5枚目・親友の定義【前編】①
読みやすさのため、内容を分割して調整しました。
文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。
作者:服を着た猫
イズミたちが水輝家本家で会談をした翌日。
朝早く、春野家に1人の訪問者がやって来た。
その訪問者は桜門高校の制服に身を包み、仏頂面のまま玄関前に立ち、インターホンを押した。
「はーい」
呼び鈴に応答したのは、朝食の用意をしていたイズミたちの母アゲハだった。彼女はインターホンの受話器を取る。
「はい」
『私です。瑞希です』
「あら、瑞希ちゃん。今開けるわね」
アゲハは玄関に行くと鍵を開け、扉を開いた。
「おはようございます」
「はい、おはよう。朝早いのね?何か用事?」
「ええ、まあ・・・」
笑顔であいさつするアゲハに対し、瑞希は無表情で短く返す。
その時、2階から階段を下りてくる足音が聞こえてきた。
「チャイム聞こえたけど、誰か来たの?」
寝ぼけまなこをこすりながら現れたのは、ポニーテールをほどき、髪を下ろした泉美だった。
「あれ?瑞希?
ふぁ~・・・おはよう。何かあった?」
「・・・・・」
「瑞希?」
いつもなら不機嫌でも返事を返してくれる瑞希が、今日は何も言わない。そのことに泉美は違和感を覚えた。
そんな彼女をいつものようにジト目で睨みつけながら、瑞希は泉美が予想もしない一言を発した。
「あなた誰?」
「へっ?
何言っ―――あっ!」
その瞬間、泉美はこの世界が異世界であったことを思い出した。いくら見慣れた親友である瑞希でも、目の前の彼女は自分を知らない。
泉美は慌てて誤魔化そうと考えを巡らせる。
「え、えっと、わ、私は―――」
「もしかして、あなた・・・イズミ?」
「へっ?」
思いもしない一言に、泉美の思考はパニックを起こしてしまう。
「わ、私が理解できるの?」
「分かる?」
「あ、いや、し、知ってるの?」
「知ってるというよりも・・・」
「瑞希ちゃん、こ、この子はね」
パニックに陥った泉美に代わり、アゲハは慌ててフォローをしようとするが、瑞希は感情のこもっていない声で応えた。
「おば様、いいです。用事の半分は済みましたから、あとは彼女に直接聞きます」
「で、でも・・・」
アゲハは瑞希と泉美の顔を交互に見た。
心配そうなアゲハに対し、瑞希は鋭い目つきのまま続ける。
「いいです。
それよりも、おば様は食事の準備中だったのでしょ?焼き魚の匂いがしますから、早く仕事にお戻りを」
「そ、それはそうだけど・・・」
「魚・・・焦げますよ」
瑞希の言葉にアゲハは渋々、後ろ髪を引かれながら玄関を離れた。
アゲハがリビングに入っていくのを見届けると、瑞希は泉美に視線を移し、その目をジッと見ながら言った。
「・・・一昨日の夜、泉水が変なことを聞いてきたの。
電話で『紫紺の髪でポニーテールにしている女の子に心当たりはないか?』ってね。
同時に『プリクラを撮ったか?』とか『俺以外にイズミって名前に心当たりはないか?』とかね。
総合すると【紫紺の髪をポニーテールにしたイズミって名前の女と、プリクラを撮ったか?】ってことよね?
つまりあなたがイズミで、あなたとプリクラを撮ったかってことでしょ?」
「そ、それは・・・」
「否定はしないのね。
あなた・・・何者?」
鋭い視線で睨みつけてくる瑞希に、泉美は言葉に詰まる。
そこへ騒ぎを聞きつけた泉水が、2階から降りてきた。
「何の騒ぎだよ・・・って、瑞希!とい―――」
泉美の名前を言いそうになって慌てて手で口をふさぐ泉水。その様子に瑞希はジト目で彼を見ながら冷たい声で言い放った。
「彼女が、電話で話していたイズミなんでしょ?
私と彼女が一緒にプリクラに写っていた。そういうことよね?」
「そ、それは・・・」
「説明してもらえるのよね?泉水?」
泉美同様、蛇ににらまれた蛙のようになった泉水は、ただうなずくことしかできなかった。




