17枚目・剣の道に生きるということ【泉美】②
読みやすさのため、内容を分割して調整しました。
文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。
作者:服を着た猫
あれは私がこっちの世界の高校に初めて登校した日の最後、ホームルームでのやり取りだ。
「・・・という訳で、連絡事項は以上です。日直さん」
マリア先生の言葉を聞いて、日直だった女の子が声を発した。
「起立・・・礼。
先生、さようなら」
「「「さようなら」」」
「はい、皆さんさようなら」
あいさつが終わると、みんなそれぞれ教室を出て行ったり、友達同士集まっておしゃべりをしたり、思い思いに過ごし始める。
急いで出て行った人たちは部活だろう。集まっているのは帰宅部かな?
そんな中、あいさつの後すぐに椅子に座った私の周りには、少し疲れた顔の泉水と、少しムスッとした表情の瑞希が集まっていた。
「お疲れさん」
「お疲れ様、問題児」
「お疲れー、泉水は部活行かなくていいの?」
「これから行くよ。少し話するぐらいは時間あるさ」
「そっか」
「・・・私は無視?」
相変わらず感情が伝わってこない声で、私を睨みつけながら瑞希が言った。
「自分勝手にすり寄ってきたくせに、こういう時は無視なんて、泉水と同じで自分勝手ね」
「だって、問題児って言われて、素直に返事する訳ないじゃん」
思わず元いた世界の瑞希にするみたいに対応しちゃって、心の中で「ヤバッ・・・」って思ったけど、瑞希の態度はいつも見ていた瑞希と変わらなかったので、大丈夫そう・・・かな?
「って言うか自分勝手にすり寄ってきたってどういう意味?」
あんまり問題なさそうだと思った私は、瑞希に質問返しした。
「その前に俺と同じで自分勝手ってなんだよ!」
「そのままの意味よ。
同じクラスになることを教えないどころか、勝手に親友だってバラして無理やり席替えするわ、教科書無いからって机くっつけてくるわ、無理やり見てくるわ、そういうところが自分勝手だっていうの!
分かった!?」
「おーい・・・俺のことは無視か~?」
泉水がなんか言ってるけど・・・無視無視。
「このクラスになるってことは私たちも知らなかったんだけど・・・他のことについては強引なところがあったと思うから、ごめんなさい」
「泉美まで無視かよ・・・」
なんか勝手に落ち込んでる泉水、さすがにかわいそうだから後でフォローしてあげよう。
とりあえず、今は瑞希に謝ることが一番大事。
だから、私は素直に頭を下げた。
「っ!・・・ぐぬぅ・・・フン!!」
私が頭を下げると、瑞希は鼻を鳴らしながらそっぽを向いてしまった。
たぶん、私が思ったよりも簡単に謝ったから、怒りのぶつけ時を失っちゃったみたい。
でも瑞希は、怒りをぶつけられなかったことに、さらに怒っちゃったみたいで、また私を睨みつけてきた。
「馬鹿正直に謝ればいいってもんじゃないのよ。少しは―――」
「皆倉さんはもう少し、素直になってもいいんじゃない?」
怒る瑞希に、その人は柔らかい口調で話しかけてきた。
一方、突然話しかけられた瑞希は、視線だけ後ろに向けると、その後いつもの仏頂面で面倒くさそうに振り返った。
「マリア先生・・・私はいつでも素直ですよ」
いつも無感情で話す瑞希には珍しく、呆れと面倒くささが混じったような口調で、マリア先生に反論する。
そんな声で言われたらさすがにマリア先生も、困っちゃうんじゃないかな・・・
って、一瞬心配したけど、さすが先生。マリア先生は先生らしく優しい口調で応えた。
「マイナスな言葉を言う素直だけじゃなくて、プラスな言葉でも素直になるべき、ってことだよ。
素直にならないと、いつか後悔するよ」
そういうマリア先生の顔が少し悲しく見えた。多分先生自身の経験から言ってるのかも・・・
だけど、そんなマリア先生の言葉に瑞希は、不満そうな顔で応えた。
「私はいつでも素直です!」
「・・・ごめんなさい。ワタシも先生だから小言が多くて」
睨みつけながら言ってくる瑞希に、さすがのマリア先生もオロオロしながら応える。
「先生だからって、私に意見しないでください。私は私の考えのもとで行動しているんです」
「それは・・・分かっているわ、分かるけど・・・ね」
困ったように笑いながら、マリア先生は話し続ける。
そんな先生に、瑞希はイラついてしまったのかも・・・怒鳴りつけるような声で瑞希は言った。
「まだ、何か言いたいんですか!?」
「いや、えっと・・・皆倉さんがちゃんと考えて行動しているならいいの。いいんだけど・・・」
困ったような、悲しそうな表情になってしまう先生・・・さすがに瑞希も言いすぎだと思う・・・
「ワタシなんだか年寄りっぽくなったなぁ~って、年かなぁ~」
そう言いながら、困ったような表情で笑うマリア先生は、右手を頬に当てると小さくため息をついた。
そんな先生を見て、私はさすがに瑞希に文句を言ってやろうと口を開きかけた。




