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7枚目・話題の占い師③

小説の構成順番を直すために投稿し直しました。

2024年7月15日

服を着た猫

ウォールの言葉に泉美は言葉を失ってしまった。他の3人も動揺が顔に出てしまっていた。

だが、それも一瞬のことで、泉美はすぐに平静を装った。


「何の話ですか?私がウソを言っていると」

「ええ」

「・・・即答なんだ」


泉美は一瞬言葉を詰まらせながらも、平静を装い続けた。

そんな泉美の心を見透かすように、ウォールは話を続ける。


「これでも占い師ですから、あなたが偽名を言ったことくらい分からいます。

べつに偽名で占ってもいいんですよ。

ですが最初に言いましたよね?『これから長い付き合いになるでしょう』と、嘘偽りのないことを話してはくれませんか?」

「・・・私の本当の名前を言うと、混乱してしまうと思ったから言わなかったんだけど」

「ご配慮はうれしいですが、それは受け取り側の問題です。

それに占って欲しい内容も、一般人には理解しがたいものでしょ?」

「!!

あ、あなたどこまで分かってるの!?」


さすがに驚きの声を上げてしまった泉美、泉水達3人も驚きのあまり声も出なくなってしまっていた。


「大まかなことは・・・まぁ、解決方法はこれから占いますけどね」


ウォールはニッコリと笑うと、改めて泉美の顔を見た。


「では、改めてお名前は?」



泉美は改めて名前を名乗るとともに、自分が異世界から来た人間であり、泉水が女性として生まれた姿で、元の世界に帰る方法を探していることを伝えた。

それを聞いたウォールは別段驚くようなことはなく、泉美をジッと見たまま聞き続けた。

そして、泉美が話し終えると目をつぶり深く息を吸い吐いた。



「なるほど、元の世界への帰還方法・・・それは難題ですね。

では占って―――」

「待て待て!!」


大きな声で叫んだのは泉水だった。


「何です?藪から棒に・・・」

「泉美が言ったこと全部うのみにするのか!?少しは疑わないのかよ!?」


泉水の言葉に、ウォールは少し考え込んだが、あっけらかんとした顔で答えた。


「疑って欲しいんですか?」

「いや、俺たちだって最初は全然信じられなかったんだぞ!

それでも色々照らし合わせたり、調べたりして本当のことだって信じたのに、それをちょっと聞いたくらいで完全に信じたっていうのか!?」


困惑の表情でまくしたてる泉水に、ウォールは眉一つ動かすことなく答える。


「占いの仕事をしていると色んな人が来ます。

明らかにウソをついて占ってもらおうとする人、ウソみたいな本当の話をする人も大勢居た。

でも、その人の正体が宇宙人だろうと、化け物だろうと、真実を言っているのならすぐに分かります。

そもそも僕は占い師ですよ。お会いした瞬間に大体の事情は把握できるんです。

話を聞くのは詳しく占って欲しい内容を知りたいからなんですよ」

「・・・どんなに信じられないようなことでも、真実なら信じるって訳か?」

「ええ、その通りです。

これで分かったでしょ?ボクが泉美さんの言ったことをすんなり信じた訳」

「あ、ああ、さすがよく当たると評判の占い師というべきか。

普通の人間なら少しは疑いたくなる内容なのに、バカみたいにすんなり信じるなんてな」


呆れ顔の泉水にウォールは「フッ」と苦笑した。


「誉め言葉として受け取っておきますよ。

では、改めて占いを始めましょうか」


そう言うと、ウォールは水晶玉に両手をかざした。すると、不意に思い出したように泉美に話しかけた。


「泉美さん、年齢と誕生日をお聞きしてもよろしいですか?」

「うん、えっと・・・16歳で今年17歳、誕生日は5月27日だよ」

「分かりました」


一言答えると、ウォールは水晶玉に視線を戻しジッと見つめ始めた。

4人はその様子を、固唾をのんで見つめた。



水晶玉を見つめること数秒、ウォールはおもむろに口を開いた。



「うーん・・・結論から言うと、今すぐ元の世界に帰るとは無理ですね」

「そ、そう・・・」


ウォールの言葉に泉美は肩を落とす。

そんな彼女の様子をちらっと見てから、ウォールは水晶玉に視線を戻した。


「・・・う~ん・・・どうするか・・・ん?これは?」

「何か分かったの?」

「ふむ~・・・でも・・・いや、逆にか・・・」

「ウォールさん?」

「あ、失礼。

泉美さんが元の世界帰る方法・・・いや、ヒントが貰える・・・かも」


渋い顔でウォールは歯切れの悪い答えをする。

だが、泉美にはそんなことは気にならず、顔を輝かせる。


「本当!?」

「ええ、しかもすぐ近く」

「すぐ近くって場所!?」

「いえ、正確には人物というべきでしょうね」

「人物?

えっ?パラレルワールドに詳しい人物が居るってこと?」

「詳しい・・・う~ん、そうですねぇ~」


歯切れの悪いウォールの態度に、今度は泉水から声が飛ぶ。


「はっきりしてくれよ!

その人に会えば解決するのか?」

「う~ん・・・解決は・・・う~ん・・・断言は・・・」

「はっきりしねぇな!!

まあいいや、それでその人はどこに居るんだ?」

「このビルです」

「はっ?」

「このビルの上層階。そこに研究室を構えている科学者ですよ」

「「はい!?」」


あまりの驚きにイズミ達は同時に叫んでいた。

声こそ上げなかったが、大樹と鈴蘭も驚きを隠せない様子だった。




ウォールの話によると、このビルの最上階である5階に研究室があり、そこで研究をしている科学者が、泉美が元の世界に帰るヒントを持っているとのことだった。


「その研究室の科学者、知り合いなのか?」

「いいえ、研究室があることは知っていました。ですが、あいさつ程度でしっかり話したことは無いですねぇ~」


そんな泉水とウォールのやり取りがあった後、ローズティーを飲み終わった泉美達は占いの館を後にすることにした。




「今後のヒントになりそうなことは分かったな。まあ、ちょっと歯切れの悪い対応が気になるけど」

「はっきりと、助けになってくれますって断言ってくれなかったもんね。

でも、何も分からなかった今までよりも、一歩前進した感じかな?」


ため息交じりに感想を言う泉水に対して、大樹は同意するが少し進展があったと手ごたえがあったのか表情は明るかった。


「まぁな、無いよりはマシって感じだな。

大樹が突然言い出した思い付きで来たにしては、いい結果か」

「それって褒めてる?」

「ああ、最大の賛辞を贈ろう!大樹にしては良い考えだった。と」

「何か褒められてる気がしない」

「気のせいだ気のせい、心から褒めてやってるよ」

「絶対嘘だ」


ジト目で睨んでくる大樹、そんな弟に目を合わせようとせず泉水はそっぽを向いて誤魔化した。


「それはそうと、スズと泉美は出てこないな、どうしたんだ?」

「そう言えばそうだね。スズさんはお会計があるから遅れるとしても、お姉ちゃんまで遅いなんて・・・」

「ちょっと様子見て―――」


そう言いながら泉水が中に戻ろうとした時、中から泉美が飛び出してきて2人は思わずぶつかりそうになってしまった。


「うわっ!ビックリした!!」

「ビックリしたのはこっちだ!

何してたんだよ?今呼びに戻ろうとしてたんだぞ?」

「ちょっとね。

スズちゃんがお金を払う直前に、追加で占ってもらいたいことがあるから残るって言いだしたの、それで私が付き添いで残るって言ったんだけど、スズちゃんに「先に研究室へ行ってて」って言われたんだけど、そう言う訳にはいかないから3人で入り口で待ってるって話をね」

「追加で占い?」

「また予約取れるか分からないし、追加なら割引価格だから占ってもらうって」

「なるほど、それにしても何を占ってもらうって言うんだ?」

「そりゃ~ねぇ~」


意味ありげにニヤリと笑う泉美を見て、鈴蘭が占ってもらいたい内容が予想できた大樹は肩を落とし、分からない泉水は首を傾げ考え込むのだった。



「それで、占って欲しい内容は何ですか?」

「もう分かってるんじゃないの?」

「まあ、ある程度は・・・でも詳しくは分かりませんので、教えていただけますか?」

「そう言えば、そんなこと言ってたね。うん、分かった。

ズバリ!あたしが占って欲しいのは恋愛運!!」

「やはり恋愛ですか・・・つまりこれからあなたが誰と付き合い、結婚するかということですね?」

「うん、そういうこと」

「なるほど、分かりました。ではさっそく占ってみましょう。

年齢と誕生日をお聞きしても?」

「歳は15歳、今年で16になるよ。誕生日は7月29日の獅子座だよ」

「星座までは聞いてないんですが・・・まぁいいでしょう」


ウォールは水晶玉に両手をかざすし、じっと見つめ始める。

やがて、水晶玉を見つめたまま語り始めた。


「あなたと付き合い、結婚する人、つまり運命の人と呼べる人ですが・・・もう会っています。しかも幼いころに」

「やっぱり!あたしの運命の人はお兄ちゃんなんだ!!

お兄ちゃんと結婚して、水輝の家を継いでいくんだ!!」


鈴蘭は椅子に座ったまま、手足をバタバタさせて喜びを爆発させる。

そんな彼女の様子をウォールは水晶玉に顔を向けたまま、上目遣いで表情を変えず見ていたが、目をつぶり小さくため息をつくと、少し声のトーンを下げて話し始めた。


「喜んでいるところ申し訳ないのですが、あなたが思っている人が運命の人である可能性は低いと言わざるを得ないです」

「ふ~ん、何で?」


ウォールの言葉に、鈴蘭は手足をバタつかせることを止め、こちらも声のトーンを下げて答えた。


「運命の人とは近いうちに再会すると出ています。おのずとあなたが兄と慕う人とは違う人になるかと」

「へぇ~、そう占いでは出てるんだ。ふ~ん」


鈴蘭の声の怒っている訳でも、悲しんでいる訳でもなく、どことなく呆れているような声だった。


「信じてないんですね」

「まあね、いくらウォールさんが一流の占い師でも、外れることはあるんでしょ?」

「はい、ボクの占い的中率は90%くらい、残り10%は外れる。

惜しいこともあれば、まったく的外れでトラブルになったこともあります。

でも、それは仕方ないことなんです。ボクが行っているのは占い、預言ではない。

当たることもあれば、外れることも当然ある」

「当たるも八卦(はっけ)当たらぬも八卦(はっけ)って言うもんね」

「・・・その通りです。随分と難しい言葉を知っているんですね」

「まぁねぇ~。一応水輝家のお嬢様だも~ん!難しい勉強とかしてるんだからね」


自慢げにドヤ顔をする鈴蘭。そんな彼女にウォールは眉一つ動かさず答える。


「なるほど、さすがは名家のお嬢様ということですね。

もちろん意味はご存じで?」

「もちろん!

占いは当たることもあるけど、当たらないこともある。

占いは人生の参考くらいにしておかないと、未来のことは誰にも分からないから、あまり頼りすぎるなってことでしょ?」

「そうですね、概ねそんな感じです。

まあ、それを認めてしまうとボクの立場無いんですけどね~」


そう言ってウォールは肩をすくめた。

そんな彼の様子を見て、鈴蘭は「クスッ」と笑った。


「まっ、そう言う訳だから、あたしは運命の人と出会ってるって所だけ信じて、これから再会するって部分は全く信じないから」

「分かりました。

受け取り方は人それぞれ、ボクがあれこれ口出しをする立場ではないですからね。

ですが一言だけ、言わせてください。


運命の人と結ばれたあなたは、末永く幸せになれるでしょう。


それだけは保証しますよ」


ウォールは優しく微笑み、そう言った。

その言葉に鈴蘭は歯が見えるくらいニカッと笑った。


「ありがとう。それを保証してもらえれば十分だよ」


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