47.二手に別れて出発
「う~ん」
まだ、朝早いせいか、護衛の人達しか外で作業していない。
ただ、その人達がちらちらと私を見ているのが気になる。
ルヴィニもアイオ様も戻ってこないし、カライスちゃんはまだ寝てるのか。
きょろきょろと周囲を確認していると、声がかかった。
「ミオ! おはよう」
「サフィロス、おはよう」
にこにこしたサフィロスがぎゅっと抱き着いてきたので、ぽんぽんと背中を叩いておく。
友人としてのサフィロスは無邪気というか、距離感が近いけど、わりとほっとする。
ルヴィニとはまた違った安心感がある。
「よし! 充電完了」
「いや、何それ?」
「調査を終えて帰ったら、君がいなかったからな。宿でおかえりと言ってくれるのを楽しみにしていたんだ」
「それは、ごめん。サフィロスはその、ここにいていいの?」
「うん? 何かあるのか?」
ルヴィニとアイオ様を含め、行程の確認をしているのかなと思ったんだけど。
サフィロスはいいのだろうか?
「いや、ルヴィニと私が先行するって話をしに、神子様のところに行ったみたいだから」
「ああ。カライスが結構疲れが出てるから、ルヴィニは置いていきたいらしいな。危険が伴う場所に、何人も足手まといはつれていけないのもわかるんだが」
うん。それ、足手纏いに私もカウントされてる。
それでも、私を外さないのは、場所を把握しているからか。
「のんびりしていられない。神殿の所業を暴露するためにも、神器を取りに行き、戦力を強化をする必要があるからな」
サフィロスの顔が切り替わる。
真剣な表情になった。サフィロスの青い瞳が深い海のように引き込まれそうでゾクッとする。
「何かあった? 神器取りに行くの、消極的だと思ってたんだけど」
「ああ……神殿に忍び込んでな」
「え?」
がばっと顔を上げて、サフィロスを見ると、困ったように頬を掻いた。
「危ないことをする前に撤退したんだがな。今のままでは、まずい。戦力の補強が必要だ」
サフィロスの端麗な顔に似合わない歪んだ笑みが浮かぶ。
本気で、戦力を求めていることがわかる。
「サフィロス。私の知る限り、戦力を一気に上げるなら、神器と聖獣の入手が手っ取り早い」
私の聖獣はオリオン。これは私が神に能力として願った。
ただ、この世界には元々聖獣がいて、気に入った人に自分の分身とも言える卵を与えてくれる。
まあ、なぜか、ここにランダム要素が加わっており、元の聖獣から全く異なる聖獣が生まれることになるのだけど。
「ふむ?」
「このまま、南へ向かう気はない?」
今の位置は、ショウドウから真っすぐ南へと進んだ場所。
南西に向かえばイーハンの町があり、さらに南南西に向かうとシャーナンの町へとたどり着く。
「水の神器はシャーナンの地から南。風の大陸と水の大陸の間にある島だぜ?」
「知ってる。神器は、私とルヴィニ。あと、本人が了承するなら、アイオ様がいいかな。3人いれば何とかなると思う」
「それで?」
私を見据える冷たい瞳に、苦笑する。
今、彼は友人ではない。神子候補という公の立場で判断をしているのだろう。
「聖獣は風の大陸と水の大陸が陸地で繋がっていた岬。そこに水の聖獣がいる。神器の入手は水の民である必要はないけど……」
「聖獣は水の民である必要がある」
私の言葉を続けたサフィロスに頷きを返す。
「実際、聖獣に認められるための試練を受ける必要はあるけど、一人一体手に入るのを考えれば、戦力増強になるよ」
「君のもつ聖獣のように?」
「ふふんっ、うちのオリオンは移動力に優れてる上に、戦闘補助も可能だからね」
「なるほど、優秀だな!」
「そう! 可愛いしね」
カライスちゃんのイベントで、入手する聖獣。
聖獣はランダム要素があるから、どの聖獣になるかはわからない。
ただ、基本的には強い。意志を持って自分でも行動するから、戦力は単純に1.5~2倍になると思う。戦力増強と言うなら、悪くないと思う。
「むぅ、悩ましいな」
「どうかな?」
「水の聖獣に会っても、君やルヴィニ、アイオは意味がない」
「そうなるね。まあ、神器を入手してからでもいいんだろうけど」
「いや。時間的にそんなに不在にするわけにもいかないからな」
サフィロスは納得したらしく、「少し話してくる」と言って去っていた。
また、暇になってしまったので、近くの茂みになっていたベリーの採取をしていると後ろから抱き着かれた。
「ミオ!」
「うわぁ!?」
カライスちゃんのタックルに危うく、茂みに顔からダイブするところだった。
「おはよう?」
「私とアイオ、どっちがいい?」
いきなり、何の話だ?
首を傾げるが、真剣な瞳をしているカライスちゃんに誤魔化すのはやめる。
「急にどうしたの?」
「二手に別れるなら、アイオと私、どっち?」
「ああ、そういうこと。う~ん」
カライスちゃんが聖獣に認められるのは5年後。
今、入手できるかは、正直わからない。サフィロスは多分、平気だろう。
「カライスちゃんが自信ないなら、私と一緒に行く?」
「どういう意味?」
カライスちゃんの怪訝そうな顔が返ってきた。
正直、カライスちゃんが来るならそれでも構わない。
「そのままだよ。神器を取りに行く要員は誰でもいいけど、聖獣に認められるのはその民である必要があるから。カライスちゃんは聖獣に会いにった方がいいと思ったけど、まだ、やめとく?」
私の問いに、カライスちゃんの可愛い顔が歪んだ。
そう言われてしまうと、私と一緒に行くとは宣言しにくいようだ。
じっと観察していると目を泳がせて、どうしようかと悩んでいる。
さらにその後ろには、ルヴィニが親指を立てて、合図をしている。
私とカライスちゃんがセットだと、ルヴィニが苦労するから避けたいというのはよくわかった。
複雑そうなのがアイオ様だ。カライスちゃんと行動したいなら、一緒に聖獣側でも問題ないと伝えるべきか。
「聖獣様、気にいられなかったどうするの?」
「今だめなら、また、何度もチャレンジすればいいんじゃないかな」
「そういうもの?」
「たぶんね」
ゲームと仕様が違う可能性はあるけど、いきなり殺そうとはしない。むしろ、穢れを嫌うから、傷つけるような行動はしないので危険は少ない。
認められるまで、何度も通うことだってできる。
「ミオの聖獣、見せて」
ぐっとお腹に力を入れて、意を決したようにカライスちゃんが願う。
ちらっとルヴィニとサフィロスに視線を送ると、構わないと頷いているので、オリオンを召喚する。
「きゅう?」
カライスちゃんの匂いを嗅いでいるオリオンの頭を少し戸惑いながら撫で始めた。
「どうする?」
「行ってくる! 私も、手に入れてくるから!」
「決まりだね。アイオはこっち。サフィロスとカライスは別行動ね」
「うん」
「はい」
「ミオ、気を付けてね」
「大丈夫。カライスちゃんも頑張ってね」
馬に乗り換えて、目指すは水の洞窟へ。




