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第256話 守山奏多――欠けている理想主義者の愛

遠い場所。

ここではない違う摂理の世界――地球。


五月晴れのさわやかな風を頬で感じ、守山一家は高台から街を見下ろしていた。


「きれー♡」


はしゃぐ3歳の美緒。

その様子を、奏多は大好きな妻“真奈”を優しく抱き寄せ見つめていた。


感じる大切な妻の体温。

穏やかで愛おしい空気。

香る名もなき花々の蜜の匂い――


満たされる空間。


だが。

去来する――虚無感。


(…ああ、これは…幸せの時…でも……虚像だ)


なぜかよぎる想い。

そして背筋に走る嫌な感覚。


わからない。

幸せの絶頂――まさに今奏多はその“さなか”にいるはずなのに…


「あなた、良いわね、ここ。…観光スポットなのかしら?」

「…うん。でも穴場みたいだね。…人がいないし」

「ふふ。あなたらしいわね。…さあ、お弁当食べましょ」


そっと触れる唇。

照れながらも可愛い顔を向けてくれる最愛の女性。


だけど。


奏多の瞳に映るその光景――

徐々に色を無くしていったんだ。



※※※※※



わからない


分からない、分からない――ワカラナイ――



…俺は


俺は誰なんだ?


俺はいったい…


『…美緒は俺のモノだ…お前には……渡さない!!』


知らない声。

おぼろげなその姿。


でも。


心から離れない、魂からの純真な願い――狂信。


まるで呪い。

消えぬ知らない言葉。



でもそれは奏多をいつまでも捉え――離すことは無かった。



※※※※※



あれから10年。

守山奏多は温もりの残るベッドからゆっくりと抜け出した。



ベランダに出る。

頬を舐める、肌寒さを感じさせる5月初旬の風。


動く指に、揺らぐ煙を上げるタバコの赤い火が目を引く。


「…ストレス…なのか?」


タバコを吸いこみ、大きく息を吐く。


ゆっくりと立ち上る煙を見つめ、奏多は独り言ちる。



立ちあげた自分の会社『レリウスリード』


やっと社会的信用を得て、大切な仲間も揃い。

ついに自社初のRPG『魔に侵されし帝国』――そのプロジェクトが動き出した途端。


優斗と大地の突然の離脱、そして李衣菜の引き抜き。

奪われたプロジェクト。


まさに激震。

会社の存続すら危ぶまれる危機。


奏多は大きく息を吐き、窓ガラスに自分の体を預けた。


「…本当に恵まれていたんだな――いなくなって、失って気づくとか…」


零れる自嘲。

滲む涙。


奏多は煙草を灰皿に押し付け、未だ暗い空を見上げた。


(…しっかりしろ…まだ終わってない…真奈、そして美緒…俺は二人を守るんだ)



悲しい決意。

そして崩れ行く奏多の希望、世界。



訪れる優しい世界の終焉。


それは始まり。

逆襲の、いや――執着の物語。



※※※※※



2年後――


奏多と真奈は。


細工され、効かなくなったブレーキが原因でその生涯を閉じる。



死の瞬間、全てが覚醒する。

思い出した“絶対者”だった自分と鳳乙那との約束、そして繰り返す愛を試す物語。


(…そうか…そういう事か…)



原神――すべての大元。

その心、理解できない“調停者”を引き継いでいた奏多は――


目覚めそして。


ついに“渇望”と言う感情を取り戻す。



(美緒…美緒…美緒……俺の娘――そして)


世界が壊れ、時が激しく逆流を始める。


(真奈…そうか…君は――美緒の欠片…今――最後の封印、解こう)



感情を理解できない原神の欠片、守山奏多は。

欠けていた、あまりにも理知的な奏多は。



その情念を思い出す。



(渡さない…鳳乙那…お前には絶対に渡さない――美緒は――俺のモノだ)



世界の法則がその意味を無くした。


彼の原案。



全てが無に帰し――


新たに紡がれる物語。



全ての次元を超える摂理の再構築。


その起点となる美緒。



全てがつながっていく――


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