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サイアクだよ、本当。


よう、俺はオーバ。

覚えてるかな?


最初の方に出てきた、後部座席に座ってた方。

イカれた親友のメイ・ジーの手を借りて、天国からもっとイカしたシャバに帰ることにしたのさ。


俺は特に悪いことはしてない、ちょっといつもと違うお薬を飲んだら、お国が許さなかったのさ。

他の国じゃOKなのに、おかしな話だよな。

だから、朝昼晩とねずみしか食わねえだろって飯が出てくる天国みたいな環境から、とんずらこいてきたんだ。


そんで今、自分のことをねずみ小僧と言っていた奴の部屋で、身バレしないシャツをイカれた親友が調達してくるのを待ってるところ。


───ニュースでは俺の話題より、動物園のゾウさんが子どもを産んだ方にリソースが割かれていた。

ありがたいけど、ちょっと寂しいな。


メイ・ジーとは小さい頃からの付き合いで、同じハイスクールまで行ったところまでよかったんだけど、カレッジの合否で、仲が途切れて、明暗別れた。

時々会ったりはしてたんだけど、まさか超久しぶりの再会が獄中とはね。

神様もなかなかオツなことをしてくれるよな。


───そんなこんながあって、シャツとイカれた親友がねずみ小僧を連れて部屋に戻ってきた。

「臭すぎだ、オーバ。何のためにシャワーを浴びたのかわからないだろ」

「ひっさしぶりのタバコだぜ?我慢する方がおかしいよ」

「オーケー、ここは僕の部屋で、本来ならその文句を言うのは僕の役割だ。とっても迷惑だし正直サイアクだ。警察に通報しない、仮に君たちのことを聞かれても知らないことにする。頼むから、この部屋から、出てってくれ」


ねずみ小僧は落ち着くように、とジェスチャーして俺たち二人を交互に見ながら牧師様のように説いた。


「ラット、君に迷惑をかける。申し訳ない」

「ありがとうメイ・ジー。じゃあ、出てってくれ」

と親指でドアを指した。


「ねずみ小僧、残念ながら、お前は、人質だ。万が一の時のためにお前がいないと俺たちが、困るんだ」

動きを真似ながら、伝えた。


ねずみ小僧は天を仰ぎ「サイアクだ…」と嘆いた。


「わかった、聞いてくれ。僕は昨日、3年付き合ったガールフレンドと別れたばかりだ。さらに、買い物してただけなのにまさか銃口を向けられる丁寧なご挨拶をいただいたわけだ。殺しはしない、と言われたけど信じられないよね、だって出会ったのは3時間前で、君ら親友同士のドタバタ劇に付き合う元気はないんだ。素直に、この部屋で、一人メソメソさせて欲しい」


ねずみ小僧は目の下のクマがはっきりわかるくらい狼狽していた。


「ラット、散々なことに巻き込んでしまって悪いな、でも俺たちにはアシがない。運が悪かったと思ってこのまま目的地まで付き合ってもらうよ」


「Hey ねずみ小僧、有給はまだ残ってるな?」


「勘弁してくれよ…」


「今キャッシュがあるのはお前とメイだけだ、金はあればあるだけいい。公共交通機関はまず使えない。さっきニュースでメイが取り上げられてたしな。船を買ってある、それで国を渡る」


「悪いけど金は出せない。別れたからと言って自暴自棄になるほど、僕はバカじゃない。車だってあと4年ローンが残ってるんだ、付き合っていられないよ」


「飯とガソリン代は俺が出すよ。ラットは自分に必要な分だけ支払ってくれ」


「なんでそうなるんだ、着いていく前提で話さないでくれよ!」


「ねずみ小僧」


「その呼び方はやめてくれ、オーバ」


面倒な奴だ。


「ラット、こんな体験、人生で一度だって味わえるかわからないんだぜ?俺たちは殺しはしない。楽しい方向で考えようじゃあねえか」


「ああ、素敵な考え方だ。わかるよ、でもこんなイベントは一生に一度だってあったら胃もたれ確定だ。僕はもう満腹だ」


「さっきは腹が減ったって言ってたじゃないか」


「喩えだよ!刑務官なのになんで説明しなきゃなんないんだ!」


「ああ、ジョークさ」

「コイツは不器用でね」


───何を言ってもどうも躱わされてしまう。

本当に、牧師様のように話して諭そう。

ゆっくりかつ丁寧に。

だけどオーバは、そんな感じのことは刑務所で何度も聞いたけど、何一つ変わらなかったぜ、と吐き捨てた。


「うんうん、わかった。楽しい方向でね、楽しく考えたいよね」


「ようやくわかってもらえたかなラットくん?」

オーバは煙を吐いた。


「楽しく誰にも迷惑かけないバカでありたいよね、それが幸せだもの。そうあればいいなって僕はいつも考えてる。だけど、君たちは、楽しくバカをやってるけど、僕と刑務所に迷惑をかけているよね?」

迫真の動きで彼らに言葉を贈った。


「いーや、かけているつもりはないね。だってお前は世界が狭い。お前がねずみ以下のスケールだったって教えてやるよ」


「運転するのは僕なんだよな?」

「いや、運転は俺がする。まさか堂々とニュースに顔が割れた俺が運転してるとは誰も思わないだろう」


ん?とメイ・ジーは首を傾げて問いを投げかけた。


「俺の顔がニュースに出てたのか?」


…サイアクだよ、本当。

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