表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『世界を統べた覇王と一心同体になった俺は最強の仲間【駒】を揃える』  作者: Lark224a


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/35

第35話 震える心、その先に。

闇金で交わされていた会話の内容は、水瀬にとっては初めて耳にするものばかりだった。自分の装備の件、そして依頼の存在そのものに至るまで、何一つとして事前に知らされておらず、その全てが“自分の知らないところで進んでいた事実”として突きつけられている。


ディアブロはその件について語るつもりなど最初からなく、あえて何も告げないままこの日を迎えていた以上、この場で水瀬が違和感を覚え、問いを投げるのは当然の流れだった。


「どういうことなの?私、何も聞いてないんだけど‥‥。」


その声には、戸惑いと不安が入り混じっていた。責めるような強さはない。だが、置いていかれたという感覚だけが、確かにそこには滲んでいる。


「それは何も言ってないからな。そもそも知らなくてもいいことだからな。」


あまりにも淡々とした返答だった。取り繕う様子も、言葉を選ぶ様子もない。ただ事実だけを突きつけるその言い方は、余計に距離を感じさせる。


「いや、でも依頼を受けるって言ってたでしょ?パーティーを組んでるんだから、どういう依頼なのかは知りたくはあるかな。」


水瀬の言葉は控えめだったが、その奥には確かな意志があった。仲間である以上、共有されるべきものがあるはずだという、ごく当たり前の感覚――それを否定されたくないという想いが滲んでいる。


「いや、それも必要ない。この依頼に関してはベガもお前も連れて行く気はないからだ。」


その一言は、あまりにも容赦なく、水瀬の期待を切り捨てた。


水瀬は一瞬、言葉を失った。


頭では理解していた。自分の力がまだ未熟であることも、戦力として足りていないことも、嫌というほど分かっている。それでもパーティーを組み、同じ場所に立ち、同じ方向を向いて進んでいるのだと、どこかで信じていた。


だが、現実は違っていた。


「どうして?何で、私たちを除外するの?た、たしかに私は全然弱くて、まだまだだって分かってるけど、私達ってパーティーメンバーで仲間なんでしょ?何で『役立たず』みたいな扱いをするの?」


言葉が少しずつ乱れていく。必死に取り繕おうとしているはずなのに、抑えきれない感情がそのまま表へと滲み出し、水瀬は逃げるように自分の体を強く抱きしめたまま、指先に力を込め、腕に爪が食い込んでいることにも気付かないほどに震えていた。


――思い出したくないはずの記憶が、抗う間もなく脳裏に浮かび上がる。


魔力だけはあるのに、それを使いこなすことも出来ず、何の役にも立たないと笑われていたあの頃。才能がないと決めつけられ、陰で囁かれ、表では同情の視線を向けられ続けた日々の中で、何も出来ない自分と、必要とされない自分という現実だけが、嫌というほど心に刻み込まれていった。


――役立たず。


そのたった一言が、まるで呪いのように心の奥深くにこびりつき、どれだけ時間が経とうとも剥がれ落ちることはなく、気付けば今この瞬間にも、過去と同じように自分を縛りつけている。


結局、自分は何も変わっていないのではないか。


今もこうして、また同じように“必要ない存在”として切り捨てられようとしているのではないかという疑念が、じわじわと胸の奥を締め付けていく。


「‥‥勘違いするな。」


低く、しかし確かな重みを持った声が落ちる。


「お前とベガの力がないから連れていかないわけじゃない。お前も依頼内容を聞いていただろ?この依頼者は国の偉い立場の研究者だ。そんな面倒くさい相手に出来るだけ情報は渡したくない。それは、お前の白の魔法もそうだが、ベガの存在も同じだ。


お前たちは、まだ自分の力のコントロールはもちろんだが、その力がどれほど貴重で価値のあるものなのかを理解できていない。


ここでお前たちの存在が、そんな国の連中に露呈するようなことになれば、俺の夢は遠のく。だから、連れて行かない。分かったか?」


ディアブロの言葉には一切の迷いがなく、その声音は冷静で合理的でありながら、決して揺らぐことのない徹底した意志を内包していたが、その判断の裏にあるのは決して仲間を切り捨てるための冷酷さではなく、むしろ余計な危険や干渉から遠ざけるための“守るための選択”であることを、水瀬は遅れて理解していく。


その真意に触れたことで、水瀬の体を支配していた震えは徐々に収まっていったものの、長く心に刻み込まれてきた不安や自己否定までは完全に拭い去れるはずもなく、胸の奥にはなお拭いきれない揺らぎが、微かに残り続けていた。


「本当に?私は‥‥役立たずじゃない?ちゃんと、役に立ててる?」


確かめるような声だった。答えを知っているはずなのに、それでも言葉として欲してしまう――そんな弱さが滲んでいる。


「俺は役立たずな人間を仲間になどしない。」


即答だった。


「今は役に立てていなくても、お前は将来、ちゃんと俺の役に立てる。だから、早くその力を使いこなせるようになれ。それが、今のお前のやるべきことだ。」


決して甘い言葉ではなく、慰めでも優しさでもないそれは、だからこそ嘘や誤魔化し、同情といった曖昧なものを一切含まない“事実”としてまっすぐに突きつけられ、水瀬の胸の奥へと深く沈み込むように響いていった。


気付けば水瀬はゆっくりと息を吐き出しながら、胸の内に溜まっていた重たい何かが、ほんのわずかではあるものの確かに軽くなっていることを感じていた。


「‥‥もっと言い方があるでしょ。そんな冷たい言葉しか言えないなら、春宮には一生彼女なんて出来ないね――ふん。」


わざとらしくそっぽを向くその仕草には、先程までの陰りはもう残っていない。


「彼女なんていらん!!大体、お前だって彼氏なんていないだろ!!」


即座に返された言葉に、水瀬は思わず小さく肩を震わせ、つい先程まで張り詰めていた空気は、まるで糸が切れたかのように一気に緩み、重苦しく沈んでいた雰囲気もいつの間にか霧散していく中で、気付けばその場には、先程までの緊張が嘘のように、いつも通りの軽い掛け合いが自然と戻ってきていた。


その日から三日が経過した頃、静かに流れていた時間を切り裂くように、再び闇金からの電話が入る。


提示した条件は全て通った。


だが、それでもなお、護衛としての役割を果たせるだけの実力があるのかを確認したいという意向が示され、ディアブロは“力の証明”を求められることになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ