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11枚目・剣の道に生きるということ②

小説の構成順番を直すために投稿し直しました。

2024年7月15日

服を着た猫

あれは私がこっちの世界の高校に初めて登校した日の最後、ホームルームでのやり取りだ。


「・・・という訳で、連絡事項は以上です。日直さん」


マリア先生の言葉を聞いて、日直だった女の子が声を発した。


「起立・・・礼。

先生、さようなら」

「「「さようなら」」」

「はい、皆さんさようなら」


あいさつが終わると、みんなそれぞれ教室を出て行ったり、友達同士集まっておしゃべりをしたり、思い思いに過ごし始める。

急いで出て行った人たちは部活だろう。集まっているのは帰宅部かな?

そんな中、あいさつの後すぐに椅子に座った私の周りには、少し疲れた顔の泉水と、少しムスッとした表情の瑞希が集まっていた。


「お疲れさん」

「お疲れ様、問題児」

「お疲れー、泉水は部活行かなくていいの?」

「これから行くよ。少し話するぐらいは時間あるさ」

「そっか」

「・・・私は無視?」


相変わらず感情が伝わってこない声で、私を睨みつけながら瑞希が言った。


「自分勝手にすり寄ってきたくせに、こういう時は無視なんて、泉水と同じで自分勝手ね」

「だって、問題児って言われて、素直に返事する訳ないじゃん」


思わず元居た世界の瑞希にするみたいに対応しちゃって、心の中で「ヤバッ・・・」って思ったけど、瑞希の態度はいつも見ていた瑞希と変わらなかったので、大丈夫そう・・・かな?


「って言うか自分勝手にすり寄ってきたってどういう意味?」


あんまり問題なさそうだと思った私は、瑞希に質問返しした。


「その前に俺と同じで自分勝手ってなんだよ!」

「そのままの意味よ。

同じクラスになることを教えないどころか、勝手に親友だってバラして無理やり席替えするわ、教科書無いからって机くっつけて無理やり見てくるわ、そういうところが自分勝手だっていうの!

分かった!?」

「おーい・・・俺のことは無視か~?」


泉水がなんか言ってるけど・・・無視無視。


「このクラスになるってことは私たちも知らなかったんだけど・・・他のことについては強引なところがあったと思うから、ごめんなさい」

「泉美まで無視かよ・・・」


なんか勝手に落ち込んでる泉水、さすがにかわいそうだから後でフォローしてあげよう。

とりあえず、今は泉美に謝ることが一番大事。

だから、私は素直に頭を下げた。


「っ!・・・ぐぬぅ・・・フン!!」


私が頭を下げると、瑞希は鼻を鳴らしながらそっぽを向いてしまった。

たぶん、私が思ったよりも簡単に謝ったから、怒りのぶつけ時を失っちゃったみたい。

でも瑞希は、怒りをぶつけられなかったことに、さらに怒っちゃったみたいで、また私を睨みつけてきた。


「馬鹿正直に謝ればいいってもんじゃないのよ。少しは―――」

皆倉(みなくら)さんはもう少し、素直になってもいいんじゃない?」


怒る瑞希に、その人は柔らかい口調で話しかけてきた。

一方、突然話しかけられた瑞希は、視線だけ後ろに向けると、その後いつもの仏頂面で面倒くさそうに振り返った。


「マリア先生・・・私はいつでも素直ですよ」


いつも無感情で話す瑞希には珍しく、呆れと面倒くささが混じったような口調で、マリア先生に反論する。

そんな声で言われたらさすがにマリア先生も、困っちゃうんじゃないかな・・・

って、一瞬心配したけど、さすが先生。マリア先生は先生らしく優しい口調で答えた。


「マイナスな言葉を言う素直だけじゃなくて、プラスな言葉でも素直になるべき、ってことだよ。

素直にならないと、いつか後悔するよ」


そういうマリア先生の顔が少し悲しく見えた。多分先生自身の経験から言ってるのかも・・・

だけど、そんなマリア先生の言葉に瑞希は、不満そうな顔で答えた。


「私はいつでも素直です!」

「・・・ごめんなさい。ワタシも先生だから小言が多くて」


睨みつけながら言ってくる瑞希に、さすがのマリア先生もオロオロしながら答える。


「先生だからって、私に意見しないでください。私は私の考えのもとで行動しているんです」

「それは・・・分かっているわ、分かるけど・・・ね」


困ったように笑いながら、マリア先生は話し続ける。

そんな先生に、瑞希はイラついてしまったのかも・・・怒鳴りつけるような声で瑞希は言った。


「まだ、何か言いたいんですか!?」

「いや、えっと・・・皆倉さんがちゃんと考えて行動しているならいいの。いいんだけど・・・」


困ったような、悲しそうな表情になってしまう先生・・・さすがに瑞希も言いすぎだと思う・・・


「ワタシなんだか年寄りっぽくなったなぁ~って、年かなぁ~」


そう言いながら、困ったような表情で笑うマリア先生は、右手を頬に当てると小さくため息をついた。

そんな先生を見て、私はさすがに瑞希に文句を言ってやろうと口を開こうとした。


その時だった。


「いやいや、先生。年寄りって・・・見た目そんなに若いのに冗談キツイっスよ」


苦笑いをしながら、軽い口調でマリア先生に話しかけたのは泉水だった。


「そ、そう見える?」

「当たり前じゃないですか。しわが目立つなら分かりますけど、お肌つるつるじゃないっスか。

まさか俗に言う美魔女なんて言わないでしょ?まぁ、先生の年齢聞いたことないですけど・・・っていうか先生って何歳なんですか?30歳くらいだと思ってるんですけど・・・」


その言葉に、私はカチーンときた。気づくと瑞希も同じ気持ちだったみたいで、私たちは同時に泉水を睨みつけた。


「泉水・・・女性に歳を聞くとか、ダメでしょ!」


これだからデリカシーの無い男は!!


「しかもチョコチョコ失礼なこと言うし、その上見た目で年齢決めつけるとか最低ね・・・土下座しなさい」


瑞希もゴミを見るような目で泉水を睨みつけながら言った。

いつもなら泉水をフォローするだろうけど、今はコイツの自業自得!!


「そこまでかよ!!」


私たち2人に睨まれ、泉水はあたふたと困り顔で答えた。

ちゃんと聞いて良いことと、悪いことを考えないからこうなるのよ!!

ほら、マリア先生も【クスッ】って笑って見てるじゃない!

傷ついたはずの先生にまで笑われるなんて、こんなダメな男だとは思ってなかったよ!!


「瑞希の言う通り土下座よ!」

「さあ、さっさとしなさい!!」

「い―――(けい)まで・・・ご、ごめんって!」


ちょっ!今名前言いそうになったでしょ!!ってそんなことはどうでもよくて!!

私たちに両手を合わせて、ワザとらしく謝ってくる泉水、謝る相手が違うでしょ!!


「「絶対に!!許さない!!」」


私と瑞希の声がキレイに重なって教室に響いた。

そんな私たち3人を、マリア先生はいつの間にか困ったような笑顔で見ていた。

さっきはニコニコ笑ってたのに、今は何でそんな困ったような顔で笑っているのかは謎だけど、今はそんなことは置いといて、泉水に土下座させる方が大事!



「そ、それより、マリア先生。

俺たちに話しかけてきたってことは、何か用があるんじゃないですか?」


私たちに睨まれたのが堪えたのか、あからさまに話を逸らせようとする泉水。そんなことで許すと思って!!・・・


「ん?

ああ・・・ええ」


・・・泉水の言葉に困ったような顔だったマリア先生が飛びついたみたいで、先生は笑顔になって話し始めた。

まったく・・・もう少しイジッてやろうと思ってたのに、残念。


「ちょっと水輝(すいき)さん(泉美の偽名が【水輝(すいき) (けい)】なので)に聞きたいことがあって、話しかけるタイミングを探してたの。

いいかしら?」

「あ・・・はい、何でしょう?」


何の話かと思えば私に話があったみたい。

とはいえ、水輝(すいき)さんって、呼ばれても実感湧かないなぁ~。

いつもは春野(はるの)さんだったし・・・

そんなことを考えていたせいで、思わず顔が曇ってたみたいで、口角が下がっていることを感じた私は、すぐに気持ちを切り替えて下がった口角を上げて笑顔にした。


「水輝さんは部活とかはどうするの?」

「えっと・・・『どうする?』とは?」


どういうことだろう?

頭の中にハテナが浮かぶ私に、マリア先生は笑顔で続けた。


「部活動するつもりはあるのかな?って・・・担任として生徒の希望は聞いておかないとね」

「うーん、部活動・・・」


どうしよう・・・部活動はしたいけど、剣道部も演劇部も今から入っても出来る事少なそうだし・・・

そもそも剣道部も演劇部もどっちもなんて選べないし、兼部したいですぅ~なんて言う訳にもいかないし・・・

そんなことを考えながら、私はしばらく考え込んで答えを出した。


「えっと・・・私は帰宅―――」

「それなら演劇部が良いんじゃないか?」


帰宅部でと言いかけた私の言葉を邪魔したのは泉水だった。


「ちょっ!!泉水!?」


驚く私を無視して、泉水は話を進めちゃう。


「いず―――蛍には台本の読み合わせを手伝ってもらってるんですよ」

「何勝っ―――!!」


また、名前言いかけたでしょ!!

ってそんなことは置いといて、何勝手なこと言ってんの!!って叫ぼうとしたら、泉水に手で口をふさがれた。


「余計なこと言わないで話合わせろって」

「モゴ・・・」


手でふさがれた口でウーっと唸ってみたけど、モゴって変な声になっちゃう。

このまま指噛んでやろうか!!

そんなことを考えてる私の横で、瑞希が小さくため息をついた。


「フーン、蛍に練習相手をねぇ~。

そう言えば家のお隣から、大きな声で男女の話し声が響いてくるなぁ~って思ってたけど、あなたそんなことしてたんだ」

「ま、まぁな」


大きな声で話声?

そんな大きな声で話をした覚えはないけど・・・ああ、そういうことか・・・

つまり瑞希は泉水の話に合わせてるって訳ね・・・

はぁ~・・・仕方ない、私も話を合わせてやるか。

私の口を押えている泉水の手を、トントンと手で叩きながら目で合図を送る。

すると、泉水もすぐに気づいたのか、すぐに手を放してくれた。


「そうなんです!セリフ合わせに付き合ってるんですよ~」

「なるほど・・・春野君の練習に水輝さんが・・・確かにそれなら演劇部に入ってもらうのも良いかも~」


瑞希の助言もあって、すっかり納得した様子のマリア先生は、小さく何度もうなずいてくれる。

そんな様子を見て、泉水は声を弾ませながら話を続ける。


「そうでしょ?

先生は演劇部の顧問だから話も早いだろうし」

「確かに!じゃあ水輝さんは演劇部に所属ってことにしましょう!!」

「えっ!?いや、ちょ!ちょっと待って!!」


話に合わせてるって決めたけど、なんか勝手に演劇部に入ることになってるけど!

それは初耳なんだけど!?


「なんか、面白いことになってきたわね・・・フフ」

「瑞希・・・」


まったく・・・他人事だと思って・・・

ニヒルに笑いながら言ってくる瑞希に、私はガックシと肩を落とす。

同時に勝手に話を進めちゃう泉水に怒りが湧いてくる!

そんな怒りに任せて睨みつけながら、私は小声で泉水に言った。


「どういうことか、後で説明してもらうからね!!」

「・・・ああ」


なんかこっちをチラッと見ただけで、泉水は適当に答えてきた。

その態度にちょっとイラっとしたから、もう少し文句を言ってやろうと思ったけど、そのことに気づいてないみたいでマリア先生が話を続けてしまう。


「そうだ!!せっかく演劇部に入ってもらうんだったらヒロインの【(はく)】として舞台に上がってもらうのはどうかな!

セリフはバッチリ覚えているだろうし!!」


はぁ!?ちょっと待って!!それは―――


「ですよね!!俺もそうお願いしようと思ってたんですよ!!」


泉水もちょっと―――


「じゃあ、決まりね!!」

「ちょ、ちょっと待ってください!!」


たまらず私は叫んだ。

話がどんどん進むから驚いて声が出なかったけど、これ以上黙って見てたらもっとすごいことになっちゃう!!

私は慌てて軌道修正しようと、叫ぶように言った。


「確かにヒロインをやる―――じゃなくて、本番でヒロインを演じるのは(まい)先輩のはずでしょ?

もうヒロイン役の人が居るのに、ヒロインを演じるなんて無理ですよ!!」


元の世界でヒロインをやることになってたって言いそうになった口を慌てて閉じて、必死に考えた言い訳を叫ぶと、2人は深刻な顔で考え込んでしまった。


「確かにそうだったわ。ヒロインは神条(かみじょう)さん(イズミ達の先輩である【神条(かみじょう) (まい)】のこと)だった、すっかり忘れてた」

「俺も忘れてました・・・

クソッ・・・」

「残念だけど・・・水輝さんにヒロインとして舞台に立ってもらうのは、諦めるしかないわねぇ~」


マリア先生はそう言うと、右手を頬に当てて考え込んでいるのか唸ってしまった。

なんとか話が大変な方へ向かいそうなのを止めたのに、なんか・・・嫌な予感・・・


「・・・う~ん、舞台に立ってもらうのは無理だとしても・・・練習相手としてヒロインを演じてもらいましょうか!!」

「えっ!?練習相手としてヒロインをですか・・・」

「そうよ。せっかくヒロインのセリフを覚えてもらったんですもの、生かさないともったいないじゃない!」

「そ、それはそうですけど・・・でも・・・」


確かにヒロインのセリフは全部覚えてますけど、そこまで無理にヒロインを演じる必要は無いような・・・

戸惑う私の心を見透かしたみたいに、マリア先生は微笑んでいった。


「せっかくセリフを覚えたんだし、思い出作りだと思って!」


マリア先生は諦めるつもりは無いみたい・・・困った私は一応泉水の方に助けを求めて視線を向けたけど・・・


「俺は問題なし、蛍さえ良ければ練習相手としてヒロインを演じてもらいたい・・・ダメか?」


さっきの話の流れからある程度想像してたけど、やっぱり、泉水そっち側だよねぇ~・・・


「う、うーん・・・ダメじゃないけど・・・舞台に立つわけでもないのに・・・」

「台本、結構読みこんだんだろ?無駄にしないためにもさ」

「うーん・・・確かにそうだけど・・・でも―――」


なんか2人ともヒロインを演じて欲しいみたい。たぶん思い出作りに丁度いいとか思ってるんだろうけど・・・

な~んて考えてたら、マリア先生が恐る恐る言ってきた。


「練習だけとはいえヒロインを演じられる人が居るのは助かるのよ。

ほら、本番の舞台でヒロインを演じる神条さん、兼部してる剣道部の部長さんだし、3年生だし、神社のお仕事もあるから部活欠席することが多いでしょ?

そういう時に主人公の相手役としてサブでヒロインを演じてもらえる人が居ると助かるのよ」

「た、確かに・・・」

「だから、ね?お願い」


そう言ってマリア先生は両手を合わせると、ウインクした。

うっ・・・か、かわいい・・・

と、時々マリア先生ってズルいことしてくるんだよねぇ・・・・

はぁ~・・・仕方ない。

2人がどうしてもって言うからなんだから・・・顔が熱いけど・・・マリア先生が可愛さにやられた訳じゃないんだからね!!


「そ、そこまで言うんでしたら、やります。サブのヒロイン・・・」

「ありがとう!!」

「えっ?・・・って!!あわわわ!!・・・ま、マリア先生!?」


マリア先生が満面の笑みになったと思った瞬間、ギューッとハグしてきて、私は驚きの叫んでた。その上さっきまで少し熱かった顔がさらに熱くなるのが分かった。

きっと顔が真っ赤になっているに決まってる!!


そのまま、しばらく呆然自失(ぼうぜんじしつ)になってた・・・


その後しばらくして、私を心配そうに見つめていたマリア先生は、私が落ち着いたのを確認すると時計を見ながら言った。


「もうこんな時間、急いで用事を済ませて部室に行かないと!

春野君は先に部室に行ってくれる?ワタシも用事を済ませたら部室へ行くから」

「あ、はい」


マリア先生に言われて泉水は慌てた様子で、自分の机へ戻っていった。

その姿を確認したマリア先生は、私と瑞希に向かってニッコリと笑いかけながら早口で言った。


「それじゃあ、水輝さんと皆倉さんは気を付けて帰ってね。

水輝さんの入部の手続きはこっちでやっておくから安心してね。

それじゃ、さようなら」

「はい、さようなら」

「・・・さようなら」


私たちが返事をすると、マリア先生は右手をヒラヒラ振りながら、駆け足で教室を出て行った。


「じゃ、俺も行くわ」

「うん、また家でね」

「・・・バイ」


マリア先生に続いて、泉水も早口で一言言うと駆け足で教室を出て行った。


「じゃ、私たちも帰ろっか?」


2人も行っちゃったし、教室中もだいぶ人が居なくなってきたから、私は一緒に帰ろうと瑞希に話しかけた。


「ええ・・・そうね」


相変わらず感情がこもってない返事だけど、それ以上に瑞希は教室のドアを見たままこっちを見ない。

ちょっと不思議に思ったけど、私は帰り支度のため鞄に荷物を詰めていく。そして、鞄に荷物を詰め終わって瑞希の方を見ると、まだ教室のドアを見たままだった。


「瑞希?」

「何?」


返事はしてくれたけど、相変わらずドアを見たまま・・・


「何してるの?」


私が心配して話しかけると、瑞希は面倒くさそうにこっちを見て、一言。


「・・・観察」

「観察?」


予想外な観察って返事に、思わず聞き返した。たぶんキョトンとしてたと思う。

そんな私に瑞希はただじっと見てくるだけで、しばらく答えなかった。

そうして瑞希が答えないまま、10秒くらい。

瑞希は私のことをじっくり観察するみたいに見てから、目を細めてゆっくり言った。


「あなた・・・マリア先生に元の世界で、演劇部でヒロインを演じることになってたとでも話したの?」

「へっ?」


考えても無かった言葉に私は一瞬、固まってしまった。


「プッ・・・言う訳ないじゃん!?

別の世界の桜門高校の演劇部で、ヒロイン役に決まってたんですって?そんなミスしないよ~」


確かに話の途中で危なく言いそうになった瞬間はあったけど、さすがに言わないよ!

あんまりにも変なことを言い出すから、私は笑いが止まらなくなっちゃった。

だって瑞希がとんでもないこと言うんだもん、確かに瑞希には私が異世界から来たってことは言ったけど、それは言わざるを得ない状態だったし、信じてもらえるだろうって考えたからだし、だけどマリア先生は別だよ。

言ったって、こんなとんでもない話をマリア先生が信じてくれる訳ないのに、わざわざ言う訳ないでしょ?

ああ、おかしい!!

笑いながら瑞希を見ると、少し呆れた様子で見ていた。

呆れちゃうのはこっちなのに、アハハ!

そのうちにため息交じりの小さい声が聞こえてきた。


「そう・・・」

「もう!変なこと言わないでよ・・・ククク」


笑いが止まらないまま私が答えると、瑞希は目をつぶりながら「ハァ~・・・」とあきれた様子で深いため息をついていた。

その様子に、さすがの私も笑いが止まってしまった。

そんなに呆れられるようなこと、した覚え無いんですけど!!

ちょっとムッとした気持ちになった私は、ちょっとぶっきらぼうに聞いてみた。


「それより・・・さっき言ってた観察って、何のこと?」


私のことよりも、観察って言いながら教室のドアをジッと見たまま動かなかった、瑞希の方がおかしいよ。

そんな考えを込めて聞いてみたんだけど、瑞希は目を細めてじっと私を見た後、また小さく「ハァー・・・」とため息をついて、仕方ないとでも言いたそうな顔で言った。


「・・・説明が面倒・・・っていうか、これ以上調べようとすると面倒なことになる気がする」

「面倒・・・なこと?」


どういうこと?と聞き返す前に瑞希は再び面倒くさそうな顔で言った。


「あなたが気づいてないんだから、どうでもいいわ・・・」


顔と同じで面倒くさそうな口調でそう言うと瑞希は、自分の席から鞄を(つか)むとさっさと教室のドアへと向かって歩き出した。


「ちょっ!待ってよ、瑞希!!」


まったく意味わかんないことだけ言って、さっさと教室を出て行こうとする瑞希を私は慌てて追いかけるのだった。


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