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23/30

23.美術室で

 文化祭が近付くにつれ、時折右手がズキズキと鈍く痛んだ。精神的に圧迫されている気がする。

 文化祭まであと三日しか残っていない。それなのに、犯人はまだわかっていなかった。佐川を泳がせていても、残りの一人に確信が持てなかった。警戒しているのか、あれから動きはない。黒幕も大人しくしていた。

 真弓の忠告通り学人先輩に注意を向けていたが、変わったところはなかった。何も変化がないまま、時間だけが過ぎていく。聖さんたちは裏で動いているようだったが、僕には知らされていない。知らない方が安全だから、という配慮からだった。今僕にできることは、歌を仕上げることだけだ。

 何か起こるとしたら、文化祭前日か当日になるだろうことは予想できた。





 固定された右手が煩わしかった。上手く腕が振れない。万全の体調ならばもっと速く、もっと長く走れた。でも、今はもう息が切れてきた。

 足手まといになっている。

「由宇、美術室に入るよ」

 並んで走る聖さんが教室を指で示した。教室に入ると逃げ場がなくなる。しかし、このまま走っていても捕まることは確定していた。

 それなら、聖さんの指示に従う方が良いに決まっている。

 油絵特有の臭いが漂う教室で、薄いカーテンが靡く窓側へと寄った。

 開かれたドアから、捕獲者が姿を現した。

「ゲームオーバーだ、伊集院」

 ニヤリと楽しそうに笑う顔は、本当の彼を表しているようだった。

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