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帰ってきた

 家族みんなの帰りが遅い日の出来事です。


 予定ではクラスの運動会打ち上げに行っている小にいちゃんが八時過ぎに、旦那が九時頃、そして大にいちゃんはバイトで十時近くなる。


 つまり、この日は八時過ぎまでは私とるー君二人きりでした。


 さて我が家は二階にありまして、玄関を入ったらすぐに階段を上がります。そして常にるー君の脱走の危険を抱えているので、階段の一番上に引き戸をつけ、それをナンバー式の南京錠で二階側からいつも施錠してあります。


 つまり、帰ってきた人は二階にいる人に南京錠を開けてもらわなければ二階に入れないのです。


 私はすっかり時間を忘れ、八時過ぎにお風呂にはいろうとお風呂場に踏み込みました。



 するとすぐにるー君がお風呂場にやってきました。


 るー君、今や絶対に私とお風呂に入ろうとしないのでお風呂に入りに来たわけではなさそうです。どうやらお話をしに来たようでした。



「大にいちゃん、おでかけ」


「うん、いないよ」


「パパ、おでかけ」


「パパもいないよ」


「小にいちゃん、おでかけ」


「そうだよ」



 そこまで言ってからふと思い出しました。


 小にいちゃん、帰ってくる時間だ。


 まあ短時間なら階段開けておいても、玄関の鍵さえしっかり管理すれば脱走することはないだろうと階段の南京錠を開けに行きました。



 ーーーーあれ?


 階段の引き戸にはめ込まれたすりガラスの向こうに人影が。



「ただいまー」


 あっ、小にいちゃんだ。帰ってきてたんだ!


 ということは、るー君は小にいちゃんが帰ってきたことに気がついて、私を呼びに来てくれたんだね。


 すごいな!


 これはつまり、


 ①誰か帰ってきて引き戸を叩いてる

 ②るー君は自分では南京錠が開けられない

 ③開けてあげないと引き戸の向こうにいる人が入れない

 ④引き戸を開けられるお母さんを呼ぼう


 おにいちゃんのノックからここまでを連想できたということです。


 これって実はすごいことです。


 彼は応用が大の苦手なのです。ひとつの事から次に何が起こるかをつなげて考えることができません。


 たとえば最近はめっきり減りましたが、ひとりで家から出ていってしまうことだって、「鍵が開いてる」「好きなところに行ける」までは想像できても、「ひとりで出ていったらお母さんに怒られる」というところまでは想像がつながらないので衝動的に出てしまうのでは、と言われていたのです。


 そんな彼が、これだけの事柄をつなげて考え、行動することができた。

 るー君の成長がはっきりと見えます。


 あとで目一杯るー君を褒めてお礼を言いました。褒められてうれしそうな顔ったら!


 こうやって時折見せてくれる彼の成長にパワーをもらっている母なのでした。




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