7枚目・話題の占い師②
小説の構成順番を直すために投稿し直しました。
2024年7月15日
服を着た猫
目的地である雑居ビルはイズミ達が住んでいる住宅街とは線路を挟んで対極に位置するため、近くまで来た時には思っていたよりも時間が経っていた。
「えっと・・・このビルで良いんだよね?」
泉美の言葉に鈴蘭がスマホの画面を見ながら答えた。
「うん、地図アプリのナビ見ながら歩いて来たから、ここで間違いないよ」
「話には聞いていたけど、本当にボロボロだな」
「うん、ボロボロだね」
泉水の言葉に同意する大樹、彼らの言う通りイズミ達が到着した5階建てのビルは、両側に大きく新しいビルに挟まれた小さなボロボロのビル。
まるでそこだけ時が止まり、取り残されたようなさみしい見た目だった。
「築何十年かな?なんか50年以上経ってるようにも見えるけど?」
「いや、それはさすがにないだろう。3、40年ぐらいじゃないか?」
「どちらにしろ、結構経ってるよね・・・
本当に人気占い師が居るのかな?」
泉美と泉水がそんな話をしていると、いつの間にかビルの入り口の前に来ていた大樹が答えた。
「間違いないみたいだよ、このビルの2階だってフロアー案内板に書いてある」
「マジかよ・・・ホントだ【占い館≪ルナ≫】って書いてある。
他にも何件か入ってるな・・・名前だけじゃ何やってるのか分かんないけど」
泉水がそんな感想を言っていると、泉美も不思議そうに言った。
「こんなボロボロのビルによく借り手が居るよね」
「まあ、逆に家賃が激安なんだろ」
「確かに、これだけ古ければ家賃は安いよね。メンテナンス費は掛かりそうだけど」
「だな」
所々外装や塗装が剥がれているビルについて感想を言い合っていると、スマホを見ていた鈴蘭から声がかかった。
「お兄ちゃん、そろそろ中に入らない?もうすぐ10時になるし」
「もうそんな時間?無駄話してる場合じゃなかったな行くぞ」
「そうだね。急いでいかないと」
泉水の言葉にうなずきながら、イズミ達は階段を上り始めた。
2階へと上がった4人が見たのは、入り口に置かれた【10時:水輝 鈴蘭様】と書かれたウェルカムボード。
その後ろのドアは開け放たれ、赤いベルベットの布がのれんのように床まで垂れ下がって、入り口をふさいでいた。
独特の雰囲気の入り口に4人は小声で話し合う。
「誰から行く?」
「兄ちゃんからどうぞ」
「俺!?いやいや、ここはスズだろ」
「えっ!?あたし!?」
「そうだね。予約したのも、ウェルカムボードに書かれてるのも、スズちゃんだし」
3人の視線を一身に浴びた鈴蘭は一瞬たじろぐ。
「っ!!・・・分かったよ!入るよ!」
3人の視線の圧に負けたのだろう、鈴蘭は渋々といった様子でベルベットののれんに右腕を伸ばしていく。
1枚だと思われたベルベットののれんは、2枚だったようで中央で左右に分かれ、鈴蘭は吸い込まれるように中へ入っていく。
「こんにちは~・・・10時に予約した水輝です~」
恐る恐るといった様子で話す鈴蘭に続き3人も中へと入っていく。
中はロウソク型LEDライトの明かりだけで薄暗く、壁には入り口と同じ赤いベルベットの布が張り付けてあり、所々、波の形を模したようにたわんで壁を装飾していた。
独特の雰囲気に4人はしばらくキョロキョロと室内を観察し続けた。
やがて薄暗さに目が慣れてきたころ、鈴蘭が不思議そうな声で言った。
「【スンスン】・・・ねぇ、何か甘いような香水みたいな匂いしない?」
「え?【スンスン】・・・本当だ、甘い香水みたいな匂いがする」
鈴蘭の言葉に泉美が同意すると、部屋の奥から声の高い男の声が聞こえてきた。
「ようこそお越しくださいました。
ウェルカムドリンクとして、ローズティーをご用意しました。どうぞこちらへお越しください」
随分と若い男の声だなと思いながら、泉美は返事を返した。
「すみません、私たち予約した水輝さんに同行した者です。一緒にそっちへ行ってもいいですか?」
「どうぞ、同行したあなた方3人分、合わせて4人分のローズティーを用意していますからご安心ください」
「ど、どうして私たちが4人組だと分かったんです!?」
「これでも占い師ですから、さあ、怖がらずにどうぞ」
4人は顔を見合わせ、うなずくと奥へと進んでいく。
やがて薄明りの中に横一列に並べられた4却の椅子とロウソクの置かれたテーブルが見え、4人は右から大樹、泉美、鈴蘭、泉水の並びで座った。
「本当は紅茶やコーヒーをご用意するべきなんですが、あいにくとボクはカフェイン系の刺激物がダメな体質なもので。
ノンカフェインのお茶やコーヒーでもよかったんですが、今日は香りが気に入っているローズティーを用意させてもらいました」
声の聞こえてくる方向から、テーブルの向かい側に座っていると思われる占い師。
だが、その姿はロウソクの明かりだけでは、僅かにシルエットが見える程度ではっきりとは見えなかった。
「さて、今回の依頼内容を詳しく聞く前に、ボクの自己紹介をしますね」
占い師がそう言うと【ズズー】という椅子を動かす音が聞こえてきた。
そして次に【コツコツ・・・】という足音が机から離れるように聞こえてくる。
そのことに4人が疑問に感じた、次の瞬間。
【パチッ】
スイッチを入れる音共に、天井の明かりが点いた。
「キャッ!」
「まぶし!」
「うわっ!」
「まぶしい!」
薄暗さになれていた4人は、まぶしさに声を上げる。
やがて目が慣れると明かりの正体が、天井から垂れ下がる電球型の明かりだと分かった。
同時に暖色系の明かりに包まれた部屋で、彼らは驚き同じ言葉を叫んでいた。
「「「「こ、子供!?」」」」
そこに立っていたのは、一件黒髪に見えるほど濃い濃紺の髪に金色の瞳の見た目、小学三、四年生の子供だった。
髪は耳が隠れるようなショートカットで、左手の親指には金色の指輪がはめられていた。
それだけでも少し変わっていると思うのだが、その服装もかなり変わっていた。
着ている服は白いワイシャツに髪と同じ濃紺の燕尾服に青い蝶ネクタイ。
さらに頭の左側には、黒色のミニシルクハットが斜めに頭にかぶさっていた。
ただミニシルクハットからは紐が伸びておらずヘアピンのようなピンで止められていると思われた。
「まっ、その反応も想定済みですけど、慣れませんね」
ため息交じりにそう言うと、男の子は机に向かって歩いてくると改めて4人の向かい側に座った。
「ボクの見た目で毎回驚かれるのが嫌で普段は部屋を暗くして接客しているのですが、今回は特別です。
改めましてボクがこの占いの館の主人であり占い師です。信じられないかもしれませんが、これでもあなた達よりもずっと年上なんですよ」
その言葉を聞き、4人は同時に声を発していた。
「いや・・・どう見ても子供だろ」
「成長不良ってこと・・・いや、でも・・・」
「あたしも幼く見られるけど・・・さすがに・・・」
「お姉ちゃんたちよりも年上ってことは・・・大人!?・・・なんですか?」
驚く4人を見て占い師は大きくため息をついた。
「ハァー、同時に喋らないでください。聖徳太子じゃないんですから、分かりませんよ。
まぁ、何を言っていたのか大体の予想は付きますけどね。どうせボクが年上に見えないとか言っていたんでしょ?」
「当たり前だろ!お前どう見たって小学生じゃないか!!」
「年下にお前呼ばわりされたくないのですが・・・最初だけは大目に見ましょう」
ジト目で泉水を睨みつけていた占い師は、左手を口元に添え【コホン】と咳払いをすると、自分のことを話し始めた。
「改めて自己紹介を・・・ボクの名前はウォール
【ウォール・カイン・ヴァルキュリア】と言います。
これから長い付き合いになるでしょう。以後お見知りおきを」
軽く会釈をするとウォールはニッコリと笑いかけた。
「長い付き合いに?それも占いか?
ていうか、名前がウォールって!お前外国人かよ!!」
驚く泉水をウォールは再び睨みつけたが、小さくため息をつくと話を続けた。
「そうですね。この・・・国の人間から見れば、外国人ですね」
「それにしては日本語ペラペラだね!?
長年勉強した成果?それともずっと日本に住んでるの?」
「いえ、この・・・国には数年前に来て、言葉は・・・それから努力しました」
「すごい!たった数年でこんなに自然に喋れるなんて!!」
「ありがとうございます」
目を丸くする泉美に、ウォールは軽く会釈をしてお礼を言った。
その様子を見ていた鈴蘭から質問が出た。
「ねえ、ウォールって外国から来たのは分かったけど、何歳なの?年上って言ってたけど?」
「・・・年上と分かっているなら、名前を呼び捨てにするのは、どうかと思いますが・・・まあ、いいでしょう」
相変わらず年上として見られていないことに呆れながら、ウォールは質問に答える。
だが、その答えは思いもよらないものだった。
「ボクの年齢は220歳です」
「へーえ、220歳・・・・・
220!?とんでもないお爺さんじゃん!!」
「まて!まて!!そんな訳ないだろう!?
そんなに生きる人間が居る訳ないし、居たとしてもこんな若い姿の訳あるか!!
たちの悪冗談に決まってるだろう!!」
驚きを隠せない様子の鈴蘭に、泉水はあきれ顔で怒鳴りながらツッコミを入れる。
その様子を見てウォールは苦笑いを浮かべながら、フォローを入れ始めた。
「ボクの出身・・・国では、の話です。ボクの出身国の暦は独特で、世界基準では22歳くらいですね」
「なんだ、ビックリした。22歳なんだ・・・・・
って、大人!!」
いったん苦笑いになった鈴蘭だったが、再び驚きの表情になってしまった。
「そうですよ。
あなた達よりずっと年上です。
敬語を使えとは言いませんが、いい加減ため口は止めていただきたいですね」
「ご、ごめんなさい・・・」
シュンッとした表情で素直に謝る鈴蘭。その横で驚きを隠せない泉美と大樹。
そんな3人をよそに、泉水はジト目でウォールをいぶかしげに睨みつけていた。
「ホントに22歳かぁ~?
どう見ても小学生だし、たとえ幼く見えるだけだとしても、程度ってものがあるだろう?」
「・・・証拠を見せろ、と?」
ジト目になるウォールに、泉水は肩をすくめてみせた。
「まぁ、証拠というか証明?
年齢を証明できるようなものがあれば、信じてもいいって感じだな」
「泉水、あんまり失礼なこと言わない方が良いよ。もしもホントに年上だったら、だいぶ失礼だし」
硬い表情で注意する泉美に対し、泉水は鼻で笑いながら答える。
「そんなこと言ったって、お前だって半信半疑だろ?大樹やスズだって?」
「う、うん・・・そうだね。僕もちょっと信じられない、かなぁ~」
「えー!!嘘なの!?謝って損した!!」
「いや、スズちゃん嘘って決まった訳じゃないから、確かに私もちょっと信じられないけど・・・ねぇ?」
泉美にも疑惑も目を向けられたウォールは少し考え込むと、おもむろに椅子から降りた。
そして、部屋の奥へと向かうと、布をずらしてその奥へと消えていった。
しばらくして、再び現れたウォールの手には赤色の手帳のようなものが握られていた。
「これがボクのパスポートです。これを見ればボクがウソをついていないと分かるでしょう」
そう言うと、ウォールは再び椅子に座り、机の上にパスポートを差し出した。
「どうぞ、見てみてください」
泉水は差し出されたパスポートを手に取り、じっくりと見てみた。
表紙にはアルファベットに似てるが、見たことがない文字が大きく書かれていた。
「国名だよな、読めないけど」
「国名は【ヴァルハル】国王を頂点とする海洋国家です」
「・・・聞いたことない国だな」
「でしょうね」
「フフ」と含み笑いをするウォールを上目でちらっと見た後、泉水はパスポートに視線を戻しパスポートを開いた。
パスポートには写真の右にプロフィールが表紙と同じ読めない文字と、英語で書かれていた。
「生年月日は・・・これだな。こっちの数字は例の独特の暦ってやつだな、でこっちが世界基準の暦・・・・・
確かに22年前になってる。って、ことはおま・・・あんたホントに22歳なのか?」
「ええ、ですからあなた達よりも、ずっと年上だと言っているでしょ?」
「・・・疑ってすいませんでした」
椅子から立ち上がり頭を下げて謝る泉水に、ウォールは仕方ないですねぇ、とでも言いたそうに苦笑いを浮かべた。
「いいですよ、分かっていただければ」
「それにしても、ホントに子供にしか見えないな、あんた」
驚きの表情を隠さないまま座る泉水は、じっくりと観察するようにウォールを見て言った。
「もともと身体的異常があって、それと関連するのか発育障害らしく、この姿までしか成長しなかったんです」
「なるほど」
「まぁ、それ以前に身体的異常を気持ち悪がられて、赤ん坊のころに捨てられましたけど」
「えっ・・・それって育児放棄されたってこと!?」
今度は泉美が驚きの表情と声を上げる。
そんな泉美の言葉に、ウォールは首を横に振った。
「その可能性は低いでしょう。
保護されたときボクは生後3ヶ月ほどだったそうですから、ボクを見た周りの人間が容姿を気味悪がって捨てた可能性が高いかと」
「・・・児童養護施設の前に捨てられたんですか?」
「いいえ、捨てた人間はボクを生かすつもりは無かったのでしょうね。木箱に入れたボクを湖に捨てたくらいですから」
「なっ!!」
衝撃的な告白に泉美だけでなく、他の3人も驚きを隠せなかった。
「ただ、赤ちゃんを捨てるだけでも許せないのに、湖に捨てるなんて!!とんでもない犯罪じゃない!!」
「そうですね、でも今となっては過去の話です。
それにその出来事が、結果的にボクの愛しい人との出会いにつながるわけですから、むしろボクとしては感謝してるくらいですよ」
そう言いながらもウォールの顔は少し暗かった。
「愛しい人?育ての親のこと?」
「・・・命の恩人で、姉だった人です」
「だった?」
「・・・ええ、姉だった人です」
その言葉を聞いて泉美は、ウォールの言う姉がどこに居るのかを察した。
(そのお姉さんは、もう天国へ・・・)
他の3人も同様に察したようで沈黙がその場を包んだ。
そんな沈黙に耐えかねて、鈴蘭が話題を変えるために別の質問をした。
「それはそうと、ウォール・・・さんて、ここに住んでるんだね?」
「はい?
いいえ、住まいは別ですよ?なぜここに住んでいると思ったんですか?」
「えっ?だって、パスポート部屋の奥から持ってきたから、自分の部屋から持ってきたのかなぁ~、って」
「ああ・・・ボク一応外国人なので、いつも携帯してるんですよ。ハハハ」
「そう・・・なんだ。
あ、それと気になってたんだけど、聞いていい?」
いまだにウォールに対して敬語を使えない様子の鈴蘭を見て、ウォールは諦めたように苦笑しながら答えた。
「何でしょう?」
「【ウォール】って珍しい名前だなって、日本語で言えば【壁】でしょ?
名前に壁って、かなーり珍しいよね」
その言葉を聞いたウォールの眉毛がピクっと動いた。
「・・・よく勘違いされるのですが・・・」
ウォールの声は変わらなかったが、その顔は笑顔の奥に怒りを湛えているようで、口元がピクピクとしていた。
「ボクの名前の由来は壁の【wall】ではなく、水の【water】をもじったモノなんですよ」
「そ、そうなんだ」
「ええ、愛しいお姉ちゃんに付けてもらった大切な・・・大切な名前です」
ウォールの声からは名前の意味を間違えられた怒りの感情と、それ以上の悲しみが伝わってきた。
「ウォールさん・・・そのお姉ちゃんのことが大好きだったんだね」
ウォールの悲しみを感じ取った鈴蘭は、自分も悲しげな声になりながら言った。
そんな彼女の言葉に、ウォールは彼女の目をまっすぐに見据えて言った。
「ええ・・・愛しています。心から」
「愛・・・
(愛してるって、恥ずかしげもなく言えるなんて・・・。
あたしもお兄ちゃんのこと好きだけど、愛してるなんて恥ずかしくて言えないよ・・・。
やっぱりこの人、子供に見えるけど大人なんだ)」
ウォールがお姉さんのことを心から愛していたのだと感じた鈴蘭は胸が熱くなるのを感じていた。
同時に、泉水に愛の告白をする妄想をしてしまい、顔を真っ赤にしてしまうのだった。
「まぁ、ボクはその名前を捨てたんですけど・・・」
「え?今なんて?」
ウォールが目を伏せて、ポツリとこぼすように言った言葉を、鈴蘭は思わず聞き返した。
だが、彼はその質問に答えることはなくお茶を一口飲んだ。
「う~ん・・・話が過ぎましたね、お茶が冷めてしまいました。でも逆に飲みやすくなったかな?
皆さんもどうぞ、ぬるければ交換しますよ」
「・・・う、うん、いただきます」
鈴蘭が口を付けたことを皮切りに3人もローズティーを飲み始めた。
「あんまり味がしないな。バラのお茶は酸っぱいって聞いたことあったんだけど・・・」
「それはローズヒップティーですね。
バラの実であるローズヒップを乾燥させてお茶にするローズヒップティーはほどよい酸味と甘みが特徴ですが、今回お出ししたのはバラの花びらを使ったローズティー、ですから酸味はないんです」
「なるほどな。それであんまり味がしないのか」
「本当だね、甘い匂いがするから甘いと思ったけど、逆にちょっと苦いかな?」
「でも、私は好きだよ」
「あたしも好き・・・」
男性陣と女性陣で意見が分かれた様子を見て、ウォールは微笑んだ。
「香りがいいハーブティーですが、味は好みが分かれるかもしれませんね。
それより、占いを始めましょうか」
ウォールはそう言うと、横に置いてあった水晶を目の前に移動させた。
「見ての通りボクの占いは水晶占いです。
料金は1回5千円、追加で占う場合はプラス3千円を頂きます」
「1回5千円!?高いな!」
「何をおっしゃいます。普通1時間1万円くらいの料金がかかるところを1回5千円ですよ!破格です。
追加料金も3千円。学生にも優しい料金設定ですよ」
「そう・・・なのか?」
何か言いくるめられているように感じ、泉水は微妙な返ししか出来なかった。
「でも、そんなに掛かると思ってなかったから、金ないぞ」
「あ、大丈夫お兄ちゃん、あたしお爺様にお願いしてお金もらってきたから、お金は十分にあるよ」
「そうなのか?ちなみにいくらもらったんだ?」
「ぼったくりにあっても大丈夫なようにと、お昼代として、5万円」
「5万!?そんなに渡してくれたのかよ。さすが本家の水輝家、学生にそんな金ポンって渡すって・・・」
「だから、お金の問題はOK。
問題はこの占いで答えになることか、ヒントになることが分かるかどうかだよ」
鈴蘭の言葉に、泉美はうなずいて同意した。
「そうだね。
じゃあ、さっそく占ってもらおうよ」
「なんたってよく当たる占い師さんだし、きっと大丈夫だよ」
「だな」
泉美の言葉に、大樹と泉水はそれぞれ同意した。
その言葉を聞き、代表して鈴蘭が占いを始めるための話を始めた。
「えっと、占いしてもらいたい内容なんだけど・・・あたしのことじゃなくて、こっちの人のことを占って欲しいんだけど」
そう言って、鈴蘭は隣の泉美を指さした。
「ふむ、話の流れから察するに、あなたが依頼主の【水輝 鈴蘭】さん、そして実際に占って欲しいという、あなたは・・・」
「そういえば、まだ名前言ってませんでしたね。自己紹介を受けたのに失礼しました」
泉美は右手で大樹を指さした。
「右端に座ってるのが【春野 大樹】、そして左端に座ってるのが【春野 泉水】
2人は兄弟で、鈴蘭さんの親戚です。
そして私が・・・」
そこまで言って、泉美は確かめるように泉水をチラッと見てから、視線をウォールに戻した。
「私の名前は【水輝 蛍】です」
その言葉に鈴蘭と大樹は一瞬、泉美の顔を見て驚きの様子を見せたが、すぐにウォールの方に視線を戻した。
「ふむ、水輝・・・蛍さんですか」
自己紹介を聞いたウォールはゆっくりとした口調で確かめるように言うと、おもむろにずいっと体を前のめりに出し、じっと泉美の顔を見ながら言った。
「で、本当の名前は何ですか?」
「えっ・・・」




