20枚目・夏だ!水着だ!プール開きだ!②
「うぅ・・・水に入るなんて余計に寒くなりそう・・・」
瑞希に手を引かれた泉美はイヤイヤ足先をプールにつける。
「うぅ・・・冷たい!」
「足先だけしか水につけているからよ。全身浸かってしまえば水の中の方があったかいわよ」
水の冷たさに躊躇する泉美を横に、瑞希はためらいなくプールに入る。
「・・・少し冷たいけど、入る前よりも少しマシね・・・
昨日、天気が良かったから水が暖まってるわ。
空気中よりも水中の方が風がない分、少しはマシよ」
「ほ、本当?」
瑞希の言葉に、泉美は恐る恐る水の中に入る。
「つ、冷たい!・・・で、でも・・・た、確かに水の中に入ったほうが、いくらかはマシかも」
「でしょ?」
泉美たちの様子を見て、女子クラスメイトや男子たちが恐る恐る水の中に入っていく。
「ひゃぁ~冷たーい!」
「で、でも、確かに水の中の方が少しだけ暖かいよ」
「だけど、やっぱり冷たいよぉ~」
「うぅ・・・冷てぇ!」
「冷たいけど、このままじっとしてても仕方ないだろ・・・」
「確かに、自由時間がもったいねぇ」
「そうだぞ!お前ら遊べ!!プールの授業で遊べるのは今日だけなんだからな!」
そう言うと、清水先生はビーチボールや浮き輪をプールに向かって投げ込む。
「選別だ!思いっきり遊べ!
溺れても、先生が助けてやる。そのために水着着てるんだからな」
清水先生は白いパーカーをめくって、競技水着を見せる。
「そのために水着を着てたんですか~」
「んん?当たり前だろう、緊急時にプールに飛び込むためじゃなきゃ、何のために水着着たと思ってたんだ?」
「いや~・・・普通に遊ぶつもりかと・・・」
「お前な~・・・」
泉水の勘違いに清水先生は、あきれ顔になりながら片手で頭を抱える。
「アホなこと言ってないで、さっさと遊んでこい!」
清水先生はムッとした顔で、泉水の背中を叩き、プールに入るように促した。
「イテっ!
・・・みんな入ってるし、俺も入るか」
清水先生に叩かれた背中に痛みを感じながら、泉水もプールの中へ入っていく。
「泉水!遅えぞ!」
「そうだぞ!せっかくなんだから、さっさと来て遊ぶぞ!」
「まったく、先生の水着姿に見とれてんじゃねぇよ!!」
嫌みと共に男性クラスメイトが、ビーチボールをつかみ泉水の顔にめがけて投げつけてくる。
いつもなら体を翻して華麗に避けるのだが、水の抵抗に手間取りボールを避けきれず顔にクリーンヒットしてしまう。
【バンッ】
「ブッ!」
「ギャハハハ!顔面クリーンヒット!」
「まともに食らってらぁ!ダッセー!!」
「いつも攻撃避けまくってるのに、さすがの泉水様も、水の中ではザコですなぁ~。
ハハハ!!」
「テメェら、好き勝手言いやがって!!」
男性クラスメイトの言葉に怒った泉水は、何かないかと周りを見回し、近くに浮かんでいた浮き輪を掴むと、自分を笑いものにした者達に向かって投げつけた。
「喰らえ!!」
【バンッ!バシッ!ドカッ!】
「痛で!」
「ガフッ!」
「ンギャ!」
泉水の投げた浮き輪は見事に悪口を言った男子クラスメイトたちに連続でヒットした。
だが、勢い余った浮き輪は関係のない女子クラスメイトたちの方向へ。
【バシッ】
「痛!・・・ちょっとこの浮き輪投げたの誰!?」
「あ・・・わ、悪ぃ当てるつもりじゃな―――」
「謝ればいいってもんじゃないってぇの!!」
「そうよ!いい加減にしなさい!!男子!!」
「やっちゃえ!!」
浮き輪を当てられた女子クラスメイトを中心に、集団になってビーチボールや浮き輪を泉水たちに向かって投げてきた。
「ちょ!やめ―――・・・グハッ」
「泉水、反撃されてやんの!ダッセー・・・って、こっちまで―――・・・ウゲッ!」
「ちょっと、俺関係―――・・・ギャッ!!」
女子軍団からの攻撃に一方的にやられていた男子軍団だったが、やがて投げられたビーチボールや浮き輪を手にして、反撃に転じる。
「オリャー!!反撃だ!!投げまくれぇ!!」
「喰らえええ!!」
「ギャハハ!オリャ、オリャ!!」
「キャアー、投げ返してきた!!」
「男子なんかに負けるな!!」
「それ!それ!それ!!」
プールの一角は、男子軍団と女子軍団のボールと浮き輪の投げ合いとかし、悲鳴と笑い声の混ざったカオスな戦場と化していた。
そんな一団から離れた泉美と瑞希は、イルカ型の浮き輪に掴まり、少し呆れながらその様子を見ていた。
「うわぁ~・・・なんか大変なことになってるねぇ~・・・」
「まるで小学生のケンカね・・・いえ、そんなこと言ったら小学生に失礼ね・・・」
「あはは・・・確かに子供っぽいけど・・・」
完全に男子軍団と女子軍団の戦場と化したプールを見て、清水先生は頭を抱える。
「おいおい、お前ら・・・自由に遊べとは言ったが、ケンカしろとは言ってないぞ!!」
呆れた様子で、男子軍団と女子軍団の仲裁に向かう清水先生の背中を見ながら、泉美はイルカ型の浮き輪に掴まったままパシャパシャと、脚をばたつかせて遊ぶ。
「ん~・・・ねぇ、瑞希?このまま、浮き輪に掴まってのんびりするのもいいけど、なんかしない?
さすがに自由に遊んでいいのに、このまま時間がくるまでっていうのもつまんないよ?」
「それもそうね・・・」
話を振られた瑞希は、浮き輪から離れると、背泳ぎの体勢でスイーッとゆっくり泳ぐ。
「どうせプールなんだから、競争でもしましょうか?」
そう言いながら、瑞希は背泳ぎを止め、体を起こし真っ直ぐに立つと、プールの端を指さす。
「25メートルを全力で競争・・・というのはどう?」
「フフ・・・イイねぇ~・・・私、泳ぎには自信あるんだ~♪」
瑞希の提案に、泉美は微笑みながら同意する。
余裕のある笑みを浮かべる泉美に、瑞希はニヤリとニヒルに笑う。
「奇遇ね・・・私も泳ぎは得意なの・・・楽しみだわ。私に負けて悔しがるアナタの顔が」
「言うね~。
瑞希・・・だけど、その言葉、そっくり返すよ♪
私、向こうの世界で、泳ぎで瑞希に負けたこと一回もないんだ~♪」
「へぇ~・・・ますます楽しみだわ・・・初めて泳ぎで私に負けたアナタの悔しがる顔が見れるなんて・・・」
「そんなの、見られないよ・・・ハハハ!」
「その余裕の笑みがいつまで続くかしら?・・・フフフ!」
お互いに笑い合いながら、バチバチと火花を散らせる泉美と瑞希は、そろって25メートルレーンの端へ移動し、水泳での競争をする準備を始める。




