最終話
自分のセリフはちゃんと言おう。
「誰かと比べて!」
「また落ち込んで!」
気をつけ、礼、座るタイミング、立つタイミングをまるで軍隊のように練習させられ
歌は飽きるほど歌わされ卒業証書授与も台に上がるタイミング、1歩前に出る時の歩幅、礼をするタイミングを細かく覚えさせられた日々が過ぎ
とうとう卒業式の日がやってきた。
最初の方のセリフの人はまだ泣けなくていいな。
それが中盤になってくると泣くやつが出てきてそれにつられてどんどん泣いていく。
だから歌とかもまともに歌えなくなってくる。
5曲も泣かずに歌える人はあまりいない。
「わたし達はいま!」
清水音羽
「旅立ちます!」
自分の全力の声を出した。
わたしはそんなに泣けなかった。
この卒業式が終わったらお別れなんだ。
この学校の校舎とも先生とも。
そう思ってくると虚しい。
でも泣けない。
あまり涙脆い性格ではないのかな。
そして卒業式の中心である門出の言葉が終わり
体育館を出る時は在校生や先生達、来賓から拍手されこの場から去った。
――――――
坂下先生
「今から卒業証書の筒を渡しますけど鬱陶しいからそれで遊ばないようにね。」
教室に戻ったら花束や卒業証書の筒を貰い
クラスみんなで集合写真を取ったり
クラスメート一人一人がみんなにお別れの言葉を言ったりした。
「ぼくを最後まで2組にいれていただきありがとうございます。」
「このクラスは2番目に楽しかったです。」
中には言ってる途中に泣く人もいた。
清水音羽
「1年間ありがとうございました。それと2年生のころ転入したばかりで不安だった私をフォローしてくれたひとありがとっ・・」
やばい。さっきまで涙が出る気はしなかったのに。急に涙が出てきた。
「お?!泣いちゃう?!」
「めっちゃ可愛いんだけど。」
清水音羽
「ありがとうございました!この学校は今までで1番楽しかったです!高校でも人付き合い上手く出来るように頑張ります!」
目が腫れるくらいに制服の袖で1回目元を擦り
また泣くのを我慢してそう言った。
大石大地
「前の人がいいこと言うとキツイんだけど・・しかも俺が最後でしょ?」
わたしの後の大地が困ったような表情をして文句を言いながらそう言っていた。
「早く言えよ!」
「お前に感動するような言葉期待してねえから!」
大石大地
「お前ら絶対俺のアンチだろ!」
―――――――
「一緒にカラオケ行かない?」
「いいねー!卒業式で歌った曲歌おう!」
「本番で泣いちゃって歌えなかったもんねー!」
午後の2時頃
それぞれが友達と写真を取ったりしてはしゃいでいた。
「先生一緒に写真取ろー!」
「snowで加工してあげるからー!」
わたしは一通り写真を取り学校を去ろうとした。
「ねえ告んないの?!」
「もう会えないんだよ?!」
大石大地
「誤解だって言ってるだろいい加減にしろ!」
卒業式だとこういうのめっちゃ騒ぐやつが居るんだよな。
まあ言えないよね。
告ったけど振られたなんて。
実際に自分の気持ちなんて分からないんだけど。
わたしはゆっくりと歩いて門を出た。
清水音羽
「あ、・・」
白澤光輝
「お!四日ぶりだね!卒業おめでとう!」
すると門の近くで塾の勧誘をしてる先生
ボールペンと消しゴムとチラシが入った包を配っていた。
付属のボールペン目当てで中身捨てたことあるけどボールペンもインク薄くてゴミだったな。
清水音羽
「在校生狙って勧誘ですか?」
白澤光輝
「仕事だからねー。」
清水音羽
「そうですか。・・・先生」
白澤光輝
「ん?なに?」
清水音羽
「なんで塾の先生やろうと思ったんですか?」
白澤光輝
「・・・・」
わたしが質問すると白澤先生は今まで見たことのない表情をして黙り込んだ。
白澤光輝
「現実逃避するためだよ。」




