11枚目・剣の道に生きるということ③
小説の構成順番を直すために投稿し直しました。
2024年7月15日
服を着た猫
あの日の出来事を思い出した泉美は、再びムッとした感情が込み上げてきたのだろう、泉水を睨みつける目を更に鋭くする。
そんな2人の後ろでは演劇部の部員がそれぞれの役の仲間で集まり読み合わせなど自主練習に勤しんでいる。
2人が言い争っているのは演劇部が練習をしている体育館。
その体育館の一角で2人は主人公とヒロインとして読み合わせをしていた真っ最中だったのだ。
「結局、サブのヒロイン役ってことになっちゃうし・・・マリア先生もマリア先生だよ!!
まぁ、納得したのは私なんだけど・・・でもそうなるように誘導されちゃったっていうか、とにかく納得するのに時間がかかったんだから!!」
「それでそんなに怒ってたのかよ・・・まぁ、強引だったとは思うけどさ、結果的に―――」
「今怒ってるのは、そのことじゃない!!」
泉水の言葉を遮り、再び顔を寄せる泉美。
さすがに2度目の顔面ド・アップに、ビックリして泉水は後ろにのけぞった。
「だ、だから!近ぇって!!」
再び泉美の両肩を掴むと、泉水は引きはがすように泉美の肩を押した。
「部活のことでもないんだったら、何が気に入らねぇって言うんだよ!?」
「決まってるでしょ!?」
大声を上げる泉水に、泉美も思わず大声になりながら答えた。
「この前の剣道の地区大会だよ!!」
「剣道・・・そんなことで怒ってたのかよ」
「『そんなことで』ですって!?」
泉水の言葉が逆鱗に触れたのか、今まで見たことがないような怒り顔で泉美が叫んだ。
「アンタ悔しくない訳!?
地区大会優勝間違いなしって言われてたのに、団体戦1回戦負けだよ!1回戦負け!!
しかもあんな格下の相手に負けるって、しかも先輩たちに推薦されて大将任されたのに、その大将が1勝も出来ないなんて・・・」
「・・・調子悪かったんだよ」
「調子悪かったって何!?
確かに観客席から見てた時に動きがおかしいな?とは思ったけど、アンタだったらあんな相手片腕でも勝てるでしょ?
それなのに一本も取れずに負けるなんて、おかしいよ・・・その上個人戦もボロ負けだし・・・どうしちゃった訳!?」
眉をひそめながら聞いてくる泉美の顔を見ながら、泉水は黙り込んでしまう。
「泉水?」
「・・・調子が悪かっただけだ・・・」
苦しげな表情で、その一言が精いっぱいといった様子で言う泉水の姿に、泉美は言葉に詰まり黙ってしまう。
だが、しばらくしてバツが悪そうに顔を逸らせると、泉美は不満そうな声で言った。
「だとしても、みんなの・・・特に先輩たちの期待を受けて大将になったのに・・・あんなすぐ負けるなんて・・・
先輩たちに悪いと思わないの?」
「・・・そりゃ、俺だって悪いと思ってるさ」
「だったら何が何でも勝たなきゃ!地方大会を最後に先輩達は引退だったんだよ!
先輩たち最後の大会だったんだよ!
先輩たちの最後の花道飾るためにも優勝するべきだったのに一回戦負けって・・・」
「そんなこと分かってる!
分かってたけど・・・
実力を出し切れなかった・・・それだけの話だよ・・・」
泉水の言葉に、泉美はさらに険しい表情でまくし立てる。
「そんなの言い訳になると思ってる!?
水輝の血を引いてて、紫紺の髪を発現してるアンタが実力を出せなかったから負けても仕方ない?
そんな冗談通じるわけ無いでしょ!?」
怒り混じりの泉美の言葉に、大人しく言われるだけだった泉水も、流石に堪忍袋の緒が切れた。
「そこまで言うことないだろう!?
俺だって人間なんだ!失敗の一つや二つ普通にするさ!
それとも水輝の血を引いてるヤツは試合で負け無しなのか?負けちゃダメなのか?
じゃあ!お前は試合で絶対に負けないんだな!?」
「そんなこと言ってないでしょ!?
格下の相手にボロ負けしたのが情けないって言っただけじゃん!」
「だから、それは調子が悪かったって言ってるだろ!?」
「だから!そんな言い訳聴きたい訳じゃないって言ってるでしょ!?」
ヒートアップする2人の言い合い。
その様子にさすがに周りで練習をしていた演劇部員たちも何事かと、2人の近くに集まりだした。
「言い訳じゃなくて事実だって言ってんだろ!?
大体、誰のせい―――」
そこまで言いかけて、泉水は慌てて口をつぐむと横を向いた。
「『誰のせい』ですって!!」
慌てて口をつぐんだ泉水をジト目で睨みつけながら、泉美は問い詰めるように言った。
「一勝も出来なくて先輩たちに優勝を送れなかったのは、アンタのせいに決まってるでしょ!!」
「・・・・・ああそうだな、俺のせいだ・・・」
そうだ・・・俺のせいだ・・・
俺が泉美をこの世界に引きずり込んだせいで・・・
俺のせいで、泉美はあと5ヶ月もしないで死ぬんだ・・・




