帰ってきた日常
愛され聖女コミックス第一巻が本日・2026年3月1日に発売となります。
収録はミアプラキドス大暴れ初弾(ラングレン和解)です。エヴァルトとスフィアのデートも収録済です。特典情報はこちらになります。
描き下ろし特典は、アニメイトさん池袋本店様では、東西桜餅ごろんスフィアとちょこんリリー、メロンブックスフロマージュ様ではお雛様のスフィアとエヴァルトです。よろしくお願いいたします。
https://x.com/FlosComic/status/2032033862386164184?s=20
また攻略対象異常の第八巻が4月1日に発売となります。普通の人間がヤンデレになっていく話なのですが、8巻でようやくヤンデレが顕在化しているのでよろしくお願いいたします。だいぶ百合要素の強い回です。よろしくお願いいたします。
「聖女様は、こちらに借りがありますよね」
放課後の職員室でテオン先生が笑みを浮かべる。
「はい‼ テオン先生にはいっぱい感謝してますよ‼ リリーのお母さんのこと、守ってくださって‼」
「なら話は早いです。丁度試したい魔法があったので、その実験台になっていただきたく」
「ぜひぜひ‼」
『待て待て待て待て』
私がうんうん頷くと、同じ速度でそばにいた亡霊王こと剣王こと初代王様こと、色んな二つ名のあるラスさんが首を横に振った。がしゃんがしゃんと鎧が響く。
『今のさ‼ は、は、犯罪の導入じゃない? 貸し借りを持ち出した話題って、年上が年下にしてよいものではないよ⁉ 国のやり取りではないかい⁉ 我、死人だけどさ、時代関係なく駄目ではないの⁉ な、なに⁉ びっくりしたんだけど、こういうこと駄目だよってさ、途中で言うかと思ったの。防犯の講習かと思ったの。何実験台って』
ラスさんが私とテオン先生の間に割って入る。最近のラスさんはいつも驚いている。この間、不審者に備えた訓練をしたい、なんて話をアンテルム王子がしたとき、ラスさんは自分が不審者役をする前提でいたらしく、アンテルム王子が否定しラスさんを教員役だと説明すると『どぅええええええええ⁉』と驚いていた。
「彼女は聖女様ですからね、普通の生徒とは異なりますよ」
テオン先生がラスさんを宥めた。
『いやいやいいやいやまだ、学生‼ 子供ッ‼』
「まぁ、まぁまぁそんな危険なものではないですし、ほら、逆に彼女の危険を知るための実験でもあるので」
『いやあああああああああああああありとあらゆる危険なものはそういう前置きがつくよ? しかもお主さあ、人間のこと、なんとも思ってないフシあるよな?』
「亡霊王と比べたら確かに、俯瞰的過ぎるかもしれませんね」
『いやいやいや、こっちが繊細みたいな言い方しないでくれるか⁉ 亡霊だからな』
「確かにラスさん、ちょっぴり繊細なところありますよね」
『うそでしょぉ⁉ お主味方じゃないの⁉』
「こちらとしても目に見えないものを可視化させ、人間関係を把握していきたいという考えがあるので、国として」
──だから、協力してくれますよね? 聖女様。
テオン先生は怪しく笑う。
ラスさんは心配しているけれど、先生は先生だ。私は「ハイッ」と大きく頷いた。
ーーーーーーーーーーーー
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
テオン先生の事件に参加して早々、私は絶叫した。
横ではリリーが自分の耳を押さえて首を傾けている。ここはいつも授業を受けている教室。そして教室の真ん中には、大きなガラスの立方体が設置されていた。
そしてそのガラスの立方体の中には──大福くらいの大きさの私、リリー、ルモニエちゃん、エヴァルト、ラスさんのぬいぐるみが入っていた。
いわゆる「ぬい」だ。
テオン先生の実験は、人間の本能を読み取り、ぬいぐるみに投影する魔法の実験だった。
自白させる魔法だとかけられた相手に心の負担が強く出るので、相手の本音や本能をコピーしぬいぐるみに分離させ、その生息を研究できるようにするらしい。
ラスさんは『人権』と怯えていたが、『一応我も参加するわァ』と参加した。ルモニエちゃんとリリーとエヴァルトは元々参加予定だったけど、リリーとエヴァルトは私の参加を知らなかったらしく「話が違う」と少しテオン先生と揉めていた。
そして私たちのぬいが巨大な虫かごというか、ガラスの箱庭に出現したわけだけど……。
「かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
ぬいエヴァルトはずっとぬいの私にタックルしたり噛んでいた。
それもゲームにあったえっちな甘噛みではなく本当に大きな肉をムシャムシャしてる感じの噛み方だ。ぬいの私が少し歩くたびに後ろからタックルして倒れたぬいの私を見て逃げた後、ぬいの私が立ち上がってスキップし始めるとしばらくしてまたタックルしてくる。
ルモニエちゃんのぬいは四隅にはさまり体育座りをしてジーッとそれらを見ていて、ぬいのラスさんはおろおろしていた。
ぬいのリリーは生きてる私の目の前に鎮座して、私を凝視しながらゆっくり横揺れしていた。
太陽光で揺れるおもちゃみたいな揺れ方でかわいーと思っていたら、生きてるリリーは死んだような顔で「ちがう……ちがう……」をしてるし、エヴァルトも首を横に振り「ちがう……ちがう……」と繰り返していて、何とも言えない空気が広がっている。こんなに可愛いのに。
「みんな持って帰りたい」
「駄目ですよ聖女様、変に意思を持って攻撃したら大変なので」
「えええええ大事にしますよ⁉」
「違いますよ聖女様が攻撃するのではなく聖女様にこの子たちが攻撃してしまうからです」
「誰がですか」
「このぬいぐるみたちが」
「えええ私攻撃されちゃうんですか⁉ 嫌われてるんです⁉」
「いいえ。成長途中の子供は噛んで存在を確かめるでしょう。それとマーキングもあるでしょうね。まぁ、普通に甘えている個体もいますけど」
テオン先生はぬいリリーを見た。
私はぬいリリーの横揺れをまねる。
「ねねえリリリリリー‼ 可愛いですよ‼ 揺れてる‼」
「……うん、良かったわね」
生きてるリリーは元気がない。どうしたんだろう。ぬいリリーが現れ生きてる私のもとに突っ込んできてからというもの、「もういい、もういい」と言ってずっとこの調子だ。今日一緒にお風呂に入ってあげよう。お風呂で沈んでたら大変だし。
「お~かわいい、エヴァぬいさんは美味しいですか~? おいしおいし」
私はぬいエヴァルトに声をかける。するとぬいエヴァルトはこちらに気付いた。さっきまでずっとタックルしてて気づかなかったらしい。てっちてっちとこちらに駆けてくると、ドンッと突っ込んできた。
「すごいね~」
「出てこようとしてる」
ルモニエちゃんがボソっと呟く。
「お外出たいんですかね?」
「食べたいんじゃない?」
「何をです?」
聞いた途端、ドカンと音がした。エヴァルトがふらついて壁に当たったらしい。
「大丈夫ですか⁉」
私は慌てて駆け寄るが、エヴァルトは首を横に振る。
「大丈夫じゃない」
「えええええ今治します!」
「治さなくていいから……もう、何も見ないでほしい」
「な、何をです?」
「僕」
「それは無理ですよ⁉」
即答するとエヴァルトは、目をぎゅっと閉じた後、するするとしゃがみこんだ。
後ろではドンドンと窓ガラスにぶつかる音が響く。エヴァルトのぬいが出ようとしている。リリーのぬいはこちらを見てずっと首を横に振り、生きてるリリーは顔を覆う。ルモニエちゃんとラスさんは……いつも……どおりだろうか?
私は、帰ってきた日常を実感しながら、魔法実験を楽しんだ。
愛され聖女コミックス第一巻が本日・2026年3月1日に発売となります。
収録はミアプラキドス大暴れ初弾(ラングレン和解)です。エヴァルトとスフィアのデートも収録済です。特典情報はこちらになります。
描き下ろし特典は、アニメイトさん池袋本店様では、東西桜餅ごろんスフィアとちょこんリリー、メロンブックスフロマージュ様ではお雛様のスフィアとエヴァルトです。よろしくお願いいたします。
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よろしくお願いいたします。
また攻略対象異常の第八巻が4月1日に発売となります。普通の人間がヤンデレになっていく話なのですが、8巻でようやくヤンデレが顕在化しているのでよろしくお願いいたします。だいぶ百合要素の強い回です。よろしくお願いいたします。




