざとやったと思う。私の知識、アイオ様は嫌がってるのを知っていて、どうなるかを実体験させた気がする。


 だけど――それでも、私も悪かった。

 ゲームだと、ダンジョンの外に流されて、再度入り直し。それだけだ。


 現実ではそうはいかない。

 仮に、岩で流さを止めるというけど、岩にぶつかるだけで、危険が増す。水をせき止めても乗り越えて水は周囲に広がるだけだ。

 自分の考えが甘かったことを痛感し、手のひらに爪を食い込ませる。


 あの時の漆黒の槍は、アイオ様の魔法だろう。あれが無かったら、結界は割れて……死んでいたかもしれない。


「ごめん、甘く見てた……」

「流されて死ぬと思ったよ! 怖かったんだから!」


 私の謝罪にアイオ様が少し涙目になって、拳も震えている。


「流石にヒヤッとしたけどね。無事でよかったよ」


 ルヴィニは私が結界を張ったことに気付いて、すぐにアイオ様を抱きかかえてしゃがみ、出来る限り、結界のドームを小さくするようにしてやり過ごしていた。


 とっさの判断で、結界を大きく展開しないですんだことも、結界が無事に壊れなかった理由ではあると思う。

 冷静な判断からも、本当にヒヤッとしたのか疑ってしまう。


「で、ミオ。あれ、どうなってるの?」

「水路を塞ぐ岩が破壊されて、水路に溜まっていた水が全て流れ出て、ダンジョンの外に放出された。岩の後ろに隠れていた水路を進んでいけるよ」


 ルヴィニから頬が解放されたので、説明をする。

 

「この先、危険はある?」

「水中の魔獣が出るようになるから、水の中に引き込まれるとまずい。他のダンジョン内の仕組みについてはおいおい説明するよ」

「まだ、あるんだ……」

「よく、こんな場所に封印したよね」


 私は戦闘能力は低く、足手纏い。

 だからこそ、知識の部分はしっかりと活かす必要がある。


 さっきみたいに、危険に晒すようでは指揮官失格。いや、私は指揮官ではないのだけど。でも、しっかりと危険を認識し、対策を練るのが私の役割だ。


「とりあえず、浄化は続けるけど、この先を説明しておくよ」


 次の広間まで、水路を歩くことになるけど――今度こそ、危険が無いようにしっかりと情報を共有しよう。


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