5枚目・親友の定義【前編】②
読みやすさのため、内容を分割して調整しました。
文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。
作者:服を着た猫
瑞希をリビングに通した泉水は、テーブルの椅子に彼女を座らせ、自分は向かいに、その横に泉美を座らせた。
「説明する前に、こっちの質問に答えてもらっていいか?」
「・・・いいわよ」
仏頂面のまま眉一つ動かさず瑞希は短く返す。
「今日は何でこんな朝早く家に来たんだ?」
「・・・昨日マリア先生に言われたのよ『今日、せっかく体育館の使用許可取ったのに、春野さんったらホームルームが終わったら、さっさと帰ってしまったのよ。瑞希さん理由を聞いてみてくれない?』ってね。
同時に『舞さんも用事が出来たからって、帰ってしまったのよねぇ』とも愚痴ってたわね。
まったく、幼馴染だからっていい迷惑だわ」
「だからって、こんなに早く来なくても・・・」
「嫌がらせしたいって考えもあったけど、聞きたいことがあったからね」
「聞きたいこと?」
「あの電話に出てきた、イズミって女は何者?ってね。
まさか本人と出くわすとは、思わなかったけど」
瑞希は泉美に視線を移すと、ジト目で睨みつけてきた。
「あなたは私とプリクラに写っているらしいし、朝の口ぶりも私を知っているみたいだった。
だけど私はあなたなんて知らない。
見たこともない女に、なれなれしく話しかけられた時は悪寒がしたわ!」
「!!
ごめん、なさい」
冷たく言い放つ瑞希の言葉に、泉美の顔には悲しみの色がありありと滲んでいた。
「けど、その理由くらいは聞いてあげるわ。
その理由を聞いてから、あなたへの態度を決めるわ」
「わ、私は―――」
鋭い視線を向けてくる瑞希に委縮しながら、泉美が必死に答えようとした時、泉水が手を伸ばして制した。
「無理に説明しようとしなくていい。俺が話すから」
「う、うん」
「瑞希の言う通り、ちゃんと理由はある。
泉美にとって瑞希はよく知ってる相手・・・親友だから、あんなフランクな口調になったんだ」
「???
どういう・・・こと?」
真剣な顔で語る泉水の言葉は、普段無表情の瑞希でも理解しがたく、困惑の表情で戸惑っていた。
困惑する瑞希に泉水は、桜門神社で起きたことを、分かる範囲で説明をした。
「異世界から泉水が引っ張り込んだ、泉水のドッペルゲンガー・・・もう1人のイズミ・・・」
「ああ、そうだ」
「荒唐無稽・・・バカも休み休み言いなさい!!
・・・って一蹴したいけど、こんなの見せられたら、簡単に否定することはできないわね」
テーブルの上には泉水が説明している間に泉美が持ってきた、プリクラ手帳が広げられていた。
そこには笑顔の泉美と、嫌々付き合ったのだろう、泉美に腕を組まれた仏頂面の瑞希が、一緒に写っており【ずっと親友だよ♡】のラクガキが書かれていた。
「こんな写真撮った覚えはない、もちろんあなたと写った覚えもない。だけど、こんな写真がある。
合成と言えばそれまででしょうけど、そこまでして写真を作る意味が分からない。
つまり、認めざるを得ないって訳ね、あなたが異世界のイズミだってことを」
「納得してもらってよかった」
ほっと胸を撫で下ろす泉美だが、瑞希はジト目で泉美を見続ける。
「でも、写真を見る限り、別世界の私とあなたが仲がいいようには、とても見えないわね」
「それは・・・」
「それでも、あなたが別世界の私を親友と呼ぶ理由は何?」
泉美はうつむき少し考えた後、鋭い視線を向けてくる瑞希の目をしっかりと見て答えた。
「それは、瑞希が私と親友になりたいと言ってくれたから」
「!!」
ジト目で泉美を見ていた瑞希は、カッと目を見開いた。
「私が・・・親友に・・・なりたいって言った!?」
その瞬間、瑞希の脳裏に幼いころの会話がフラッシュバックされる。
『私、君とは友達よりも仲良くなりたいなって、思って』
『友達よりも仲良く?』
幼い少女の言葉に、こちらも幼い男の子が首を傾げる。
『うん、ママが言ってたんだ。友達よりも仲がいい人のことを親友って呼ぶんだって。
私、君と親友になりたい!!』
泉美はさらに言葉を続ける。
「そして、傷ついたあなたを支えたいと思ったから、私は親友としてあなたを支えていくんだって。
だから、私はあなたの親友でい続けたいと思った」
その言葉に再び、瑞希の脳裏にフラッシュバックが起きる。
『だから私は大切な人なんてもう要らない、私はもう親友なんていない方が良い。
私は親友なんて要らない!!』
少女は少年を睨みつけて、言葉を続ける。
『だからお願い・・・私の大切な人にならないで』
『だけど、やっぱり僕は瑞希ちゃんの親友をやめたくない』
『どうして!?
分かってくれたんじゃないの!?』
『僕は、親友として、友達よりも仲がいい友達として、瑞希ちゃんを支えたい。
もう一度瑞希ちゃんが笑えるように、瑞希ちゃんの心を直したいんだ。
だからお願い、僕を親友でいさせて』
瑞希はフラッシュバックが収まると、叫んだ。
「なんで!なんでそのことを、あなたが知ってるの!?」
苛立った瑞希は立ち上がり、泉美の腕に手を伸ばした。だが、その手は立ち上がった泉水に掴まれ止められる。
腕を掴んだ泉水が無言で首を振るのを見て、瑞希は我に返り椅子に座り直した。
瑞希が椅子に座ると泉水は補足するように話し始めた。
「泉美のいた世界と、こちらの世界はよく似ている。
町並みや住んでいる人だけじゃなく、経歴や行動まで似ている。だから俺たちが話していたような内容を、泉美も別世界の瑞希と話したんだろう」
「そう・・・じゃあ、あの日、異世界の私もこの家の隣に引っ越してきたのね」
「うん、小学校の入学式がある2日前、笑顔がまぶしい女の子が家の隣に引っ越してきた」
「入学式の2日前・・・」




