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第20話 アルディ捕獲作戦2

貧民街の密集地にその建物はひっそりと存在していた。


入り組んだ道の奥、知らなければ来られないようなそこは、まるで商売をしているようには見えないほど荒れ果てた外見をしていた。


道具屋『ザイール』


いわゆる『まともではない客』を顧客とする、いわくのある道具屋だ。

ここでは法で禁じられた禁忌品も裏のルートで揃えられていた。


「……ふん。そういえば今日だったな」


するりと音もなく現れたレルダンに、店主であるドレイクはぶっきら棒に言い放つ。

事前に聞いていたのでレルダンの殺気にもどこ吹く風だ。


「相変わらずかび臭い店だ。しばらく使わせてもらう」

「……エールくらいしかねえぞ」

「不要だ」


レルダンは一人この店を訪れた。


事前の準備は済んでいるとはいえ、いきなり全員で訪れるほど彼は楽観的ではない。

何より今回の作戦は絶対に失敗は許されない。


「っ!?誰か来る」

「……ああ、リーディルの連中だ。今日納品だからな」


レルダンの気配察知に3人の男が引っ掛かっていた。


「……貴様…」

「おっと。こいつは俺の領分だ。てめえの指図は受けねえ。心配するな。お前たちのオーダーよりの先に結んだ契約だ。よけいな事は言ってねえ。2階で待っていろ」



※※※※※



「よう、ドレイク。『ブツ』は届いたか?」

「ふん。俺を誰だと思っている。裏庭だ。金貨200枚。金が先だ」

「ちっ、相変わらず愛想のねえ奴だ。ほらよっ。……おい、お前らブツを荷馬車へ運んでおけ。俺はこいつに話がある」

「「へい」」


金貨がたっぷり詰まった革袋を一瞥し、ドレイクは目の前の男、リーディル騎兵隊の小隊長マルクに視線を向けた。


「おいおい、良いのかよ確認しなくて」

「問題ない。抜いているようなら取引は2度としねえ。それだけだ」


マルクは目の前に佇むドレイクを値踏みするように目を細める。


「……最近不穏な事件が起こっている。何か掴んでいるか?」


「ふん。いつから俺は情報屋になったんだ?転職したつもりはねえが」


「……まあいい。だがあまり調子に乗るなよ?ザッカートどもは姿をくらました。てめえは価値があるから残しておいてやってるんだ。忘れるな」


「……ふん」



※※※※※



馬の嘶きが聞こえ荷馬車の音が徐々に遠ざかっていく。

消えゆく人の気配にレルダンが顔を出す。


「……そんなおっかねえ顔すんなよ。あれでもあいつらは上客だ。まあ、お前らほどじゃねえけどな」


「事件とはなんだ」


「盗み聞きとは感心しねえな。でも今日で解決すんだろ?アルディだ」



「っ!?……そうか。貴様、うちに来い。俺が取り持とう」

「へっ、今度は懐柔か?……確かに潮時ではあるがな……だが指図は受けねえ。俺が決める。……お前らの雇い主は本当にゲームマスターなのか」


「ああ」


ドレイクは天を見上げ思考を巡らす。


(まさか伝説のゲームマスターが実在したとはな……おもしれえ。クソッたれな俺に機会が訪れた…か。だが……)


「この目で見てえ」

「好きにしろ。マスターは5時に夕闇の調べ亭に来る」

「そうさせてもらおう」


カラン。


そのタイミングでドアが開く。


「レルダン、あいつやべえぞ。知らねえスキルを使っている。人を服従させる何かだ。大の大人が言いなりになっていやがった」


「……『偽りの言霊』――美緒さまの言っていた通りだな。奴の所在は?」


「今は自分の屋敷だ。多くの女も一緒だ。…スキルを張り付けてある。問題ねえ」


モナークの報告にレルダンは小さく頷いた。


「……レイルイド達も問題ないようだな。……ドレイク。秘匿事項だ。2階を使わせてもらう」

「ああ、分かった。好きに使え」


「……覗くなよ?俺はお前を殺したくない」


「おっかねえな。俺だって死にたくねえよ。おい、モナーク付き合え」

「おっ?!新作だな?……見せてくれ」



※※※※※



作戦決行前――ギルド



「カシラ、順調だ。奴の所在も予定通り。……だがどうやら奴は俺たちがあそこを後にしたくらいからスキルを乱発しているらしい。騒動も起きているようだ」


レルダンから通信石での連絡を受けサロンでザッカートは美緒に報告を行っていた。


「ありがとうザッカート。あいつ、好き放題しているのね。……具体的にはなんて?」

「……あまり気分のいい話じゃねえ。カシラは知らねえ方が良い」


ザッカートは意味ありげにエルノールに視線を投げる。

何となく察知したエルノールは美緒に話を始めた。


「美緒さま、そろそろお召し替えを。もちろん衣装は却下です。客として潜入するためファルマナに平民の服を用意させています。もちろん私も」


「えっと、うん。分かったよ。ザッカート、また報告あったら教えてね」

「おう。さっさと着替えてこい」


美緒はエルノールに促されサロンから自室へと移動していった。


「女をてめえ欲でこき使うとはな。……マジでぶっ飛ばしてえ」


その様子を横目にザッカートは独り言ちた。



※※※※※



「似合う、かな?」


美緒は自室でレリアーナの手を借り平民が好んで着るありふれた服に着替えていた。


「………かわいい♡……はっ!?う、うん。……ねえ美緒、フードは?」

「えっ?ないけど。……これ平民が着る服なんでしょ?目立たないよ?」


若干ゴワゴワしているその服はどこでも目にする地味な色の服だ。

スカートも長めだし肌の露出は少ない。


しかし今の美緒はどんな服でも可愛く見えてしまう。

とんでもなく可愛い。


つまり異常に目立つ。


「美緒?あなた可愛いの。分かる?……美緒みたいな平民、いるわけないでしょ!?フードは絶対使うこと。顔を見せてはダメ」


「えっ?かえって怪しくないかな?」


「怪しい方がましです。……はあ、本当に不安しかない。絶対連れていかれそう。……あなた街とか歩いたことないよね?」


「う、うん」


そんな押し問答をしていると準備を終えたルルーナとミネアが美緒の部屋を訪れた。

一気に艶やかになる室内。


「準備できたかにゃ?」

「うわー、美緒可愛い♡」


キラキラ光る衣装に包まれしっかりと化粧を施したミネアとルルーナ。

スタイルの良い二人は色気が増しましだ。


「ふわー♡ミネアもルルーナもめっちゃ可愛い♡……それに、い、色っぽい♡」

「うあ、マジか。……ねえ二人もたいがい危ないよ?」


「うにゃん♡」

「ふふん。私も捨てた物じゃないでしょ?まあ、美緒にはかなわないけどね」


うう、眼福すぎるっ!!


以前は衣装のみだった。

装飾品で飾り、ルルーナ渾身の化粧が相まって彼女たちは非常に美しく仕上がっていた。


美緒は二人の姿を見て、以前スチルがなかったことを思い出し。

目に焼き付けようとまじまじと見つめる。


「美緒さま、準備はよろしいですか?」


そんなタイミングでドアをノックしエルノールが入室を求める。


「っ!?は、はーい。どうぞ」

「失礼します……うおっ!?……み、美緒さま?……か、可憐だ……」


入室したエルノールは真っすぐ美緒に近づくと跪き、そっと手を取る。


「ひうっ!?え、エルノール?えっと……」

「私が守ります。誰にも指一本触れさせません。美しい私の美緒さま……はっ!?」

「えっ!?『私の美緒さま』?……あうっ♡…もう、からかわないで。そ、その……恥ずかしい」


余りの可愛らしさに思わず我を忘れ、思いを零してしまったエルノールは真っ赤になり固まってしまう。

もちろん美緒も顔を赤らめモジモジとしている。


「ねえミネア」

「なんにゃ」

「私たちお邪魔かな」

「うにゃん」



※※※※※



作戦決行間近の午後4時40分。

準備を整え全員がサロンに集合した。


「ほう、カシラは何を着ても似合うな。ルルーナとミネアもばっちりだ。……お前いつの間にそんなに色っぽくなったんだ?」

「も、もう兄さん、何言ってんの?……ま、まあ嬉しいけど……」


兄の素直な言葉にルルーナは照れて顔を赤らめる。

うん。

ルルーナ、スッゴク可愛いよ!


「カシラ、どうやら(やっこ)さん、すでに酒場で飲んでいるらしい。少し早いが作戦を始めねえか?」


「っ!?は、はい。……皆さん準備はいいですか」

「うん」

「うにゃん」

「「おう」」


肯定の返事を受け、美緒はエルノールを見上げる。


「ではまいりましょうか。皆、近くに頼む。私の転移の効果範囲は2メートルだ。それでは行くぞ」


魔力の残滓を残し美緒たち7人は姿を消した。

いよいよ作戦の本番が始まる。


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