表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/28

ヒロインだって悪役だって

本日からKADOKAWAさまよりカドコミ(WEB・アプリ)とニコニコ静画にて本作のコミカライズがスタートします‼

カドコミ(WEB)

https://comic-walker.com/detail/KC_006932_S/episodes/KC_0069320000200011_E

ニコニコ静画

https://manga.nicovideo.jp/comic/74034


詳細は活動報告よりご確認ください。

 昼間のダンスのレッスンを終えた私は、お母さまの部屋へと駆けた。屋敷のあちこちを探して、とうとう広間でお母さまの姿を発見した私は、大きな声でお母さまを呼ぶ。

「お母さま‼」

「なあに」

 お母さまは険しい顔でこちらを振り返った。

「エヴァルト・ジークエンドという方の名前を知っていますか、お母さま!」

「いいえ」

「将来、私が結婚する旦那様の名前です」

「スフィア、貴女はいつもはしたない、落ち着きがない、常識がないと思っていたけれど、とうとう正気すら失くしてしまったのかしら」

 お母さまは未来の娘の旦那様の名前を聞いても、眉一つ動かさず淡々としている。

「ワルツを踊っているときに鏡を見て、分かったんです!  私がスフィアであると」

 今日私は、前世の記憶を思い出し、この世界が乙女ゲームであることを知った。内容はほぼ魔法シンデレラ。今までお母さまはクールがすぎるなと思う所があったけど、継母補正が入っているのかもしれない。シンデレラがモチーフだから。

「あらそう。この十三年間、貴女は自分がどんな名前か分からず生きていたということなの?」

「いいえ、私はスフィアです!  しかし同時に、この世界の救世主のスフィアでもあるのですよ!」

「そうね。貴女はスフィア。良かったわね。でも貴女は十三年前からスフィアなの」

 お母さまはげんなりした顔で頷いている。

 正直今のお母さまに、乙女ゲームに出ていた意地悪な継母のような雰囲気はない。

 というか、お母さまはいつもゲンナリした様子で私と接する。ゆっくり眠れるように毎晩顔の真横で子守唄を歌っているけど、効果がないらしい。

 また別に作戦を考えないとな……と困っていれば、義妹であるリリーが広間に飛び込んできた。

「お母様‼ どうかわたくしとスフィアとのレッスンを分けてくださいまし‼ この女との生活なんて無理ですわ!」

 義妹のリリーは早々にびしっと扇子を私に突き付けてくる。

 今日も妹が元気でお姉ちゃんは嬉しい。

 彼女もゲームではスフィアを虐め、紅茶がぬるいとか顔が陰気臭いとか、無能とか役立たずとか色々なレパートリーをもってスフィアに悪口を言っていたけど、今はなんか、生活に対する文句が多い。

「なんで!? お姉ちゃんですよ⁉ 私リリーのお姉ちゃんです‼」

 リリーに反論するとリリーは「だからなんですの‼ 姉だから何でもしていいと思ったら大間違いですわ‼」と睨んできて、お母さまに向きなおった。

「聞いてくださいお母さま!  スフィアはワルツを教わっている時間、唐突に鏡の前で立ち尽くしたと思えば、リリー、シッテルゥ? ワタシィ、エヴァトケツコンデキルンダヨォ!  などと襲い掛かってきましたの!  明らかに気が狂っておりますわ!」

「えぇ、頭を撫でただけじゃないですかぁ……襲い掛かってないですよォ……もしかしてリリー……何か心が疲れて……」

「疲れているとしても貴女が原因でしょう‼ この間だってナンカサムイヨォ……などと私のベッドに潜りこんできて!  挙句の果てに私のお腹や足首を触って暖を取ろうとして…… お母さま‼ この女を追い出してくださいませお母さま!」

 ゲームのリリーは逐一私を追い出そうとしていた。いつもリリーが私を追い出そうとするのは何でだろうと思っていたけど、ゲームの補正なのだろう。解き放ってあげたい。そして姉妹二人仲良く生きていきたい。

「・・・・・・もう、頭痛がするの。二人とも出て行ってちょうだい」


 お母さまはげっそりした様子で首を横に振った。

 しまいには家令がどこからか出てきて、私とリリーを部屋から追い出してくる。

 廊下に出るとリリーは「私はこれからお手洗いに行きますけれど!  絶対についてこないでくださいまし!」とにらみつけてきた。

「おばけ怖くない? 大丈夫です? お姉ちゃん守ってあげますよ? ヒロインじゃなくても」

「ヒロインもなにもありませんわ‼ 貴女はただの頭のおかしなスフィア‼」

 リリーは大きい声で言うと、スタスタお手洗いに向かっていく。

 私は少しふて腐れた気持ちで、踵を返し――たふりをして、リリーを全速力で追いかけた。リリーは私が追いかけていくのに気付くと、猛ダッシュでお手洗いに向かっていく。

 間に合わないのかもしれない。おんぶして運んであげないと‼

 私は追いかけながら、気を引き締める。ゲームだとリリーは悪役として怖い目に遭ってしまう。私の最愛の人であるエヴァルトもだ。

 ゲームではみんな助からなかったけど、この世界はゲームそのものじゃない。なんとかできるはず。

 絶対、絶対、助ける‼

 私は決意を新たに、リリーを追いかけた。


本日からKADOKAWAさまよりカドコミ(WEB・アプリ)とニコニコ静画にて本作のコミカライズがスタートします‼

カドコミ(WEB)

https://comic-walker.com/detail/KC_006932_S/episodes/KC_0069320000200011_E

ニコニコ静画

https://manga.nicovideo.jp/comic/74034


詳細は活動報告よりご確認ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ